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わいせつ行為で停職6か月の懲戒処分は妥当か

2020年02月25日 | 地方自治体と法律
 地方公務員が停職6か月の懲戒処分とされたことの是非が争われた裁判例を見かけましたので紹介します(最高裁平成30年11月6日判決・判例タイムズ1459号25頁)。

【事案の概要】
 地方公務員のXは、勤務時間中にコンビニに行き、コンビニの女性店員にわいせつな行為等を行った。そのことで、市はXに停職6か月の懲戒処分を行った。Xはこの懲戒処分が重すぎるとして、提訴。

【懲戒処分とされた行為】
 ①勤務時間中に立ち寄ったコンビニエンスストアにおいて,そこで働く女性従業員の手を握って店内を歩行し,当該従業員の手を自らの下半身に接触させようとする行動をとった。
 ②以前より当該コンビニエンスストアの店内において,そこで働く従業員らを不快に思わせる不適切な言動を行っていた。

【高裁の判断】
 Xへの停職6か月の懲戒処分は重すぎるから、処分を取り消す。
(理由) 
 ①Xと女性店員は顔見知りで、Xから手や腕を絡められるという身体的接触について渋々ながらも同意していた
 ②女性店員と店舗のオーナーはXの処罰を望まず、そのためもあってXが警察の捜査の対象にもされていない
 ③Xが常習として本件のわいせつ行為と同様の行為をしていたとまでは認められない
 ④本件のわいせつ行為が社会に与えた影響が大きいとはいえない

【最高裁の判断】
 市の停職6か月の処分は妥当(高裁の判決は取消し)
(理由)
ア ①については,Xと女性店員はコンビニエンスストアの客と店員の関係にすぎないから,女性店員が終始笑顔で行動し,Xによる身体的接触に抵抗を示さなかったとしても,それは,客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地があり,身体的接触についての同意があったとすることはできない。
イ ②については,女性店員及び店舗のオーナーがXの処罰を望まないとしても,それは,事情聴取の負担や本件店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるものとも解される。
ウ ③については,Xが以前から本件店舗の従業員らを不快に思わせる不適切な言動をしており,これを理由の一つとして退職した女性従業員もいたのだから,本件処分の量定を決定するに当たり軽視することができない。
エ ④についても,わいせつ行為が勤務時間中に制服を着用してされたものである上,複数の新聞で報道され,市で記者会見も行われたことからすると,Xの公務一般に対する住民の信頼が大きく損なわれたというべきであり、社会に与えた影響は決して小さいものということはできない。 
オ Xのわいせつ行為は,客と店員の関係にあって拒絶が困難であることに乗じて行われた厳しく非難されるべき行為であり,Xの公務一般に対する住民の信頼を大きく損なうものである。また、Xが以前から同じ店舗で不適切な言動を行っていたなどの事情に照らせば,本件処分が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものであるとまではいえない。


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