金浦座の元館主のさんに話を聞いたことがあるが、
元館主さんが言うには、
(田舎の映画館とは)
「ポスターを貼り替えるのが仕事のようじゃった」
というお話だった。
つまり、田舎の映画館は上映期間が普通1日、最大3日。
したがって、日中は毎日自転車にポスターを積んで、
毎日同じ場所(地域の辻や商店の前)に行き、ポスターを剥がして、新しいのに替える。
これを毎日繰り返す。
町の映画館は上映期間が普通一週間。
期間が長いので映画館の切符売り場のまわりは、
看板師が描いたスターや、ポスター絵で囲まれていた。
もっとも、
ポスターも金浦座同様、町の角に置かれていた。
国鉄の大門駅前には福山の映画館のポスターが横一列に7~8館ぶん並び壮観だった。
笠岡の隅田川沿いに映画館専用の絵師がいた。
絵のサイズが巨大なので、道からよく見えるし、絵が道にはみ出してもいた。
そのころ笠岡に映画館が4~5館あり、
二本立て興行、一週間上映、となれば相当多忙を極めたはずだ。
金浦座の館主さんの話では、
「ポスターを見ながら描いていたんじゃろう」
ということだった。
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「失われゆく仕事の図鑑」 永井良和他 グラフィック社 2020年発行
映画看板師
看板屋は他の種類の広告看板と同じに映画の看板も描くのである。
週替わりで上映が変わっていた時代には、毎週毎週新しい看板を描かいないといけないので、
映画以外に手が回らない職人もいた。
手描の看板時代、かなり雑に描かれていたように気になったが、
職人はこれでいいんだという。
遠くから眺めても、誰が出てどんな映画か、はっきりわかる素晴らしい看板だという。
名もない町の看板屋には、仕事をこなすことで身についた技があったのだ。
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