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裁判所構成法を読む 裁判所書記、執達吏、廷丁 第2編第4章-第6章

2024年01月06日 | 治罪法・裁判所構成法
公布:明治23年2月10日
施行:明治23年11月1日(上諭)

裁判所構成法を読む 裁判所書記、執達吏、廷丁 第2編第4章-第6章

第2編 裁判所及ビ檢事局ノ官吏
第4章 裁判所書記
#裁判所構成法
第85条 裁判所ニ第八條ニ從ヒ相應ナル員數ノ書記ヲ置ク。
2 區裁判所ノ各判事及ビ合議裁判所ノ各部ノ爲、少クトモ一人ノ書記ヲ置ク。
(コメント)
裁判所構成法8条は、「各裁判所ニ書記課ヲ設ク」と規定しており、書記課には「書記」が置かれる。現行法(裁判所法)では「裁判所書記官」という呼称であり、異なった呼称である。

#裁判所構成法
第86条 地方裁判所ノ書記課ニ、監督書記ヲ置ク。控訴院及ビ大審院ノ書記課ニ、書記長ヲ置ク。
2 區裁判所及ビ檢事局ノ書記課ニ、二人以上ノ書記ヲ置キタルトキハ、其ノ一人ヲ監督書記トス。
3 監督書記及ビ書記長ハ、各々其ノ上官ノ命令ニ服從シテ、書記課ノ事務ヲ指揮監督ス。
(コメント)
地裁の書記課は「監督書記」と呼ばれ、控訴院・大審院の書記課では「書記長」と呼ばれる(1項)。上官の命令に服従して、書記課の事務を指揮監督するのが、その職務である(3項)。

#裁判所構成法
第87条 書記、其ノ職務ノ範圍内ニ於テ、取扱ヒタル事ハ、既ニ定マリタル事務分配上、其ノ事他ノ書記ニ屬シタリトノ事實ノミニ因リ、其ノ効力ヲ失フコトナシ。
(コメント)
書記が取り扱ったことは、事務分配で他の書記に属するとなっていたとしても、そのことで効力を失わないとの規定。

#裁判所構成法
第88条 書記ハ、司法大臣之ヲ任ジ及ビ之ヲ補ス。
2 書記長ハ奏任トス。
3 書記長ノ職ハ、司法大臣之ヲ補ス。
(コメント)
書記及び書記長の任命権限者及び補職者についての規定。書記長は奏任。判事・検事が勅任又は奏任であるから、一段階差をつけている。「奏任官」とは、天皇への上奏を経て任ずる官職をいい、高等官三等から九等に相当する。

#裁判所構成法
第89条 書記ニ任ゼラルルニハ、勅令ノ定ムル所ニ依リ、試驗ヲ經ルコトヲ要ス。
2 志願者、前項ノ試驗ヲ受ケ得ルニ必要ナル資格、竝ビニ此ノ試驗、及ビ試驗ヲ經タル後爲スべキ修習ニ關ル細則ハ、裁判所書記登用試驗規則中ニ司法大臣之ヲ定ム。
(コメント)
書記も試験にパスする必要がある(1項)。試験を経た後には「修習」が行われるが、修習の内容等は裁判所書記登用試驗規則において定められる(2項)。

#裁判所構成法
第90条 書記ニ任ゼラレタル者、闕位ナキ間ハ豫備書記ニ補ス。
2 豫備書記ハ、書記トシテ臨時勤務ヲ命ゼラルルコトヲ得。
(コメント)
予備書記に関する規定。予備判検事については63条が規定しており、同趣旨。書記に任命されることと、職に補されることが区別されていたので、このギャップを埋めるために「予備」の概念が必要になっていると思われる。

#裁判所構成法
第91条 書記ハ、其ノ上官ノ命令ニ從フ。
2 裁判所ノ開廷ニ於テハ、裁判長ノ命令ニ從ヒ、又判事一人ナルトキハ其ノ判事ノ命令ニ從フ。
3 書記ハ、檢事局ニ勤務スルトキ又ハ特別ノ事務ニ付キ、判事若ハ檢事ニ附屬シタルトキモ、亦其ノ檢事局又ハ判事若ハ檢事ノ命令ニ從フ。
4 前二項ノ命令ニシテ口述ノ書取ニ關ルカ、又ハ書類記録ノ調製若ハ變更ニ關ル場合ニ於テ、其ノ調製若ハ變更ヲ正當ナラズト認ムルトキ、書記ハ自己ノ意見ヲ記シテ之ニ添フルコトヲ得。
5 前四項ニ掲ゲタルモノヲ除ク外、書記ノ職務及ビ其ノ事務取扱方法ハ、書記ニ關ル規則中ニ司法大臣之ヲ定ム。
(コメント)
書記は上官の命令に従わなければならない。判事にはこの旨の規定がないが、検事には判事には同様の規定がある。

#裁判所構成法
第92条 合議裁判所長、又ハ區裁判所ノ判事、若ハ監督判事ハ、其ノ裁判所ニ於テ修習中ノ試補ニ、書記ノ事務ヲ臨時取扱ハシムルコトヲ得。
2 前項ノ場合ニ於テ、職務上署名ヲ要スルトキハ、特別ノ許可ヲ得テ署名スル旨ヲ記ス。
(コメント)
「試補」は第一回試験に合格し、裁判所及ビ検事局で三年間修習を行っている者(58条2項)。この試補に書記の事務を臨時で取り扱わせることができるとする規定。

#裁判所構成法
第93条 豫備書記ハ、事務ノ取扱ニ於テハ書記ニ同ジ。但シ、書記規則中ニ制限ヲ設ケタルモノハ、此ノ限ニ在ラズ。
(コメント)
本条は、予備書記であっても事務の取り扱いは、通常の書記と同様であると規定する。予備書記に関する規定は90条にあり、書記に任命されたが、欠位がない場合に予備書記に補職される。

第5章 執達吏
#裁判所構成法
第94条 各區裁判所ニ、第九條ニ從ヒ、相應ナル員數ノ執達吏ヲ置ク。
(コメント)
執達吏に関する規定。執達吏は区裁判所に置かれることは9条で規定されている。執達吏の職務についても同条が規定している。

#裁判所構成法
第95条 執達吏ハ、司法大臣之ヲ任ジ及ビ之ヲ補ス。
2 司法大臣ハ、控訴院長ニ其ノ管轄區域内ノ裁判所ノ執達吏ヲ任ジ及ビ補スルノ權ヲ委任スルコトヲ得。
3 執達吏ニ任ゼラルルニ必要ナル資格、竝ビニ試驗ニ關ル規則ハ、司法大臣之ヲ定ム。
(コメント)
執達吏を任命し、補職するのは司法大臣であり、その権限を控訴院長に委任することができる。執達吏に任命される為に必要な資格及試験関係の規則として、「執達吏登用規則」(明治23年司法省令第2号)が制定された。

#裁判所構成法
第96条 執達吏ハ手數料ヲ受ク。其ノ手數料一定ノ額ニ達セザルトキ、補助金ヲ受ク。
(コメント)
執達吏の収入は給与ではなく、手数料及び補助金による。手数料の詳細は、「執達吏手数料規則」(明治23年法律第52号)が規定している。

#裁判所構成法
第97条 執達吏ハ、其ノ所屬區裁判所ヲ管轄スル地方裁判所管轄區域内ノ、何レノ場所ニ於テモ其ノ職務ヲ行フ。
(コメント)
執達吏は区裁判所に所属しているが、その区裁判所を管轄する地方裁判所の管轄区域では職務を行うことができる。

#裁判所構成法
第98条 裁判所ヨリ發スル文書ニシテ、送達ヲ要スルモノハ、執達吏ヲ以テ之ヲ送達ス。但シ、書記ヨリ直接ニ若ハ郵便ヲ以テ送達スルコトヲ法律ノ許ス場合ハ、此ノ限ニ在ラス
2 執達吏ハ刑事ニ付、警察官ヲ以テ執行ヲ爲サザル場合ニ限リ、裁判所ノ裁判ヲ執行ス。
3 前二項ニ掲ゲタルモノヲ除ク外、執達吏ノ權限ハ、訴訟法又ハ特別法ノ定ムル所ニ依ル。
(コメント)
送達は原則として執達吏が行う。また、執達吏は刑事事件で、警察官が執行するものを除いて、裁判の執行をする。

#裁判所構成法
第99条 執達吏ハ其ノ職務ヲ適實ニ行フ爲、保證金ヲ出スコトヲ要ス。
2 執達吏ノ職務細則竝ビニ保證金ニ關ル規則ハ、司法大臣之ヲ定ム。
(コメント)
執達吏の収入は給与ではなく、手数料及び補助金によるので(96条)、職務の適正さを確保するために、保証金を納付するという制度が採用されたのであろう。

#裁判所構成法
第100条 執達吏ハ、其ノ所屬裁判所ノ上官ノ命ヲ受ケタル書記、及ビ其ノ裁判所ヲ管轄スル地方裁判所ノ上官ノ命ヲ受ケタル書記、及ビ其ノ書記ノ上官ノ命令ニ從フ。
(コメント)
書記は上官の命令に従わなければならないが(91条)、執達吏には上官がいない。そこで本条により、誰の命令に従わなければならないかが規定された。
以上で執達吏の章を終える。
執達吏研究の参考文献
川口由彦『帝都の法社会史 明治日本の執達吏・観解吏・代言人群像』

第6章 廷丁
#裁判所構成法
第101条 廷丁ハ、大審院・控訴院及ビ地方裁判所ニ於テハ裁判所長、區裁判所ニ於テハ地方裁判所長之ヲ雇ヒ、及ビ其ノ雇ヲ解ク。
(コメント)
廷丁(ていてい)は、廷吏の旧称。法廷での事務その他の雑務に従事する裁判所職員。裁判所長が雇用するという位置づけである。

#裁判所構成法
第102条 廷丁ハ開廷ニ出頭セシメ、及ビ司法大臣ノ發シタル一般ノ規則中ニ定メタル事務ヲ取扱ハシム。
2 區裁判所ハ、執達吏ヲ用ヰルコト能ハザルトキハ、其ノ裁判所所在地ニ於テ、書類ヲ送達スル爲、廷丁ヲ用ヰルコトヲ得。
(コメント)
廷丁の職務。送達は執達吏送達が原則ですが、例外的に廷丁による送達も認められている。
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