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地方公務員災害補償法の地方公務員災害補償基金審査会

2021年03月25日 | 労働関係
(はじめに)
 地方公務員災害補償法の支部審査会(審査請求を担当)と審査会(再審査請求を担当)について調べる機会がありましたので、まとめておきます。

(地方公務員災害補償法の審査組織に関する規定)
 地方公務員災害補償法によれば、支部審査会及び審査会の組織等は次のとおりです。

1 支部審査会(正式名称「地方公務員災害補償基金支部審査会」)
 支部審査会は、地方公務員災害補償法(以下、「法」)により以下のように組織されることとなっています。
・支部審査会は、委員三人をもつて組織。
・委員は、学識経験を有する者のうちから従たる事務所の長が委嘱。
・委員の任期は三年。

2 審査会(正式名称「地方公務員災害補償基金審査会」)
審査会の組織
・委員六人をもつて組織
・委員は、学識経験を有する者のうちから基金の理事長が委嘱。
・委員の任期は三年。
・再審査請求を扱うのは、委員のうちから審査会が指定する者三人をもつて構成する合議体。
 ただし、次のような場合は委員全員(6人)をもつて構成する合議体で行う。
一 合議体が、法令の解釈適用について、その意見が前に審査会のした裁決に反すると認めた場合
二 合議体を構成する者の意見が分かれたため、その合議体としての意見が定まらない場合
三 前二号に掲げる場合のほか、審査会が定める場合

(審査会の委員)
 審査会の委員は令和元年11月5日時点で次のとおりです(地方公務員災害補償基金HP掲載)。
 括弧内は、インターネット上で検索し、でてきた経歴等です。
①井口傑(整形外科医師。元慶応大学整形外科大学教授。2008年同教授退職)
②石川良二(不明。平成25年時点で北海道教育大理事・事務局を務めていた同姓同名の方がいますが、同一人物か確信がもてません)
③上田紘士(元総務省。まちづくりが専門の方のようです。自治大学校客員教授等)
④内野淳子(元厚労省。平成28年3月退職。同年4月から横浜国大監事)
⑤熊埜御常武敬(元総務省。令和元年7月退職)
⑥寺本明(脳外科医師。日医大名誉教授。湘南医療大学副学長)。
 前項で述べたとおり、この委員のうちから審査会が指定する者三人をもつて構成する合議体で再審査請求が行われることになります。

(再審査請求について)
 審査会は再審査請求を担当しますが、再審査請求一般についてみておきましょう。
・行政不服審査法改正では、再審査請求全廃論もあった(平成20年法案)。
・従前の再審査請求の趣旨は以下のとおりである。
ア 審査請求について手続的な保障が薄かったため、再審査請求をおいて手続的保障を確保した。
イ 国の裁定的関与(地方公共団体が行った処分について、国が再審査請求等でかかわり、判断の統一性及び事務の適正確保を図ること)
 このうち、行政不服審査法改正でアの手続保障は厚くなったため、再審査請求全廃論が生まれたが、裁定的関与を残すため、再審査請求が存置された。
(以上は、宇賀克也「行政不服審査法の逐条解説(第2版)」を参考としました)

(考察)
 このような再審査請求存置の趣旨からしますと、審査会は、判断の統一性及び事務の適正確保を趣旨としていることになります。全国の支部会で出された審査請求の結果に不服がある者について、再審査請求事案が上がってくるのですから、人的リソースを考えると、全件を支部会と同様の時間をかけた審判ができるようにも思えません。裁判でいえば、最高裁的な関わり(事実認定が問題となる事案については、よほどの裁量権の逸脱がない限り関与しない)となる可能性があるのではないかとも考えられます。

 

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