しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

成人映画館

2023年09月21日 | 失われた仕事

エロ映画と呼んでいた。
笠岡では金星劇場。
福山では御船町の映画館(大黒座の斜め向かい側)。
街中にある映画館のポスターでも、エロ映画のポスターは目を引いた。

どのエロ映画も、女性の肉体をおおげさに表現していた。
特に笠岡のスサキ通りのスサキ橋手前の、金星劇場のポスターは目立った。
人の行き来が多く、大人も、子どもも、みんな目にはいる。それが、笠岡に限らず当時の町の風景だった。

 

 

(最初)
エロ映画
高校卒業した春に、初めてエロ映画を見に映画館に入った。
映画は白黒映画だった。
それが、途中何回かカラー映画に切り換わる。
切り換わる時は、同時に音楽がいやらしい音や声に変るので、寝ていても気がつく。
ポスターといやらしい音で勝負する映画で、
見終えて、あほらしさだけが残った。

(二度目)
日活ロマンポルノ
日活は普通の映画を止めて、”ロマンポルノ”と自称するエロ映画をつくりだし、一定の人気を得ていた。
題名は忘れたが、歌手・五月みどりが主演の映画を見にいった。
オールカラーで、エロ映画と違うのは、役者や脚本が少しよかった。

(三度目)
飛び出すポルノ
同僚3人で町を飲み歩いていたら、
”オールナイト”で”飛び出すポルノ”の映画館があった。
酔った勢いで入ったら、
そこで左右色違いの、色メガネを渡された。
これは楽しみじゃ、
とイスに座って眼鏡を掛けると、
スクリーンから立体ポルノが飛び出すどころか、
二重三重に見えて、画面不明
しかも目が痛い。
20~30分居てから映画館を出た。
サッパリだった。

 

 

 

・・・

「失われゆく仕事の図鑑」  永井良和他 グラフィック社 2020年発行

成人映画館

1960年代、テレビ時代の到来で映画会社が潰れ、多くの映画館が成人映画に切り替わった。

新東宝映画が1961年に倒産、
多数のスタッフや映画館チェーンが宙に浮き、
翌年そんな彼らによって製作、公開された「肉体市場」がその第一作とされる。
やがて1971年には日活が「ロマンポルノ」へ舵を切る。

・・・

 

 

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靴磨き

2023年09月21日 | 失われた仕事

「靴磨きをしてもらえば気分がええよ」と雑談中に友が言った。
しかも、「安い」という。
一回300円。

300円なら、試しに一度、いい気分になってみようと思った。
昭和40年代福山駅前の伏見町、
駅と天満屋の間の路上に靴磨きの人が3~4人並んでいた。

木のイスに座り、片足を台の上にのせる。
すると路上に座ったままの靴磨きの人は、
客の顔も見ることなしに、靴についたドロ・ホコリを払う。
次に磨く、その次に靴墨でピカピカに仕上げくれる。
両足分で約5分くらいだろうか?
300円を払って去る。

靴磨きと客の会話はいっさいない。
会話があるのは、
オプションで靴底に金具を取り付けてもらう時だけで、
金具を付ければ、歩く時、路面を踏む音がする。
今思えばあほらしいけど、それが当時の男性のおしゃれの一つだった。

では、気分がいいというのは・・・ほんとうだろうか?
これが・・・ほんとうのことだった。
理由は
客はイスに座って高い所、何もしない。
靴磨きは地面に座って低い所、作業をする。
この上から下を見下すような、ヘンな優越感が気分いい。
だが
この優越感は、人としては何の根拠も中身もない優越感なので、
うれしくもないし、
そんなことを感じる自分が恥ずかしい「優越感」だった。


尚その頃、町を歩く男性の場合、黒か茶色の革靴いっぽんで、シューズはまだなかった。

 

・・・・


「昭和の消えた仕事図鑑」  澤宮優  原書房 2016年発行
靴磨き

靴磨きは警察署から道路使用の許可を貰って、行う。
場所は移動できず、日よけなどの設置も許されなかった。

作業手順は、
客のズボンの裾を折り返す。
刷毛で靴のホコリを取り払う。
靴に詰まったドロもブラシで払う。
靴の底、甲に靴墨を塗る。
これを念入りに3.4回塗ってすり込む。
剥げていれば更にすり込む。
ブラシで全体に広がるようにする。
タオルでまたこする。
最後に乾いたタオルで乾拭きする。

 

・・・

 

「失われゆく仕事の図鑑」  永井良和他 グラフィック社 2020年発行

靴磨き

駅の近く、
たとえば大きなターミナルの通路に靴磨きはいた。
大きな道路の歩道に、露店として商いをしていた靴磨きもいた。
靴は革靴だった。
磨けば艶が出る。

靴を磨く仕事を、やむなくしなければならない人たちがいた。
飢えをしのぐため、気の毒な事情をかかえた人たちがいた。

その台に、土足を投げ出し、小銭と引き換えに靴を磨かせる。
明瞭な対照をなす瞬間だった。


・・・
 

 

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