「消費税減税か、給付金か」とタイトルを付けたが、もう結論は出たようなものだ。2ヶ月前に『消費税、軽減税率の減税が必要だーエンゲル係数が高すぎる』という記事を書いて、その時には消費税減税を主張した。しかし、自民・公明の与党は参議院選挙の公約に「2万円の給付金」を掲げるそうだ。さらに「子どもと住民税非課税世帯の大人には1人2万円を加算する」とのことである。参院選は政権選択選挙ではないので、参院選後に新たな首相指名選挙は行われない。大負けして石破首相が辞任したとしても、後継の自民党新総裁が新首相になるだろう。衆議院で与党は過半数を持ってないけど、まあ給付金が実施される可能性が高い。
しかし、どうなんだろう? 子どもが多い家庭はともかく、一人暮らし、二人暮らしの家庭で「2万円」振り込まれて、何か特別な消費喚起になるんだろうか。もちろん「役所に行くと手渡しで現金2万円もらえる」というなら、もらったお金で帰りにちょっと贅沢しようとなるだろう。でも振り込まれるんだから、いつの間にかキャッシュレス決済で少しずつ消えていくだけで、特別な消費を考えないんじゃないか。金額的に「家電買い換え」とか「一泊旅行」とかには不足感を感じるからである。
まあ、それでも「貰えるなら嬉しい」と思う人は多いだろうし、特に子育て世帯にはありがたいことも確かだろう。ただ「何が目的か」と考えた時、国政野党が消費前減税を参院選の公約に掲げる中、「これでは参院選を戦えない」という参議院与党の意向が大きいのは間違いない。石破首相もちょっと前まで給付金に否定的なことを言っていたが、まあ押し切られたということか。ただし、首相の意向らしいが、「子どもに2万円加算」というような措置を行うなら、結構制度設計が面倒で自治体の負担が大きくなる気がする。子どもと言ったって親が消費するわけで、親子の確認をしなければならない。(DV夫に支給しないようにとか。)
だけど、何のための給付金なのか。貰った側は何に使っても良いけれど、それで良いのか。つまり景気全般が冷え込んでいて、何でもいいからお金を使ってくださいということなのか。そうじゃないだろうと思う。電機製品や衣料、旅行などは毎日のように消費するものじゃない。それに対して「食料品」はまとめて買い溜めするとしても、毎週は買っている。自分で作らない場合でも、毎日外食するかコンビニなどで買っている。自分じゃ買わない人でも何か食べてるわけだし、米価が高騰した話などは日々聞かされている。最大の問題は食料品の高騰にあり、その日々の実感に応える「何か」が必要だというのが僕の考えなのである。
石破首相も一時は消費税減税も検討したといわれている。しかし、森山幹事長の意向が減税不可で固いらしいし、システム改修に時間がかかるということでなくなったらしい。この「時間」問題に関しては、5月31日の朝日新聞が「ファクトチェック」を掲載している。それによると個人商店などでは「すぐ出来る」らしいが、スーパー、コンビニなど大型小売りチェーンでは確かに「1年以上」または「数ヶ月から半年」必要らしい。それはスーパーなどの答えではなく、システムを改修する会社の側の回答である。僕も前回書いたときは「すぐ出来る」と思っていたが、そうでもないようなので訂正したい。
それは「POSシステム」を利用しているからだという。うーん、聞いたことはあるけどPOSが何を意味するのか思いつかない。調べてみると「Point of sale」のことで、日本語では「販売時点情報管理」というらしい。Wikipediaには「小売業において商品の販売・支払いが行われるその場(販売時点)で、その商品に関する情報(商品名、価格、売れた時間など)を単品単位で収集・記録し、商品売り上げ情報を把握し、それに基づいて売り上げや在庫を管理するためのシステム」だそうである。
まあ、そういうシステムがあるということは何となく聞いたことがある。そういう詳しい商品情報を経営に生かすというのは、コンビニなどでは死活的な重要性があるんだと思う。しかし、それは企業経営の問題であり、そのために消費税を上げ下げできないというのも何かおかしい気がする。しかも「消費税ゼロ」というのは、「そもそもそういう設定を想定しておらず、新たなシステム開発に近い」んだそうだ。いや、それはおかしいでしょ。大体、消費税率はこれからも(多分上がる方向で)変動するかもと予測してシステムを作っておくもんだと思う。だけど、この問題は以下の方法で対応可能だと僕は考えている。
それは以下の二つの方法である。一つは各店舗の割引を利用するのである。1000円の食品には今軽減税率の8%が適用されている。だから、1080円を支払うことになる。税率を例えば3%に下げたとしたら、それが1030円となる。客からすれば50円割引と同じである。つまり、システム改修が間に合わないチェーン店があったら、店独自で割り引きすれば良い。後で国の税務当局と協議して、店が独自負担した分を国がキックバックすればいい。5%割引とかポイント10倍とかよくやってるから出来るはずだ。
もう一つは「消費減税の期間をあらかじめ定めておく」ということである。例えば「2年間で元に戻す」と決めれば、システム改修が出来た店から消費税を減税するのである。そうすると個人商店などはすぐ出来るから最初は客が殺到するだろうが、小売りチェーンはなかなか始まらない。不公平だけど、2年経つと今度は個人商店の税率は元に戻るが、コンビニなどはまだ減税している。合わせれば同じような効果になるんじゃないだろうか。まあ、一国で税率が違う店が一時は並立するのは確かにおかしいけれど。
まあ、そういうことはともかく、「物価高対策の目的は何か」という観点で考えれば、「エンゲル係数が高くなった」日本で生活の基本である「食」を支援するという意味で「食料品の税率を下げる」方が望ましいのではないか。なお、消費減税では高所得者が買う高額食料品まで支援することになってしまう。だから低所得世帯に絞って給付金を支給する方が良いという主張がある。それはもっともだが、「低所得世帯」の定義が難しく、どこかで線引きに洩れる不公平が生じる。それに高所得世帯は物価高騰に困ってはいないだろうが、それでも所得に関わらず「食」を支援する意味はあるんじゃないだろうか。
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