尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

オウム真理教が選挙に出たころ-オウム事件考③

2018年08月06日 22時48分44秒 | 社会(世の中の出来事)
 オウム真理教に関するさまざまの問題を頑張って書いてしまおうと思う。いや、また中断するかもしれない。猛暑で脳内も溶けかかっている気がするし。でも、当時のことを知らない人が多くなってきて、改めて書いておく意味があると思ったのである。

 オウム真理教は1989年に坂本弁護士一家殺害事件を起こしていたが、そのことは1995年までは「噂」でしかなかった。1990年にオウム真理教の面々は「真理党」を結成して衆議院選挙に立候補した。今思えば「殺人集団」が選挙に出ていたわけだ。この時の政局は、前年の1989年7月の参院選で土井たか子委員長の社会党が躍進し与野党が逆転した。1990年2月18日の衆院選では自民党が過半数を取れるかが焦点だった。(前回1986年衆参同日選の300議席超からは減ったけど、自民党が275議席を獲得して政権を維持した。海部俊樹内閣。)

 そんな政治情勢の中で、「真理党」は惨敗する。当然だろう。何の政治基盤もなく、突然選挙に出て勝てるわけがない。確かに創価学会を支持基盤にした公明党もあったわけだが、教団の勢力が全然違う。それに公明党はまずは地方選挙から出発し、国政には参議院から進出した。もともと創価学会は在家信者の集まりだから、地方選挙に出る意味がある。一方、「出家」信者ばかりのオウム真理教は地域に基盤がなかった。そこで「ショーコー、ショーコー」などと歌い踊る奇妙な選挙運動を展開した。検索したら写真が出てきたので以下に。

 この選挙活動を見たと思う。テレビで見ただけかなとも思ったけど、1990年にはテレビを持たない暮らしをしていた。だから、きっとどこかで遭遇したこともあったのだろう。当時自分の選挙区では誰か出ていたのかと思って調べてみた。当時はよく「中選挙区」と言われる時代だったが、長年住んでいた東京10区では新実智光が出ていて、たった205票だった。いくら複数当選できる制度だったとしても、同時に岐部哲也も出て139票だった。と調べたところで、その時は千葉だったと思いだした。住んでいた市川市は千葉4区で、何とこっちには遠藤誠一が出て、508票だった。

 教祖の麻原彰晃はどこに出ていたのかと言えば、旧東京4区である。自治体で言えば、渋谷区、中野区、杉並区。ここでは東京ということで候補も乱立し、ビリではなかった。1783票取った。一応の知名度はあり、どこにでも面白がって入れる人がいるということだろう。トップは自民党の粕谷茂で78,114票。続いてこのとき無所属で立候補した石原伸晃が73,939票。さらに自民の高橋一郎、社会党推薦の無所属・外口玉子、社会党の沖田正人、ここまでが当選。

 次点は共産党の松本善明で61,311票。その次が公明党の大久保直彦で、58,863票。二人とも全国的な知名度がある政治家だったが、自社の争いに沈んだ。松本は次回の選挙でカムバックし、大久保はその前に92年の参院選で当選した。続いて、社会民主連合の岩附茂、29,333票。進歩党の田中良、11,508票。現在の杉並区長である。スポーツ平和党の細木久慶、4,830票。日高達夫、藤原和秀、そして麻原彰晃。まだ下に4人いる。昔はずいぶん出ていたものだ。

 しかし、それは麻原だけのことで、東京5区で出た上祐史浩は310票。東京8区で出た村井秀夫はたった72票。神奈川3区で出た中川智正は1,445票を取っているが、ダントツでビリだった。全部を調べたわけじゃないけど、首都圏を中心に立候補したんだろう。そしてそのほとんど、麻原以外はもう圧倒的に引き離されて最下位である。せめて麻原ぐらいはもう少し取るかと思っていたんだろうが、選挙はそう甘いものじゃない。というか、立候補してるということは知られていたが、選挙運動を見て異様に思った人が多いんだと思う

 選挙に行く人はそれなりの支持政党、あるいは支持をお願いされた候補者を持っているわけだから、訳の分からない選挙運動をしても票は入らない。しかし、それに止まらず、「このグループはおかしい」と直感したのである。それが多くの人の実感だったと思う。だから、1995年にオウム真理教事件の大捜査が始まった時に、これは冤罪ではないかなどと誰も思わなかった。僕も思わなかった。何でもかんでも、オウムと関係あれば誰でも逮捕しちゃう「微罪逮捕」は行き過ぎだと思った。でも、やはり坂本弁護士も松本サリンもオウムだったかと思った。それは選挙で見たうさん臭さを多くの人が覚えていたということだと思う。
コメント (1)
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