みに・ミーの【みにスケール模型日記】

ミニスケールAFVを中心とした模型日記です。

R.V.AircraftのニーンエンジンとVK-1エンジン その4

2013年02月10日 01時21分16秒 | 航空機(露・軍用機)
 で、話はやっと、R.V.Aircraftのレジンキットに戻ってくるわけです。実物写真をいろいろ比べてみると、どうもロールスロイス・ニーンエンジンと、それを改良したクリモフVK-1とは、外見上大きな違いはない、ということが分かってきました。そこで気になるのは、このR.V.Aircraftの「ロールスロイス・ニーン」と「クリモフVK-1」という二つのキット、パーツは実際どのように異なるんだろうか、ということです。
 トップ画像をご覧下さい。箱から出したパーツをそれぞれ並べてみました。写真向かって左半分に並んでいるのがニーンエンジンで、右半分がVK-1エンジンです。ご覧になってお分かりのように、両者には全く違いがありません。つまり、両者の箱には同じパーツが入っているわけです。なーんだ、結局そういうことか。1/72スケールでわざわざパーツを変えるほどの、外見上の有意な差がない、ということなんでしょう。でも、同じものを二つ買わされて損した、という気は全く起こりません。こういう凝ったキットは大好きですし、これもコレクションの内。
 このパーツ写真をご覧いただくと、パーツ割りが結構細かい事にお気づきだと思います。九つある燃焼室(燃焼缶)は別パーツ。エッチングパーツも入っていますが、これは配線を表現するためのもので、レジンパーツ同様これも両者共通のものが入っています。
 では両者、パーツ以外にどこが違うのか、というと、もちろん箱絵と組み立て説明図が違います。後は実際に組むとなると、塗装が問題になります。次はその辺りを比較検討したいと思います。

R.V.AircraftのニーンエンジンとVK-1エンジン その3

2013年02月08日 00時00分10秒 | 航空機(露・軍用機)
 さて、サンケイ第二次大戦ブックス『ミグ戦闘機』に出てくる、MiG-15の話です。朝鮮戦争で、初めて後退翼のジェット戦闘機と遭遇したムスタングのパイロットが、
「ついに、新型ジェット戦闘機があらわれたぞ」
「あの星のマークは、中国空軍のものだ」
「しかし機体は、ソ連製のミグ15ではないのか」
と会話したりする、臨場感あふれる(笑)文体は健在です。当時の私は、まだ少なかった日本語で読める共産圏の航空機に関する書物として、本書を愛読していたわけです。
 写真や図がたくさん挿入されているのも本シリーズの魅力でして、この『ミグ戦闘機』にもソ連東欧の航空機の写真がたくさん載っています。さて問題のエンジンの写真は、113ページに掲載されています。トップ画像がそれです。上はロールスロイス・ニーンエンジン、下がそのソ連による改良型VK-1とのこと。写真キャプションには、

ミグ15の初期型には、ロールスロイス「ニーン」ターボジェット・エンジン(上)が、
後期型にはVK1エンジン(下)が装備された。

とあります。つまり、初期型のエンジンが上で、その改良型が下だ、ってことですね。完全に形が違ってます。本書を愛読していた私は、改良型のVK-1は、オリジナルのニーンエンジンの出力を増やすため、形が変わるほど大改造したものだと思ってしまったわけです。
 しかしその後しばらくして気づきました。下のVK-1とされるエンジンって、そもそも軸流式ターボジェットじゃないの?単に本書の写真が間違っていただけじゃないの?と。だって元のニーンエンジンは遠心式なんだから、いくら改良したからって、下の写真のようにはならないよな。さてそうすると気になるのは、ニーンエンジンとVK-1エンジンって、外見上どれくらい違うんだろう、ということです。
 それから何年も後、ついにタミヤから1/48のMiG-15が発売されました。近所の私鉄駅裏の模型店で早速買い込んだことを覚えています。見ると、胴体後半を取り外してエンジンを見られるようになってるんではありませんか。タミヤのMiG-15は後期型のbisです。こうなると、初期型のニーン(RD-45)と後期型のVK-1とがどう違うのかが、やや切実な問題になってきたわけです。もしも『ミグ戦闘機』のこの写真が正しければ、タミヤのキットには下側の写真のようなエンジンを載せなければならなくなりますからね。当時は今みたいに、ネットで「Rolls-Royce Nene」とか「Klimov VK-1」とか検索したらたちまち画像が探せるような時代ではなかったので、書物からソ連製航空機のエンジンの写真を探すのは大変だったんです。
 で、結局今になってあれこれ画像を検索して、ロールスロイス・ニーンエンジンと、そのコピーのクリモフRD-45と、その改良型であるクリモフVK-1とは、外見上ほとんど違いがない、ということが分かってきました。では、サンケイの『ミグ戦闘機』が間違って掲載していた、下側のエンジンは何だったのだろう、ということなんですが、これはなかなか探すの難しい。今のところ、ミクリンRD-3Mではなかろうかな、と考えています。
http://www.kmpo.ru/eng/history.php
このページの真ん中あたり、ジェットエンジンの二番目の写真(VK-1の次)にあります。Tu-16バジャーに用いられた軸流式ターボジェットです。時期的にも近いし、形状が似ている(補機やパイピングなど)というだけなんですけど。

R.V.AircraftのニーンエンジンとVK-1エンジン その2

2013年02月06日 00時00分29秒 | 航空機(露・軍用機)
 R.V.Aircraftのエンジンの続き。さて、私が若かりし頃(学生時代)読みふけっていた航空関係の書物の一つに、サンケイ第二次大戦ブックス『ミグ戦闘機』があります。他にも当時の最新の情報で書かれた本で面白いものがいくつかあるのですが、これもいつかご紹介します。で、このシリーズ、「第二次大戦」ブックスと言いながら、朝鮮戦争やミグ戦闘機と言った戦後物も含まれていました。赤い背表紙で、当時の書店にはずらりと並んでいまして、図書館でも見かけました。意外と政治性抜きで、当時の我々の第二次大戦史の「常識」の部分はかなりこのシリーズから得られたものでした。クラスの男子みんな読んでた感じで、はっきり申し上げますが、このシリーズを読みふけっていた友達で軍国主義者になった人は一人もいません。嫌らしい漫画を見ると全員性犯罪者になる、なんて思い込みがいかに無知で危険なのかが分かります。
 それはそれとして、この第二次大戦ブックスのもう一つの特徴、翻訳の文体です。元々はペーパーバックで有名なバランタイン社のシリーズの翻訳で、日本人著者の書き下ろしの物も加わるようになりました。その翻訳ものと書き下ろしものの日本語の文体にあまり落差がない。つまり翻訳ものも翻訳臭がなく、自然なんですね。しかも戦記物の武勲赫々という感じで違和感が無い。軍事用語や技術用語、特に航空関係など訳語も妥当。下手な学術書の翻訳よりもずっとうまい。子供の頃自然に読めたのもそのためでしょう。ちなみにこの『ミグ戦闘機』は軍事評論で有名な野沢正氏の書き下ろしです。この文体がまた面白い。軍事史や技術史を中心とした内容なのに、あなた見てたの?とツッコミたくなるような、臨場感ある会話体が混じるんです。例えばミコヤンとグレビッチが
「党と政府が、わがチームやヤコブレフ・チームにジェット機の開発を命令してきた。私は双発で強力なものにしたいが、メッサータイプよりベルP59タイプのほうが、戦闘機としていいと思うが……」
「もちろんだアルテム(ミコヤン)。ただツアギ(中央空気流体力学研究所)がいっているように、ドイツの排気ノズル(筒)は長過ぎる。これは絶対に効率的に損だよ」
「つまり、排気ノズルはほとんどいらないわけだな。ミカエル(グレビッチ)、それを念頭に設計開始といこう」
「プロペラ機ではおくれをとったが、ジェット機では絶対に負けないぞ。同志、がんばろう」
って会話したりするんですよ。まさに、あんた見てたんかい、の世界でしょ? しかしこの文体がこのシリーズに合ってるんですよね。
 さて、ジェットエンジンの話に戻りますと、この『ミグ戦闘機』の中に、ニーンエンジンとVK-1エンジンの件(くだり)が出てくるんです。

R.V.AircraftのニーンエンジンとVK-1エンジン その1

2013年02月04日 00時51分42秒 | 航空機(露・軍用機)
 さて、二月に入ってしまいました。昨年末に一度触れた、R.V.AircraftのMiG-15用エンジンのレジンキット、その続きの話です。箱絵再掲。
 まず簡単におさらいしますと、遠心式ターボジェットエンジンであるロールスロイス・「ニーン」エンジンが、終戦直後のイギリス労働党政権によりソ連に輸出され、その「ニーン」をソ連がデッドコピーしたものが「RD-45」で、これをソ連がさらにに改良したものが「VK-1」だ、ということになります。さらにこれにアフターバーナーを装備したものが「VK-1F」です。MiG-15は極初期にRD-45が使われ、その他ほとんどはVK-1が使用されている、アフターバーナー付きのVK-1FはMiG-17に使用された、ってことでよかったかな。本当、その時労働党がニーンエンジンをソ連に輸出していなければ、朝鮮戦争でMiG-15に手こずることも、さらにベトナム戦争でMiG-17に手こずることもなかったと言えるわけで、こういう歴史上の過ちを反面教師としてきちんと後世に生かさなければならないはずなのですが、昨今…(以下略)。

 このR.V.AircraftのニーンとVK-1ですが、中の説明書を見ますと、
The kit was scaled-down precisely according to the real engine. That is why it is necessary to check and probably provide greater space for the engine to fit internal dimensions of the particular kit used.
と書いてありました。これを要するに、「このキットは実物のエンジンから忠実に縮尺されたものなので、実際の飛行機模型に搭載する時は、胴体内側を削ってスペースを作っておく必要がある」ってことですね。特に1/72ですから、胴体の厚みが問題になりますよね。しかし、エンジンを胴体前半に装着し、しかも胴体後半(テール部分)をこれにかぶせられるようにするのは(タミヤの1/48のように)、1/72だけに大変。やはり航空博物館みたいに、機体の横にエンジンを単体で展示するのがよさそうです。
 ジェットエンジンのレジンキットで、非常に精密、しかし機体に組み込むのは大変だし、単体で展示するには台架も自作しなければ、というかなりピンポイントでマニアックなキットを、なぜ喜んで買い込んだかと言うと、実は話せば長い物語なのです。