尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

年末に見た映画-「友だちのパパが好き」など

2015年12月29日 22時48分30秒 | 映画 (新作日本映画)
 映画を見るときにいいなと思うのは、その日の気分で見る映画を変えられること。演劇やコンサートでは、大体事前に前売りを買っておかないといけない。でも、最近は具合が悪いとか、なんか疲れてるなという時もあるので、なんだかあまり前売りを買いたくないのである。映画だって、最近はネットで席まで取れるから、ヒット映画を見るときは予約していくけど、僕がよく行く名画座やフィルムセンターなんかは当日行けばいい。その日しかやってない映画は、まあ無理してみることもあるけど、ヒット映画なんかはどこかで見られるだろうと思い、かえって見逃すことになる。

 今日は、昨日まではシネマヴェーラ渋谷というところで、古いアメリカの映画、ビリー・ワイルダーの「第十七捕虜収容所」などを見るつもりだった。でも、起きて見たら、なんだかあまり気乗りしないので、神保町シアターへ行って、斉藤由貴映画祭の「恋する女たち」を見てから、新宿へいって若尾文子映画祭で「雪の喪章」を見た。これは自分の中では「金沢映画二本立て」というつもり。「雪の喪章」はフィルムセンターの三隅研次監督特集でもうすぐやるけど、時間的に難しいので、今見てしまうことにした。あまり金沢のロケはなかったけど、金箔の老舗の話が金沢らしい。いろいろドロドロがあるメロドラマだけど、さすがに三隅演出は冴えている。一人生き残る若尾文子もいいけど、若旦那のお手が付く女中をやってる中村玉緒がすごく良かった。戦争はホント大変だった。

 「恋する女たち」は、氷室冴子原作を大森一樹監督で映画化した「正統アイドル映画」という感じの映画。1986年のキネ旬6位に選出されているけど、長いこと見てなかった。当時は就職、結婚の後で、非常に忙しくお金もないし、見逃しが多い時期。何度か見逃した後で、今年春にフィルムセンターの追悼特集でやっと見た。つまり、見たばかりなんだけど、非常に面白かったので、また見たかった。斎藤由貴はまあ頑張ってますという感じなんだけど、友人役の高井麻巳子相楽ハル子がすごくいい。高井麻巳子って誰だっけと検索したら、今は秋元康夫人だった。相楽晴子(ハル子)も、もちろん最高は「どついたるねん」だけど、こっちもいい。いやあ、すごくいい。僕の好きなタイプ。今どうしてるんだろうと思ったら、ハワイで外国人と結婚しているとのこと。それ以上にすごいのは、小林聡美。「快演」というより「怪演」に近いけど。あのころの大林作品よりいんじゃない。事故死した菅原文太の息子とか、今見ると貴重な顔ぶれがそろっている映画だけど、金沢の街並み、武家屋敷、県立美術館から香林坊の109まで、さらに温泉や鉄道などロケも貴重。相米の「翔んだカップル」もいいけど、80年代ころのアイドル映画の最高峰はこっちだと思う。自主映画時代から見ている大森映画でも、一番面白いかな。「ヒポクラテスたち」や「風の歌を聴け」よりも。また見てもいいな。

 一昨日も新宿で見たい映画に時間的に間に合わず、角川シネマ新宿へ行って若尾文子映画祭を見た。「最高殊勲夫人」は若尾文子のトーク付。その後「東京おにぎり娘」というのも見て、その後に見た「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」は記事を書いた。それはともかく、昔のよく出来た日本映画、プログラム・ピクチャーは実に肩がこらず、見ていて楽しいな。昔の風景を見るのも楽しいし。今日、神保町シアターに行ったら、1月末から「芦川いづみ特集」のアンコール上映があると出ていた。これはまた見たいなあと思う。どうも、それでいいのかとも思うけど、古い日本映画はいい。

 ということで、12月は途中で疲れてしまって、行くつもりだった「書を捨てよ町へ出よう」(演劇)や上野鈴本の「年末に芝浜を聞く」(落語)も行かなかった。映画はそれよりは見ているけど、新作が少ない。「スター・ウォーズ」も見てもいいけど、まあ見なくてもいいかな。僕だって外国のエンターテインメント映画を見ないわけではないけど、案外疲れるうえ、思ったより面白くないことが最近は多い。見逃し映画も多いけど、好きでない映画は見ても書かないので、もう少し見ている。(例えば、見逃していた「セッション」を新文芸坐で見たけど、これはねえ、好きになれないな。敢えて書くけど。)また犬が好きだから「ベル&セバスチャン」とか「シーヴァス」とかを見たんだけど、まあ、映画として満足できなかった。

 そんな中で、昨日は見逃していた「お盆の弟」という映画を渋谷アップリンクでレイトでやってるというので、見に行った。その前にユーロスペースで「禁じられた歌声」と「友だちのパパが好き」を見た。「禁じられた歌声」はイスラーム過激派に支配されたアフリカのマリ共和国の古都、ティンブクトゥを描く。そういう意味では、「今こそ見るべき映画」なので、独立した記事を書くべきだとも思うんだけど、難しい映画ではないけど、よく理解できない点もあった。確かに音楽もサッカーも禁じられた世界を描くんだけど、一番描かれているのは、どこにでも起こるような事件である。監督も言ってるけど、アフリカのサハラ南部地帯にイスラーム過激派が広がったのはリビア内戦にある。カダフィ政権打倒のために、欧米諸国が安易に反体制派に武器を「援助」したのが問題だった。

 面白いのは「友だちのパパが好き」で、今年の岸田戯曲賞を受賞した山内ケンジの脚本、監督。ここまで凶暴なヘンタイ映画も滅多にない。父親が「不倫」しても、あるいは女子高生が教師を好きになっても、倫理的にどうかという問題はあるけど、ドラマ的には「ありそうな展開」になってしまう。でも、高校時代の友人が「あなたのパパが好き」といって暴走を始めたらどうなるか。確かにこれは今までにない展開ではないか。年上の先生に憧れるのと、友だちのパパを好きになるのは、やっぱり違うよね。同じ「中年、妻子あり」だったとしても、同年代の友人の父親とホテルに行きたいって言ったら、なんだかすごくヘンタイな感じがするではないか。いやあ、アイディア勝ちだなあ。あまりに出来過ぎな怒涛の展開のコメディだけど、間違いなく面白い。もう少し映像には凝って欲しいなあと思うけど。クローズアップも多すぎ。でも「直視」した方がいいのかも。「お盆の弟」はもういいや。いまどきの白黒映画で群馬県で撮った話。悪くはないけど…。といった感じで、ちょっと元気が出たので、映画が見たいかな。他の話を置いて、年末書き残しの映画や本やニュースの話を書いてしまって、2015年も終わりとしたい。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする