尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「部活指導員」と「部活講師」-部活を考える⑦

2018年02月01日 22時53分43秒 |  〃 (教育問題一般)
 部活問題も長くなってしまった。番外編はまだあるんだけど、制度論は終わりにしてしまおう。教員の長時間労働問題を解決しないといけないという問題意識が最初にある。部活を変えない限り、教員の長時間労働も解決しない。少子化に伴い、生徒数も教員数も少なくなるから、学校に今までのように多くの部活動を置くことはできなくなる。だから、試合に勝つことを目指すような活動は、地域全体で取り組む以外にできなくなる。それは前に書いた。しかし、一律に学校での部活はなくせないし、「勉強系部活」を中心に生徒の要望は大きいんだろうと思う。

 一方、文科省は教員の働き方のモデルを作るというけど、そこに「サービス残業」があったらおかしい。公立学校の教員に対して、「朝7時45分学校着、8時から登校指導(ボランティア)」とか、「17時勤務時間終了 18時まで部活動指導(ボランティア)」とか書くわけにはいかない。生徒に対して「喫煙は法律違反だ」と指導し、教員に対しては「職務命令だから、卒業式の国歌斉唱時には起立せよ」と言う。そんな教育行政が、職務命令も出せないのに法律違反のボランティアを強制することはできない。(そもそも「ボランティア」は「強制」できないが。)

 じゃあ、どこに解決法があるか。あるとすれば、当面は3つだけだと思う。一つは「部活休養日」に「部活による勤務超過」の代替を認めることだ。もっともこれは実際は難しい。各部交代で部活休養日を設けたとしても、会議は連日のようにあるから早帰りは難しい。特に中学校は労基法に定められた「一斉の休憩時間」が取れない。タテマエ上は昼休みが休憩なのかもしれないが、そこには「給食指導」がある。ある意味授業以上に気を遣う時間で、とても職場を離脱する自由などはない。(休憩時間は職場を離れてもいいはずだが。)

 昔は労基法上の「休憩時間」と「休息時間」を授業終了後に「まとめ取り」するような「職場慣行」があったところも多いと思う。会議や部活動がない日に関しては、他の日の代替として4時ころで早帰りも認めるといった「慣行」である。しかし、それは労基法上は本来できないので、かつての「公務員バッシング」時代にほとんどなくなってしまったと思う。学校では校長の権限が強いので、校長判断でできる余地があるかもしれないが、労基法の改正で特例措置が公認されない限り事実上は難しい。

 そうなると、部活は「部活指導員」が担当するという方向に変えていくしかないのではないか。一挙に全学校の全部活で、土日も放課後も担当する「部活指導員」が見つかるはずがない。だから、10年間程度の猶予を認めて、全教員に「部活指導員」資格を無条件で付与する。部活動の時間は「職務専念義務の免除」を申請して、部活指導員として行う。(当初は学校全体で「職免」手続きを行うしかないだろう。)当然のこととして、「部活指導員」には最低賃金以上の報酬が支払われる。

 当面は部活動と勤務時間の問題をクリアーするためには、このような「奇手」を使うしかないのではないか。家庭事情で部活を担当できない教員は、当初から「部活指導員」資格を申請しないことを認めればいい。大体今の部活顧問には資格も何もない。まあ卓球部やマンガ部なんかならともかく、柔道部や吹奏楽部なんかは「法律的には誰でも顧問になれます」とか言われても困ってしまう。では資格があればいいのかというと、それも違う。その競技の専門的な経験、実績がある人ほど、「熱心」な指導、つまりはパワハラなどが起こりやすい。だが、そういう問題も含めて、やがて「部活指導員資格」は整備されざるを得ないのではないか。特に「危険性の高いスポーツ」を中心に。

 もう一つ、前に書いた「部活動軽減」制度がある。担任のない教員が勤務時間をずらし、部活後の下校指導を担当する。それ以外の教員は勤務時間を過ぎたら上っていい。実際は難しいかもしれないが。今は終了時に部活ごとにあいさつをすることが多い。そういうのはまとめてやればいいし、体育館や部室の鍵かけなどは部活軽減教員がやればいい。そういうことが考えられるが、いずれにせよ新しい予算措置が必要になる。しかし、できる地方自治体から取り組んでいくしかない。

 それより僕が将来的に考えて欲しいのが、「部活講師」制度だ。今は講師は授業を担当するためにしか雇用されない。雇用期間も不安定である。特に音楽などは授業時間数が中学でも高校でも半端が出やすく講師時数が多い。また女性教員が多いから、産育休代替の需要も多い。産育休代替は全日勤務だから部活もできるが、講師は部活を持てない。でも、音楽を学んで教員免許も持つ人だったら、吹奏楽や合唱などの経験者が多いに違いない。部活も担当してもらってはいけないのか。

 常勤講師として雇用し、勤務時間をずらして3時間目ぐらいから後の授業と部活動を担当する。場合によっては、部活動の場所は近隣のスポーツセンターなどの場合も考えられる。まとめて近隣地域の生徒の指導に当たるわけである。ただの部活指導員でもいいんだけど、やはり授業も少しは担当した方が生徒のことがよく判る。体育や音楽の教員希望の人なら、「常勤の部活講師」になりたい人もいるのではないか。スポーツや音楽、ダンスなどを目指す若者は多いが、現実にプロになれる人は少ない。やがて指導者になることも考え、教員免許を取得して部活講師になるという人生の選択肢を作ってはどうだろう。

 もっともそれは待遇的に一生続けるという仕事にはならないだろう。やはり若いときの仕事ということになる。「部活講師」になった若者も、やはりホンモノの教員を目指すというならば教員試験で優遇すればいい。一方、部活の実績を上げ強豪私立高校の監督に迎えられる、スポーツの審判員や関連団体で働く、地方自治体職員の方に専念して社会教育を担当するなど、いくつかの人生コースが考えられる。バイトしながらスポーツや文化活動(音楽、ダンス、演劇等)をしている若い人はものすごくいっぱいいる。勉強への意欲を高める意味でも、ぜひ検討して欲しいと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする