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イギリス労働運動史

2010-07-07 23:38:07 | Weblog
資本論やイギリスの研究第一人者といわれている浜林正夫一橋大学教授が書いた「イギリス労働運動史」を読み始めています。
1994年にはじめてロンドンを訪れて、大英博物館のカールマルクスの席があることを発見して、産業革命で資本主義が発展していった英国研究は共産党の議員にとっては活動のルーツを探る旅になるということでそれ以来数回、英国を訪問しては、カールマルクスやロバートオーエンなどの史跡を訪ねています。



今回は旅行ではなく「読書の中で英国訪問」を楽しみたいと思います。
この本の第1章「労働組合の生成期」から話をすすめます。

第一節 盗み、打ちこわし、ストライキ

 盗んだのは誰か エングルスは『イギリスにおける労働者階級の状態』(1845年)のなかで、「労働者の抵抗の最初の、もっとも粗野な、そしてもっとも効果のない形態は犯罪であった…貧しさのために、財産にたいする先祖伝来の尊敬の気持ちも押さえつけられてしまった彼は盗みを働いた」[エングルス、1845年、下、44ページ]と書いています。
 しかしこれは誤りです。たしかに、エンゲルスが言っているように、産業革命期の「工業の拡大とともに犯罪は増加」しました。その犯罪の大部分は財産にたいする罪、つまり盗みでした。しかし、それは金持ちに対するひがみとか、財産を尊重しようという気持ちを失ったためとかではなく、じつは財産というものについての考え方が変わり、これまで盗みとされていなかった行為が盗みとされるようになったためでした。

たとえば、村の共有地であったところが私有地になり、これに立ち入ることが禁止され、そこで木を切ったり、動物をつかまえたりすると、盗みとされるようになったのです。変わったのは労働者ではなく、法律とそのもとにある財産というものについての考え方でした。
農村の共有地取り上げについてはよく知られていると思います。マルクスは大学卒業後『ライン新聞』の主筆になり、1842年に「第6回ライン州議会の議事-木材盗伐取締法についての討論」という論文を書きました。村の共有地が私有地となり、そこに入りこんで木材を伐採したのが犯罪として取り締まられるようになったという問題を取り上げたものですが、そこでマルクスは「われわれは貧民の手への慣習的権利の返還を要求する」と書いています。

 日本では岩手県の小繋(こつなぎ)というところで、やはり私有地になってしまった山林に対して、木材や薪炭利用の入会権(共同利用権)を主張して、村民が訴訟を起こし、50年以上にわたって争われた裁判が有名です。

これは資本主義社会がどのように形成されていったのかのプロローグですが、マルクスの資本論によって資本主義社会が解明されていくのはこれからです。

著者 浜林正夫 1925年生まれ 一橋大学名誉教授 イギリス労働運動史 2520円