尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

認めがたい「解釈変更」-検察官定年延長問題②

2020年02月15日 23時13分43秒 | 政治
 東京高検検事長の定年延長問題に関して、安倍首相は2月13日の衆議院本会議で「従来の国家公務員法の解釈を変更した」と明言した。その前の2月10日、山尾志桜里衆議院議員の質問で、国家公務員法の従来の政府解釈との矛盾を追及した。1981年に国家公務員の定年が制定された当時、「定年延長は検察官には適用されない」と答弁していたというのである。13日は高井崇志議員への答弁で、従来の政府解釈の存在を認めて、安倍内閣が解釈を変更したとした。
(森法相に質問する山尾議員)
 これには開いた口が塞がらない。全く認められない答弁である。以下でその理由を4点にわたって指摘したい。まず最初の理由は「国会無視」である。国会は国権の最高機関であり、法律を制定する。憲法は国民投票を経ないと改正できないが、法律は国会で改正できる。実際安倍内閣では「改悪」としか言えない「改正」を幾たびも行ってきた。「解釈変更」なんて言われたら、その「改悪」さえ必要なくなる。どんなに強引であれ、検察庁法が変えられたんだったら「違法」にはならない。黒川検事長が2月に定年だと判っていたんだから、昨年の臨時国会に検察庁法改正案を提出するべきだった。

 二番目の理由はプロセスが不明なこと。この解釈変更はいつ、どのように行われたのか? 国民としては首相答弁で変更があったと初めて知った。最低限でも定年延長と同時に解釈変更も発表しないとおかしい。解釈変更を知らされるまでは従来の解釈が正しかったことになるから、定年延長は違法だという批判は正しかったのである。ところで「法律解釈の変更」はどうすれば出来るのか。首相が表明すればそれでいいのか。そんなことはないだろう。日本は法治国家なんだから、閣議決定などの「証拠」がいるだろう。解釈変更に至るプロセスをきちんと明らかにするべきだ。追求を避けるために、思いつき的に解釈変更と言い出したとしたら、その弊害は非常に大きい。
(条文と政府見解)
 第三に「特例に特例を設けるのは不可」ということだ。国家公務員法では定年を60歳としながら、「特別の事情」の場合に「一年を超えない範囲」で延長出来るとする。(3年以内に限り繰り返し延長可能。)検察庁法では検察官の定年を63歳として、それは「(国家公務員法の)特例を定めた」と明記している。検察庁法がそもそも「特例」なのに、さらに政府解釈によって「特例の上乗せ」が出来るのか。よく新聞のチラシなどにあるクーポンや優待券を見ると、様々な券の「併用は出来ません」と書いてある。法的根拠の問題ではなく、一般常識で考えて「特例の特例」は法改正なくして不可能だと考える。

 最後に、これは僕が言うことでもないと思うけど、検事長は「認証官」だという点を挙げておく。「認証官」というのは、就任に当たって「天皇が認証する」とされている公務員(特別公務員を含む)のことである。民主主義なんだから、そんなことはどうでもいいじゃないかと思うだろうが、当人たちにとっては重大な問題なんだろう。例えば各省の事務方トップの事務次官は認証官ではない。だから法務次官は認証官ではないが、検事長は認証官なのである。検事総長、次長検事に加えて、日本に8つある高等検察庁のトップである検事長は認証官なのである。

 外務省でも外務次官は認証官ではないが、大使(特命全権大使)は認証官である。他には宮内庁長官公正取引委員会委員長原子力規制委員会委員長なども認証官。政治家が就任する国務大臣や副大臣は別にして、日本の官界において検察官や特命全権大使は特別な重みを持っている(と自分たちは自負している)。そのような重職だからこそ、定年においても特例を認められている。そんな「重大な職」にあるものが政権の意向で定年延長して貰って検察のトップになる。そんなことが許されてよいことなのかと支配層内部でこそ反感を持たれているのではないか。
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