みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

ディエップ戦のチャーチル用デカール比較

2010年06月04日 22時55分07秒 | デカール
 ディエップ上陸作戦に参加したカナダ軍のチャーチル、エシュロンの1/35とペディングハウスの1/72とで、字体などに少し解釈の違いがある、という話をしました。どうも気になるので、『DIEPPE, THROUGH THE LENS OF THE GERMAN WAR PHOTOGRAPHER』の写真を見直してみました。
 この本、H.G.HenryとJ.P.Palludの共著で、本文はH.G.Henryの執筆によるものです。Henryは大学院で特にこのディエップ作戦について研究し、この本の基礎になるデータはその時に書いた論文にあるようです。ドイツ、フランス、カナダ、イギリスのアーカイブから丹念に写真を探し、ディエップ作戦に参加した各車輌それぞれの運命を一つずつ調べた、という労作です。このときの主力はチャーチルのMk.Ⅰ~Ⅲなので、写真もチャーチルが中心です。他にも装甲車や揚陸艦なども写っています。ただ、戦闘直後にドイツの宣伝カメラマンが撮影したものだけに、戦死した兵士もたくさん写っていて、気が重い面もあります。
 さて、ディエップについてはドイツ側がこれ幸いとプロパガンダのネタにしたので、かなりたくさん写真や映像が残っています。この本もそのお陰でできたわけです。しかし、いざデカールの検証のためにこの本を引っ張り出して見ると、やはりそう簡単にチェックできるものではないようです。そりゃそうですよね。模型マニアが自分の模型作りのために博物館の展示車両を各方向からくまなく撮影するのとは違います。ドイツのカメラマンは、前後左右からマークや装備品がよく分かるように、という意識では撮影していません。だから見たい部分が写っている写真がすべてあるわけではなく、必要な情報を探すのはやはりそれなりに大変。
 その点からすると、エシュロンのデカール、よく調べていますね。さすがと言うべきでしょう。で、問題のデカールの字体です。写真をご覧下さい。ニックネーム「ボルスター」のMk.Ⅰです。左上のがエシュロンデカール(1/35)の説明書に描かれたマーク、左下がペディングハウスデカール(1/72)のこの車輌用のデカール、そして右半分が『DIEPPE, THROUGH THE LENS OF THE GERMAN WAR PHOTOGRAPHER』に掲載された同車の写真(一部)です。いかがですか。これで見ると、明らかにエシュロンデカールの字体の方が正しい、ということが分かります。このようにFの字が右上方向に長く伸びているのが正しいんです。さすがはエシュロン。
 ではペディングハウスのが完全に誤りかというと、まあ必ずしもそうは言えないと思います。このデカールはBスコードロンの所属車輌用ですが、それ以外の他の所属車輌、例えばAスコードロンの車輌を見ると、このペディングハウスのデカールと同じ字体が使われています(但し枠は丸ですが…)。むしろBスコードロンの描き方の方が特殊だったのかもしれません。そう思えば、特にミニスケールではそれほど目くじら立てなくてもよさそうです。このまま作っちゃいましょう。

1/35のディエップ戦のチャーチル用デカール その2

2010年06月01日 19時59分04秒 | デカール
 エシュロンのディエップ戦チャーチル用デカール、今度は解説書のMk.ⅠとⅡのページを見てみます。前回のMk.Ⅲが並んでいるページよりも、やや見やすい感じです。前回と今回の説明書でお気づきでしょうか、Bスコードロンの車輌は、いずれもニックネームが「B」で始まるんですね。
 この図でも分かるように、ディエップ当時のMk.Ⅰ/Ⅱは、泥よけなどの考証が必要です。こういう言い方は実際には無いんですが、敢えてここで勝手に名付けるならば、泥よけのついていない初期型、小型の泥よけがついた中期型、大型の泥よけがついた後期型とに分けることができ、ディエップのものはその中期型に相当するわけです。
 さて、この1/35のデカールをPeddinghausの1/72用デカールと比べてみると、早速車輌番号の字体、文字の色、枠の色などに違いがあることに気づきます。ディエップ戦は比較的写真が豊富なのに、やはり解釈によって違いが出るんですね。残っている写真は当然みんな白黒ですから、色の解釈に差が出るのは当然ですが、しかしマーク類については資料があるはずです。おまけに、色だけではなく、字体にもかなり違いがあるんです。面白くなって来た! 資料本を引っ張り出して細かく検証してみたいものです。しかし、検証の結果何か修正点が分かったとしても、はたしてそれを模型に反映するだけの技術があるかどうかは話が別ですけど…(汗)。スキャンしてソフトウエアで修正するなんて、私にはとてもとても。考証は考証、製作は製作。素直にデカールをそのまま使うつもりです。
 私が写真で示したページだけでも、ニックネーム「BACKER」と「BOLSTER」の二輌が両者のデカールに共通であることが分かります。ところがエシュロン1/35の説明書には、「BACKER」がMk.Ⅱであり、「BOLSTER」がMk.Ⅰであることが明記されています。一方Peddinghaus1/72の方にはそうした区別は何も書かれていません。あははは~、いつも申しておりますように、私にとって1/35は1/72を作るときの資料に過ぎないのですよ! エシュロンがなければ、一々丁寧に資料本で確かめねばならないところでした。

1/35のディエップ戦のチャーチル用デカール

2010年05月29日 10時22分51秒 | デカール
 ところで、ディエップ上陸作戦に参加したカナダ軍のチャーチル用と言えば、何と言っても1/35でエシュロンから出ているデカールですね。パート1とパート2、二つ出ているようですが、いずれも精密なリサーチに基づいたすごいデカールセットです。前回紹介したPeddinghausの1/72のデカールは、これに基づいて縮小したものではないと思います。というのは細部の解釈がちょっと違うように思えるからです(もっと詳しくレポートしたいと思っています)。前回のPeddinghausはBスコードロン所属車輌でした。エシュロンのものはパート1がBスコードロンとなっています。
 ただしエシュロンのものはMk.ⅠとMk.Ⅲ両方がセットされています(PeddinghausはMk.Iのみ)。車輌番号やニックネームなどは17輌分が入っていて、その内4輌を選んで作れるようになっています。17輌全部作りたければ、共通部分を自作するしかありませんね。そんな人、いないか…。AFVクラブのキットを17輌も作るのは大変。それにMk.Ⅰはまだ発売されていないし。
 さて、このエシュロンのデカール、説明書がこれなんですよ。どっちゃり、各車輌の説明図が並んでいます。うわー、壮観…。それにしても、丁寧に考証していますね。以前触れた『Dieppe: Through the Lens of the German War Photographer 』も恐らく参考にしているのではないかな。あの本はほとんど一輌ずつ写真が載っていますから。それにしても、ここまで説明図に細かく書き込まれていると、ユーザーが読み取るのが大変です。でも見ていてとても面白いんですよ。

ミニスケールAFV用デカール ディエップ戦のチャーチル

2010年05月27日 12時55分19秒 | デカール
 1/35に比べて数の少ないミニスケールAFV用のデカールですが、さらに英軍車両用となるともっと少ないのが現状です。おまけに、なかなか国内では入手が難しいメーカーが多かったり。で、見かけたら出来るだけ買い込むようにしています。そしたら、先日かなりピンポイントでツボを突く新製品が出ました。ドイツのPeddinghaus Decalの「ディエップ上陸作戦のカナダ陸軍チャーチルMk.I Bスコードロン」です。うわ、すげえピンポイント。Mk.Ⅲとかは入っていなくて、Mk.Iのみ。しかもB中隊。
 ディエップについては、特にドイツ側が撮影した写真がたくさん残っていますので、それこそ車輌一台ずつのマーキングまで確認できます。それを元にデカールを作ってくれたんですね。ディエップ上陸作戦では兵員に耐え難い多数の損害が出た他、車輌は全損という悲惨な結果になっています。参加したチャーチルはMk.ⅠとⅡとⅢ。そしてこのデカールシートは、Mk.Ⅰのみで12輌分。つまり、部隊マーク識別マーク車両番号等、デカールに重複無く12輌分たっぷり入っているんです。
 よし、これは12輌全部作るしかない! ハセガワでもOKですが、厳密に言うとハセガワのMk.Ⅰ/Ⅱのキットは、徒渉ダクトを追加する他に、細部を改造しないと使えません。1/72と1/76を気にしなければ、ミリキャストに使いたいものです。ミリキャストは初期のイギリス本土で訓練していた時期のもの、ディエップの時期のもの、その後の改良点をレトロフィットしたタイプのものとそろっていますからね。
 写真右半分は説明図。あまり詳しい指示はなく、図はこの程度。でもそんな複雑な貼り方ではないので、たぶん分かると思います。チャーチルの資料は手元にありますしね。

バイソンデカールのシャーマンファイアフライ用デカール

2009年11月01日 09時55分44秒 | デカール
 まごまごしている内に月が変わってしまいました。ぼちぼち模型に復帰します。本日は、先日のTracks & Troopsから届いた荷物に入っていたデカールから。
 ミニスケールAFV用のデカールというのは数も少なく、あっても高価なのでなかなか入手が難しいところです。キットのデカールでよければ問題ないのですが、レジンキットなどデカールが最初から入っていないことも。バイソンデカールは1/35以外に、1/72と1/76用のデカールをたくさん出してくれているので大変ありがたいメーカーです。しかし日本では1,500~2,000くらいになってしまうし、そもそも扱っているお店が多くない。で、海外通販するときは適宜同時に発注することにしています。
 今回入手したのは72021のファイアフライ用。IC、ICハイブリッド、VCと各タイプが含まれていて、迷彩車体もあって、選択肢は豊富。ただし、キャタピラにダックビルがついているよとか、上陸用のダクトをつけてね、とか、かなり無理な注文も…。砲塔のロケット弾ランチャーなら、ドラゴンから流用すればなんとかなるんですが。
 本題とは関係ないのですが、このデカールを見ていて時代が変わったなあと思うのは、
  「この説明書のカラー版をダウンロードして自分で印刷できます」
と書いてあること。番号の若いバイソンデカールよりも大判になっているとはいうものの、紙の質も印刷の質も大幅にやる気がなくなっているのは、ユーザーがダウンロードして使うことを前提にしているからなのね。バイソンデカールのサイトは、ここ↓。
  http://www.angelfire.com/pro/bison/
で、ダウンロード先として説明書に指定してあるのは、ここ↓。
  http://picasaweb.google.com
グーグル提供のウエブフォトアルバムですね。しかし、ここだけ指定してもらっても、ここから探すのが大変。メーカーサイト内の、このファイアフライ用デカールのカタログを、「1:72/76 decals」をクリックして探すと、ここに↓ありました。
  http://www.angelfire.com/pro/bison/72021.html
このページの下の方に、「説明書はグレースケールです。しかし、高画質(150 dpi)で説明書をダウンロードして自分でカラー印刷できます」と書いてリンクが貼ってありますよね。これをクリックすると…、ここ↓。
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions135#
これ、1/35じゃん! ここからさらに自分で探さなければなりません。ちょっと不親切だな。上の方の「Johan Lexell」さんをクリックして、「Instructions 1/72」を選んで、やっと見つかりました。これ↓
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions172#5355969041052240498
と、これ↓。
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions172#5355969050675565842
おお、きれいきれい! 製品についている白黒印刷の説明書よりも、格段に分かりやすいし。実際のデカールシートには、各マークの番号が打ってありませんから、三枚目のこれ↓
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions172#5355969050672521730
も必ずダウンロードしておかねばなりません。まあこれくらいなら、白黒でも分かると言えば分かるのですが。でもネットによるダウンロードを前提としている、というのはよいことかもしれませんよ。説明書の印刷コストが下がるなら、全体の価格も下がるかもしれないし。

 バイソンデカールは、ドイツものばかりではなく、連合軍のアイテムもたくさん揃っているのがうれしいところです。他に72019の北アフリカ英軍戦車も持っていますが、面白い塗装例のリー/グラント、シャーマンが揃っています。これ↓
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions172#5281937433562832066
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions172#5281937440695524018
デカールの貼り方の説明も丁寧ですね。あれ? 三枚目のこれ↓
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions172#5281937450821153298
は、全く同じ説明が縦に三段並んでいますね。これは、メーカーがこれを印刷して、三枚にカットして製品に入れるという、印刷元データそのままだからですね。ユーザーは一枚で十分なんだから、インクがもったいないな(笑)。
 他にもこれ↓
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions172#5322658120809821442
  http://picasaweb.google.com/bisondecals/Instructions172#5322658131324712706
イタリア戦線の英軍戦車。フローティングスクリーン付きのシャーマンDDもありますよ。これはミリキャストのキットに使ってやらねば。シャーマンIIAという珍しいものも複数入っています。シャーマンIIはM4A1に相当、Aは主砲が76mm砲であることを示します。76mm砲シャーマンは英軍への配備数は少なく、主にイタリアで使われたようで、デカールの選択としては、さすがよく分かっているなというところです。これも欲しくなってきた。バイソンの1/72用デカールは、ある程度1/35と連動しているようですから、1/72のキットがあるかどうかは必ずしも考えてくれていない気もします。もっとも、シャーマンDDは1/35だって改造は大変ですが。で、お前はいつ作るんだ、とおっしゃるなかれ。デカールはある意味、ああ、こう作ろうか、こう仕上げようか、という夢を買うものですよ。あはは、いや、ちゃんと作る気はあるんですって…。
 カラーで提供されている説明書は、72011以降ですから、それより番号の若いものはありません。しかし72005「WOLFERINE」、72006「Firefly VC」、72004「 CROMWELL」も、英軍車輌ファンには非常にありがたいデカールですね。WOLFERINEはイタチ科の動物クズリのことで、ご存じM10戦車駆逐車のイギリス軍呼称ですね。このデカールにはM10ばかりではなく、アキリーズやチャレンジャーやセクストンやクルセーダー対空戦車も入っていて大変お得です。