南斗屋のブログ

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高次脳機能障害を認めた裁判例(名古屋地裁平成21年7月28日判決)

2009年10月14日 | 高次脳機能障害
自賠責の等級認定では、高次脳機能障害が後遺障害として認められなかったのに、裁判所が高次脳機能障害(7級)を認めた裁判例が、自動車保険ジャーナルに掲載されていましたので、紹介します。

名古屋地裁平成21年7月28日判決(自保ジャーナル1800号9頁)

同判決のケースは
自賠責では高次脳機能障害は否定されています。

(理由)
①事故の4年5ヶ月後に行われた頭部MRI検査の結果は、事故による外傷性の異常所見とは認められない。
②初診時に意識障害がない。

①は画像所見に関するもの、②は意識障害に関するものと言えます。

自賠責ではこのケースでは両方とも要件を充たさないと判断ています。

この結論を、名古屋地裁は覆しました。

まず、画像所見については
「事故の4年5ヶ月後に行われた頭部MRI検査の結果は、脳挫傷の可能性が高いと診断されている異常所見である」
として、自賠責とは逆の判断をしています。

画像をどう読むかというということ自体にも、医師によって見方が変わるようで、このケースでも医師の意見が分かれていたようですが、裁判所は外傷性の異常所見であるとする考え方を採用しました。

次に、意識障害についてですが、裁判所は
病院の初診時に意識障害がなかったという自賠責の判断は前提としつつ、病院につくまでの間に意識の清明度が低下した失神状態又は意識内容が変化したもうろう状態にあったと認められる
として、意識障害の要件も充たすと判断しています。

意識障害は一定期間継続することが要件であるはずなので、病院に到着するまでの間の短時間での意識障害だけで、意識障害の要件を充たすといってしまってよいかどうかは、微妙であると思います。


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