「中選挙区」を考える話の続き。僕はこの話を主に国政の問題として書いている。原理的には地方自治体の選挙も同じだけど、じゃあ現在行われている都議会議員選挙には「中選挙区」があるから間違っているという主張はしない。何故かというと2つあって、一つは地方選挙では首長を住民が直接選ぶ「大統領型」になっているということがある。議会構成がどうなろうと、知事や市長は別に選ばれるんだから、強大な権力を持つ首長に対して、議会にはできるだけ多様な勢力がいる方がいいわけである。
地方議会の選挙も比例代表制にすべきではないかというと、確かにリクツではそうなんだけど、特に町村議会なんかになれば「無所属議員」がとても多い。無所属議員にとっては、比例代表にする意味がない。都議選なんかは、各党が全力を挙げる「首都決戦」になっているが、それでも一人一党的な議員もいるものである。国政選挙が政党間の争いになるのは当然なので、選挙制度の話もそれを前提に書いているけど、もし全立候補者が無所属なんだったら、選挙制度をどうするかという議論は意味がなくなる。
さて、では国会議員の一番大切な仕事は何だろうか。これをタテマエで答えると間違ってくる。リクツで言えば、国会は国権の最高機関で、三権分立の中の「立法」を担当するから、「法律をつくること」などという答えになる。でも現実には世界中で立法機関より行政機関の方が実質的権力を持っている。「サミット」なる主要国のリーダーが集まる場には、世界の行政のトップしか来ない。皆が知ってる世界のトップは、その国の行政機関の長の名前である。大体、日本人であっても、首相の名は知っていても、衆参両院議長、および最高裁長官の名前を言える人がどれだけ言えるだろうか。日本の行政機関の長、内閣総理大臣は国会が指名する。従って、国会議員選挙というものは、実質的に「首相選挙人」を選ぶ選挙である。国会議員選挙の方法が大切な理由はそこにある。国会議員の選び方は、国民が「どの党に投票したか」=「誰を総理大臣として支持するか」を正確に反映するものでなくてはならない。
では実際にどんな問題があるか。「中選挙区」がある一番最近の選挙である、2010年参院選を見てみる。この時は2009年衆院選で民主党が大勝したものの、普天間基地移設問題などで鳩山由紀夫首相が辞任し、菅直人内閣に替わった直後だった。菅首相の消費税発言などで民主党が敗北し、民主党が参議院の過半数を失い、「衆参のねじれ」が生じた。いろいろな問題もあったけど、地方の一人区(つまり小選挙区)で民主党が負けたことは確かである。だけど、千葉選挙区(定数3人)のような例はどう考えるべきだろうか。
小西洋之(民主) 535,632 当選
猪口邦子(自民) 513,772 当選
水野賢一(みんな) 476,259 当選
道あゆみ(民主) 463,648 落選
椎名一保(自民) 395,746 落選
小西候補の3万5千票を道候補の得票に加えれば、道候補は49万8千票となり、みんなの党水野候補を上回るではないか。自民党も2人立てたが合わせて90万票だから、完全に真っ二つになって2人とも45万票だったら共倒れしていた。千葉選挙区が3人でいいのかという問題もあるが、一応3人で比例代表で選べば、民主100万、自民90万、みんな47万なんだから、民主党が2人当選、自民党が1人当選というのが正しい民意というべきではないか。与党が1人、野党が2人、という結果は明らかに民主党の票が割れた失敗によるものである。(もっとも総野党を合計すれば、野党系2人当選も正しいと言えるが。)
一方、東京選挙区(定数5人)を見てみる。
蓮舫(民主) 1,710,734 当選
竹谷とし子(公明) 806,862 当選
中川雅治(自民) 711,171 当選
小川敏夫(民主) 696,672 当選
松田公太(みんな) 656,029 当選
小池晃(共産) 552,187 落選
東海由紀子(自民) 299,343 落選
この場合の問題は、票割の失敗ではない。自民党は2人立てたが、合わせて100万だからまだ全然支持を回復していなかった。完全に真っ二つになっていたら共倒れしたのも千葉と同じ。問題は蓮舫に票が集中して、蓮舫票を二つに割っても85万以上だから、1位と2位である。つまり民主党は3人当選できる票を集めていたのである。蓮舫個人を支持したのだという人もだろうが、菅内閣の現職閣僚だったので蓮舫票は民主党内閣支持票と見なすしかない。(仮に蓮舫が比例で出ていたら、だいぶ民主党当選者を増やしたのではないか。)千葉も東京も、「みんなの党」が落ちて民主党が当選する方が正しいという話になったが、別に他意はない。単なる一例をあげただけ。こういう風に票が多すぎることによるゆがみも「中選挙区」では起こるという例である。これも東京選挙区を比例代表で選べば、民主が3人になったわけである。
このような例は、昔の衆議院選挙ではいつも起こっていた。僕も含めて、皆そういうもんだと思っていたのである。選挙に強いとは、「票割がうまい」ということで、そういう選挙のプロがいる党が勝つのは当然だと思っていたわけである。自民党や社会党が共倒れしても、それは仕方ない、その候補者が悪いと思っていたのだけど、あらためて考えてみると、総理大臣を選ぶ時にこれでは困るのではないかと思うようになったのである。中選挙区ではこういうことが起こるという例を挙げた。これを理論的に考えうるとどうなるかという話を次会に。
地方議会の選挙も比例代表制にすべきではないかというと、確かにリクツではそうなんだけど、特に町村議会なんかになれば「無所属議員」がとても多い。無所属議員にとっては、比例代表にする意味がない。都議選なんかは、各党が全力を挙げる「首都決戦」になっているが、それでも一人一党的な議員もいるものである。国政選挙が政党間の争いになるのは当然なので、選挙制度の話もそれを前提に書いているけど、もし全立候補者が無所属なんだったら、選挙制度をどうするかという議論は意味がなくなる。
さて、では国会議員の一番大切な仕事は何だろうか。これをタテマエで答えると間違ってくる。リクツで言えば、国会は国権の最高機関で、三権分立の中の「立法」を担当するから、「法律をつくること」などという答えになる。でも現実には世界中で立法機関より行政機関の方が実質的権力を持っている。「サミット」なる主要国のリーダーが集まる場には、世界の行政のトップしか来ない。皆が知ってる世界のトップは、その国の行政機関の長の名前である。大体、日本人であっても、首相の名は知っていても、衆参両院議長、および最高裁長官の名前を言える人がどれだけ言えるだろうか。日本の行政機関の長、内閣総理大臣は国会が指名する。従って、国会議員選挙というものは、実質的に「首相選挙人」を選ぶ選挙である。国会議員選挙の方法が大切な理由はそこにある。国会議員の選び方は、国民が「どの党に投票したか」=「誰を総理大臣として支持するか」を正確に反映するものでなくてはならない。
では実際にどんな問題があるか。「中選挙区」がある一番最近の選挙である、2010年参院選を見てみる。この時は2009年衆院選で民主党が大勝したものの、普天間基地移設問題などで鳩山由紀夫首相が辞任し、菅直人内閣に替わった直後だった。菅首相の消費税発言などで民主党が敗北し、民主党が参議院の過半数を失い、「衆参のねじれ」が生じた。いろいろな問題もあったけど、地方の一人区(つまり小選挙区)で民主党が負けたことは確かである。だけど、千葉選挙区(定数3人)のような例はどう考えるべきだろうか。
小西洋之(民主) 535,632 当選
猪口邦子(自民) 513,772 当選
水野賢一(みんな) 476,259 当選
道あゆみ(民主) 463,648 落選
椎名一保(自民) 395,746 落選
小西候補の3万5千票を道候補の得票に加えれば、道候補は49万8千票となり、みんなの党水野候補を上回るではないか。自民党も2人立てたが合わせて90万票だから、完全に真っ二つになって2人とも45万票だったら共倒れしていた。千葉選挙区が3人でいいのかという問題もあるが、一応3人で比例代表で選べば、民主100万、自民90万、みんな47万なんだから、民主党が2人当選、自民党が1人当選というのが正しい民意というべきではないか。与党が1人、野党が2人、という結果は明らかに民主党の票が割れた失敗によるものである。(もっとも総野党を合計すれば、野党系2人当選も正しいと言えるが。)
一方、東京選挙区(定数5人)を見てみる。
蓮舫(民主) 1,710,734 当選
竹谷とし子(公明) 806,862 当選
中川雅治(自民) 711,171 当選
小川敏夫(民主) 696,672 当選
松田公太(みんな) 656,029 当選
小池晃(共産) 552,187 落選
東海由紀子(自民) 299,343 落選
この場合の問題は、票割の失敗ではない。自民党は2人立てたが、合わせて100万だからまだ全然支持を回復していなかった。完全に真っ二つになっていたら共倒れしたのも千葉と同じ。問題は蓮舫に票が集中して、蓮舫票を二つに割っても85万以上だから、1位と2位である。つまり民主党は3人当選できる票を集めていたのである。蓮舫個人を支持したのだという人もだろうが、菅内閣の現職閣僚だったので蓮舫票は民主党内閣支持票と見なすしかない。(仮に蓮舫が比例で出ていたら、だいぶ民主党当選者を増やしたのではないか。)千葉も東京も、「みんなの党」が落ちて民主党が当選する方が正しいという話になったが、別に他意はない。単なる一例をあげただけ。こういう風に票が多すぎることによるゆがみも「中選挙区」では起こるという例である。これも東京選挙区を比例代表で選べば、民主が3人になったわけである。
このような例は、昔の衆議院選挙ではいつも起こっていた。僕も含めて、皆そういうもんだと思っていたのである。選挙に強いとは、「票割がうまい」ということで、そういう選挙のプロがいる党が勝つのは当然だと思っていたわけである。自民党や社会党が共倒れしても、それは仕方ない、その候補者が悪いと思っていたのだけど、あらためて考えてみると、総理大臣を選ぶ時にこれでは困るのではないかと思うようになったのである。中選挙区ではこういうことが起こるという例を挙げた。これを理論的に考えうるとどうなるかという話を次会に。
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