みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

「人民志願空軍」デカールの使い方 その2

2009年04月18日 00時00分22秒 | 航空機(露・軍用機)
 もし朝鮮戦争に実戦参加したソ連空軍パイロットの機体を再現しようとすれば、エアロマスターデカールなどから発売されているデカールを信用して使えばよいわけです。リサーチのしっかりしたメーカーだから信頼度は高いと思われます。一方、中共軍の機体はと言うと、資料が決定的に不足しています。実戦部隊の前線基地での写真となると、現在の所ほとんど発表されておらず、ボケボケに修正の入った報道写真以外は、朝鮮戦争50周年前後から相次いで出版された中国の書籍にもほとんど見られません(これはうちの常連さんのお話)。だとすると、例えば航空博物館展示機を再現するとか、ニュース映画に写っているこの機体を再現するとか、ある程度割り切ってしまうしかないようです。

 で、前回掲示した上半分の白黒写真ですが、結論から言いますとこれは当時のニュース映画(プロパガンダフィルム)からのスチール写真です。このシーンが含まれるニュース映画は、常連さんがお持ちのVCDに収録されていたので、見せていただきました。そして同じフィルムの一部は「Youtube」でも見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=AioUMQ2VxCQ
ここの1分34秒から1分57秒まではそのニュース映画の一部です。おそらくこのニュース映画は朝鮮戦争の実戦時の映像ではなく、映画用にお膳立てされたものだと思われます。常連さんの意見では、機首に「中国人民志願空軍」という文字を描いたのは、この映画に出演する機体だけではなかろうか、とのことです。さてそこで、この映画に出てくる機体を再現するんだと割り切るならば、この映画を細かく見て行くことで一応模型製作に必要な情報は集めることができます。

 で、写真をご覧下さい。整備員の助けを借りてパイロットがコクピットに乗り込む場面です。この後に、パイロットが酸素マスクを着け、整備員が手伝ってキャノピーを閉じ、ラダーを外す場面が続きます。このカット、機首が大写しになっているので、文字がよく見えます。ん…? あれ…?
 中國 人民志願空軍
となっているではありませんか。「國」の字が使われていて、いわゆる中国の略字体(簡体字)が使われていません。台湾のおみやげでいただいたデカールは
 中国 人民志愿空军
という簡体字が用いられています。簡体字の「国」という字は日本の常用字体と同じ。「願」という字は簡体字では「愿」と、下が心になります。「軍」の中の車という字はこんな形になるんですね(みなさんのブラウザでは文字化けしてませんか?)。
 ってことは… このデカールでは、このニュース映画に出演している機体は作れないんじゃん!? これも常連さんによると、「漢字簡化方案」(方案は試案の意)が発表されたのが1956年、そして試行錯誤の上字体が確定したのが1964年だとか。だったら、1950年に始まった朝鮮戦争に参加した機体にこの略字体が使われていたはずはないんです。つまり、このニュース映画の機体に限らず、朝鮮戦争関係ではこのデカールは一切使えない、ってことですよね。前回の下半分の写真のように、航空博物館の機体だってちゃんと旧字体で書いているのに。うわー、せっかくのデカールだったのになあ… 1964年以降で「中国人民志願空軍」なんて文字を機体に書くようなな場面、あるのかな? ないよな。だったらそもそもこのデカール、何に使うものなんだ? まあその辺を知らないメーカーが安直に簡体字を使っちゃったんでしょうか。
 がっかりしたところで、ではこのニュース映画の機体を作るにはどうすればよいのか。話はまだまだ続きます。