みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

チャーチル戦車の巻(その10)

2006年04月30日 21時19分43秒 | AFV(英・チャーチル)
「史上最大の作戦」に出てくるチャーチル戦車

意外と有名な話らしいのですが、映画「史上最大の作戦」に動くチャーチル戦車が出演しているんですね。背景や前景にちらりとですが、ソード海岸のイギリス軍上陸シーンで何度かその姿を見ることができます。まず海岸にひしめく数多の兵員や車輌に混じって、粗朶束(そだたば)を積んだチャーチル戦車が見えます。粗朶束が大きいので砲塔などの細かい部分はほとんど判別できません。このシーンでは他にシャーマンの76ミリ砲タイプやブレンガンキャリアなど、様々な車輌が出演しています。その直後、シャンペンを持ったフランスのコルビル市長が英コマンド部隊のローバット卿を出迎えるシーンでは、二人のすぐ後ろをチャーチル戦車が通過します。画面を一時停止しながらよく見ると、主砲がペタード砲ではないこと(砲身基部と防盾の形状が異なる)、砲塔前の車体上部に枠のようなものが見えること、操縦手用窓が丸形であること、などに気づきます。実はこれ、戦後改修のMk.VII仕様AVREなんですね。詳しい写真がここに載っています。
http://www.armouredengineers.co.uk/photose.htm
主砲は6.5インチ砲で、これはペタード砲のような迫撃砲ではなく元込め式(もちろん低初速の榴弾砲)ですから、装填手は普通の砲と同様砲塔内に位置します。防盾部には防水カバーがつけてあるようです。またブルドーザーのようなアームがついていますが、これは粗朶束を確実に前方に落とすためのものなんですね。砲塔はMk.VII仕様ですが、左右にスモークディスチャージャーが装着されています。車体もMk.VII仕様ですから、前部の操縦手用窓とスポンソンの脱出ハッチは丸形です。「史上最大の作戦」に出演している可動車輌は、この戦後型だったと考えられます。ただし映画の画像をよく見ると、この車輌は砲塔がMk.IIIの溶接砲塔であるように見えます。余った砲塔を使って改修した車輌だったのでしょうか。
ついでに上に挙げたサイトを見ると、センチュリオンやチーフテンのAVRE型ってのもあったんですね。粗朶束も戦後のものは木材を使わずすべてパイプの束を使っているようです。現代でも、湾岸戦争のように相手が対戦車壕を掘って待ちかまえている場合には意外と有効なのかも。ちなみに、AVREの運ぶ粗朶束に必ずパイプが入れてあるのは、溝を埋めた後にそこを水が流れるようにするためなんだそうです。

チャーチル戦車の巻(その9)

2006年04月23日 23時27分38秒 | AFV(英・チャーチル)
さて、Modell Transのパッケージになっている写真、これは現在ノルマンディー・ジュノー海岸のGraye sur Merにモニュメントとして展示されている車輌で、1976年に何と「発掘」されたものらしいのです。この車輌について調べてみました。
他の上陸地点と同様、ジュノー海岸も地雷や有刺鉄線、対戦車壕、そしてドイツ軍により水浸しにされた湿地帯に行く手を阻まれていました。ここに上陸したカナダ軍第3師団の第26Assault Squadronも、上陸後すぐさま内陸へと前進を始めましたが、海岸から内陸部へ通ずるほとんど唯一の道を進むには、どうしてもこの対戦車壕(水を流した用水路)を埋めなければなりません。このチャーチルAVRE(英軍所属)は粗朶束(そだたば)でこの溝を埋めるべく前進しましたが、草むらで溝の幅が見えず、用水路に突っ込んでしまい、ハッチからは水が流れ込みます。戦車兵は全員脱出に成功しましたが、前方の十字路に陣取ったドイツ軍からの迫撃砲弾により残念ながら三人が戦死、残りの戦車兵も負傷し、その日の内に英本土に送還されました。さて、とにかく一刻も早く内陸へと進まねばなりません。このチャーチルを引き上げる余裕はなく、その上にそのまま架橋する他にすべはありません。早速チャーチル架橋戦車が、岸からこのAVREの上に橋を架けます。向こう岸に届かない部分にはさらに粗朶束が埋められました。そうして続々と後続の戦車がこれを渡り、十字路付近のドイツ陣地も沈黙させられました。この仮設橋と粗朶束は戦車にとって決して通りやすい道ではなかったようで、何台もの戦車が足を踏み外しますが、他の車輌に牽引されて引っ張り上げられています。結局このチャーチルAVREは「橋」の土台として、味方の戦車を前進させる役目を立派に果たしたと言えます。この「橋」は逐次補強され、戦後はこの上にコンクリートの舗装も施されて、そのまま道として使われました。
1975年に、フランス側の協力の下、有志の人々がこのチャーチルを発掘することになり、翌76年に作業が始まりました。最も注意したのはやはりチャーチルが搭載している弾薬等の爆発物です。乗員の護身用のステン短機関銃とその弾薬に至るまで慎重に処理しつつ、とうとう30年あまりの年月を経て、チャーチルは地上に引き上げられました。元々被弾して放棄されたものではなく、水没した車輌ですから保存状態は非常によく、乗員の糧食のチョコレートも食べられそうな感じのまま発見されたそうです。そして丁寧に補修され塗装されたこのチャーチルAVREは、モニュメントとして水没地点の近くに保存されることとなりました。除幕式には健在だった元乗員も列席したとのことです。
このGraye sur MerのチャーチルAVREについては、
http://sboos.perso.ch/Normandie44/Histoires/Graye_Histoire.htm
http://www.strijdbewijs.nl/normandie3/nor03.htm
http://www.normandie44lamemoire.com/fichesvilles/grayestecroi.html
http://www.cwgcuser.org.uk/personal/lifrance/lifday07.htm
等のサイトを参照。フランス語やドイツ語のもありますが…。
また現在の展示車輌の細部は
http://www.armourinfocus.co.uk/a22//avre/avre.htm
http://www.armourinfocus.co.uk/a22//avre/spigot.htm
http://www.armourinfocus.co.uk/a22//avre/interior.htm
などで見ることができます。

チャーチル戦車の巻(その8)

2006年04月16日 19時36分33秒 | AFV(英・チャーチル)
このModell Transのパッケージ写真の車輌を見ると、フェンダー後部に何かにょきりと立っているのが気になります。これも以前模型店で何だろうと話題になったことがあります。AVREは各種工兵機材を装着しますので、その関連の装置かなとも見えるのですが、実はこれ、予備の転輪なんですね。他の戦車でも、予備の転輪を載せるのはよくあることですが、チャーチルの場合はコイルスプリングをつけたままでこの様に上下ひっくり返して装着する形になるようです。というのは、チャーチルの転輪は、車輪とコイルスプリングとその枠がひとつのユニットになっていて、そのユニットごと交換できるようになっているからです。実車写真でもこのユニットごと転輪を失ったままで行動しているものが見えますね。ノルマンディーの前も後も、あまりこういう予備転輪の装着例は見ませんので、上陸作戦の際に特に準備した予備なのだと思われます。補給・整備が確実に受けられる状況では、斜め後方を射撃するのに邪魔なこの位置にわざわざ予備転輪を立てておく必要もありませんし。
Modell Transのキットでは、転輪+コイルスプリング、それに枠の2パーツひと組でこの予備転輪ユニットを作るようになっています(この写真はまだ仮組み状態だから、隙間が見えますけど)。

チャーチル戦車の巻(その7)

2006年04月09日 15時52分13秒 | AFV(英・チャーチル)
前回のクイズの答え。Mk.IV AVREを作るのに、Modell Transの改造キットに足りないパーツ、それは装填手用ハッチです。普通の主砲ならば装填手は砲塔の中にいます。でもこのAVREのペタード砲は迫撃砲ですから、元込め(後装)式ではありません。装填手は車体前部、操縦手の左に位置しています。ここからハッチを開けて迫撃砲弾を装填するわけです。
模型店の常連さんに、このペタード砲は普通の迫撃砲と同じく先込めで、装填手がハッチから身を乗り出して砲口から砲弾を装填すると思っている方がありましたが、敵のトーチカのすぐ近くでの近接支援に、それでは大変危ない。実はこのペタード砲、中折れ銃と同じように、砲身の基部のところが上向きに折れ曲がり、そこに下から砲弾を装填するようになっているのです。そうすると前後方向に観音開きする通常のハッチだと装填の操作の邪魔になる。だからAVREは通常のハッチの代わりに、前後方向にスライドするハッチをつけてあるわけです。そのスライドドアを開けて、中折れ式砲身に下から砲弾を押し込みます。この写真でペタード砲の細部が分かります。ボルトの部分で砲身が折れ曲がるんですね。
http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:Churchill_AVRE_Petard.jpg
さてそこで、その装填手ハッチの形状を従来のキットのパーツで比べてみました。写真左がミリキャストのMk.IV(つまり通常型)、真ん中がミリキャストのMk.IV AVRE、右がマッチボックス(現レベル)のMk.IV AVRE(架橋型)のパーツです。それぞれの車体の、写真に向かって右側のハッチが装填手席。ミリキャストとマッチボックスでは少々幅が異なりますが、形状としてはこういうもののようです。
この部分がはっきり写っている実車写真があまり見つからないのですが、
http://www.armourinfocus.co.uk/a22//avre/spigot.htm
これでなんとか判ります。ペタード砲には尾栓がなく、行き止まりになっていることがよくわかります。(この写真の車体については、後の回で詳しく触れます)
http://tanxheaven.com/hein/churchillavrelionsurmer/churchillavre.htm
こちらはなぜか装填手ハッチがはっきり見えるアングルがなく、何か機材のフレームが横切っていて(戦後改修型か?)よく見えませんが、参考になります。またペタード砲の中折れ機構も見えますね。
1/35の作品には
http://www.missing-lynx.com/gallery/britain/lpavre.htm
http://www.missing-lynx.com/gallery/britain/taavre.htm
こういうのがあり、いずれも改造された装填手ハッチが見えます。ただし、
http://hsfeatures.com/churchillavrewk_1.htm
ここでは装填手ハッチの改造を行っていません。こういうタイプもあったのでしょうか。
http://www.d-daytanks.org.uk/articles/avre.html
ここにはペタード砲の弾丸が写っています。
さてこれらを参考に、イタレリのハッチにプラ板で加工を施してから、Modell Transのパーツを使うことにしたいと思います。

チャーチル戦車の巻(その6)

2006年04月09日 10時33分11秒 | AFV(英・チャーチル)
次のModell Trans改造パーツはチャーチルMk.IV AVRE用です。AVRE(Armored Vehicle Royal Engineers)はノルマンディー上陸作戦用に設計された近接支援用の戦闘工兵車輌で、Mk.IV(あるいはMk.III)の主砲を290mm迫撃砲(ペタード砲)に装換した車輌を基本に、戦闘工兵用各種機材を装着するためのアタッチメントを装備しています。ペタード砲は主にで敵のトーチカをつぶすために用いられ、さらに対戦車壕を埋めるための粗朶束(そだたば)、砂や泥濘などの軟弱地に敷設するカーペットなどの工兵機材を装着した車輌も作られました。また地雷処理装置や仮設橋を装備するものもありました。
Modell Transの改造キットにはMk.IV~VI用と同じ鋳造砲塔と、雑具箱、ハッチ、機銃、ペタード砲、工兵機材装着用アタッチメント、予備転輪ユニットが用意されています。これでイタレリ(エッシー)を手軽にAVREに改造できるわけです。
さて、ここでクイズ(ご存じの方にはすぐに判るゆるいクイズですが…)。Mk.IV AVREを作ろうとすると、厳密にはこのModell Transの改造キットではパーツが一つ足りません。さてそれは何でしょう?

チャーチル戦車の巻(その5)

2006年04月02日 22時44分15秒 | AFV(英・チャーチル)
Mk.VII用に新たに設計された砲塔は、側面が鋳造で、上面装甲板をこれに溶接するという構造になっています。主砲はMk.VIから採用されたマズルブレーキつき75ミリ砲。この砲塔パーツを、Modell Trans(左)とミリキャスト(右)で比べてみました。やはりところどころ微妙に違います。一番大きな違いは、主砲周辺でしょう。内装式防盾の開口部の幅がずいぶん違います。ミリキャストの方が若干実物のイメージに近いかな、と思いますがいかがでしょう。実はMk.VII用砲塔の初期型には主砲開口部左右のバルジが無いタイプがあるのですが、その写真を見るとModell Transの幅に近いようにも見え、判断の難しいところです。
さて主砲周辺以外では、上面装甲板の折れ曲がり部の溶接跡、ベンチレーターの位置と大きさなども目立つ違いですね。これらも実車写真と比べると、ミリキャストの方が似ているように見え、またタミヤの35分の1にも近い。もっともタミヤが完璧だというわけではありませんけど(あの前面装甲板は問題なしとは言えない)。
ちなみに、先ほど触れたバルジの無い初期型砲塔を作るには、ここに見えている主砲開口部左右のバルジを削ってしまえばよいのですが、ただしその場合、車長用キューポラもMk.VIまでと同じ旧型を取り付けなければなりません。ミリキャストはご覧のとおりキューポラとハッチが別部品になっています。

チャーチル戦車の巻(その4)

2006年04月02日 00時07分50秒 | AFV(英・チャーチル)
次に紹介するModell Transのチャーチル改造パーツは、Mk.VII用です。Mk.VIまでの車体と砲塔とを全面的に再設計したのがMk.VIIで、本当は車体全幅が少し大きくなっているらしいのですが、72分の1では考慮しなくてよいでしょう。これをイタレリ(エッシー)のキットから改造しようとすると、Mk.IV~VIが砲塔の変更だけで済んだのとは異なり、車体の改造が必要になります。特に車体側面(スポンソン)の脱出用ハッチが円形になっているのが、それまでのタイプとの目立った違いです。ごらんのとおりModell Transではこの車体側面をそっくりそのままキットのパーツと置き換えるようになっています。ハッチだけを削って付け替える、などというやり方より楽ですね。砲塔、車体側面以外には、主砲・機銃・車長ハッチ・砲塔雑具箱・車体前面装甲板が入っています。
私の入手したものは車体側面パーツが若干反っていましたが、石油ファンヒーターの温風で簡単に修正できました。模型店の常連の中にはレジンパーツを加熱するのは怖いとおっしゃる人もありましたが、やってみると簡単ですよ。レジンは加熱しても収縮しませんし、こんにゃくみたいに軟らかくなります。弱めに加熱すれば徐々に曲げることもできますし。