野々池周辺散策

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「イスラム国」に関する本を読んでみた

2015-02-11 07:56:13 | その他
     「池内 恵著:イスラーム国の衝撃」

「イスラム国」による日本人人質事件の日本のマスコミ報道は情報が錯綜し今ひとつ分かりづらかったが、一部解説者の発言だけは注目して聞いた。この本の著者池内東大准教授、 日本エネルギー経済研究所保坂理事、放送大学の高橋教授、宮家元外交官の解説は、多分そうなんだろうと思って聞いた。その中で、池内准教授が書いた「イスラーム国の衝撃」はイスラム国の生まれから今後の中東情勢の見かたを含め面白く読んだ。

「イスラーム国の衝撃」に書かれている内容で、最も気になった点と言えば、イスラム国のメディア戦略である。
具体的な戦術までは書かれていないが、先進国に匹敵する戦略と道具を駆使し、多くのイスラム信者の若者に訴求し続け、しかもその効果は絶大。その効果たるや、「イスラム国」組織を世界中にフランチャイズ化したり、あるいは一人「イスラム国」を立上げさせたりと、組織の分散化に成功した。「イスラム国」の高い資金力(身代金が主力)と衝撃的行動(メディア戦略)に共感し恭順を示せば、「イスラム国」グループに加えてもらえるという、「草の根作戦」が実に見事にネットを通じて世界展開され、「イスラム国」の高いブランド化に成功している点に最も驚いた。

「イスラーム国」の司令中枢はあっても無いに等しいようで、しかし結果は、無限に「イスラム国」が世界中に展開されている。
「イスラム国」の司令部らしき部署は、かっての中国共産党や旧ロシヤのように無限に広い大地を転々として、その存在は掴みどころがなく首都を陥落さえすれば終りと言う従来の戦争とは異なるようだ。 しかもITを通じて各地域に「イスラム国」の凄さだけを情報発信するだけで、勝手に各地に立ち上った「イスラム国」に賛同する組織らしくないバラバラの組織が勝手に動き出し活動する。アメーバウイルスの如く勝手に増殖しながら世界展開している様は、マーケティング専門家にしてみれば、その手法が実に見事なだけに、一度中枢に侵入して確認してみたいと言う衝動に駆られるのではなかろうか。

「イスラム国」はアルカーイダやタリバンからの派生だが、アルカーイダやタリバン勢力が米国の反撃によって弱体化すると、指導者のアブー・バクル・アル=バグダーディー(本名ではないらしい)が「カリフ」に就任したと一方的に宣言しイスラム教の最高指導者だと名乗って「イスラム国」設立を宣言し、全てのイスラム信者は「イスラム国」に従い、「イスラム国」に移住し銃を取れとネットで宣言したところから、組織が始まる。

元はと言えば、古くは1919年の第一次大戦の勝利国英・仏が負けたオスマン帝国を植民地化し、各民族を意識せず線引きして分断化した事から根強い不満があった中に、イラク戦争やアラブの春を契機に独裁者が倒れると、その統治空間に、それまで政権に抑え込まれていた各国のイスラーム部族勢力が武装し、国境を超えて集まったとある。ところが、先日のBSフジ「プライムニュース」でのパレスチナ日本大使の発言によると、イスラエルがパレスチナに入植した事こそが問題の主因だとする発言もあり、また、オバマ大統領の世界の警察放棄宣言も加わり、それまで抑え込まれて民族感情も入り混じった、複雑なこの中東問題はとてもじゃないが我々には簡単に理解できない。オバマ大統領が「イスラム国」について「これは彼らの特殊な問題ではない。十字軍や異端審問の時代にも、キリストの名において人々がひどいことをした」と演説したことが「テロリストを十字軍と同列に置いた」と批判を浴びているとネット記事にあったが、歴史から見ると多分それは正解なんだろうと思うが、これは終りが見えない。

しかし、前述したように、最も興味を引く「イスラム国」の特徴は、宣伝や広報の巧さであるが、広報誌や番組も非常に質の高いレベルにあるらしい。日本製のかなりすぐれた機材使っているようで、加えて欧米のIT技術ノウハウをもった若者が参加し、YouTube等のネット媒体に彼らの正当性とブランド化を世界展開する。これに答えて世界中のイスラム法に心酔する純粋な若者が志願して馳せ参じる、いわゆるグローバルジハードを構成していく。こうして見ると、千数百年前のイスラム法思想に心酔する若者が草の根的に世界中に増幅したら、「イスラム国」を全滅させるのは困難だろう。
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