尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

都知事選の投票率はどうなるか

2014年01月22日 22時03分06秒 |  〃  (選挙)
 いよいよ都知事選の告示日となる。今回の都知事選については、何も書いて来なかったし、終わるまで書く気はない。ただ投票率がどうなるかの観測だけ書いておきたいと思う。その前にちょっと触れておくが、日本の選挙というのは、本当におかしなことばかりである。選挙の告示も済んでないのに、「有力候補」だけ集めて演説会を開こうとする人がいる。参加できない陣営を批判するような論調があるが、それは「事前運動」とどこが違うのか。一方、告示されるとできなくなることがあるので、告示前にしておいて下さいと言う訴えもある。選挙戦が始まる方が選挙運動が不自由になるのである。不思議な公職選挙法である。

 さて前回の都知事選前にも、「都知事選と衆院選-投票率を調べてみる」という記事を書いた。その記事の中に過去の都知事選の投票率を書いておいた。都知事選というのは、前々回までは統一地方選挙の前半(4月の第2日曜)に行われてきた。1947年4月に日本国憲法の地方自治制度に基づき、最初の都道府県知事選挙、および都道府県議会選挙が行われた。以後、任期途中の辞任、死亡などがなければ、今も4年ごとの4月(次回は2015年)に行われるが、もうそういう県は10程度になっている。都道府県議会選挙は、まだ統一地方選挙で行われているところが多いが、東京は1965年に都議会での大規模汚職事件が起き、都議会が解散して臨時に選挙が行われた。(それまで地方議会の解散は法律上できなかったので、国会で特例法が出来て、その後に解散した。)それ以来、都議会選挙の時期がずれてしまい、国政選挙の前哨戦になってしまった。2009年6月の都議選は民主党が圧勝し、夏の政権交代を予告した。一方、昨年6月の都議選では自民党が圧勝し、7月の参院選挙の与党過半数獲得を予告した。

 ということで、近年の都知事選は統一地方選挙で行われてきたが、前回初めて知事の任期途中辞職があり、年末に行われることになった。そこに後から衆議院の解散が行われ、都民にとっては同日選挙になった。衆院選は小選挙区と比例区とあるうえ、最高裁裁判官の国民審査もあるし、そこに都議会の補欠選挙があった地域もあり、あまり選挙が重なるのも困りものである。と言っても、人が一番行く衆議院選挙と重なったこともあり、62.2%いう異常に高い投票率となった。3分の2もないのに「異常に高い」のかというかもしれないが、1975年の美濃部知事三選(対立候補は石原慎太郎)の時の67.29%以来の高投票率だったのである。これは「衆院選に行くついでに都知事選にも投票した」ということである。それまでの都知事選史上最高だった美濃部知事の2期目の361万票を軽く超えて、猪瀬前知事が433万票も取ったのはそういうことである。

 となれば、今回の都知事選の投票率は下がるだろうと予想できる。「脱原発をめぐって熱い論戦が繰り広げられ盛り上がる」などという人がいるかもしれないが、そういうことがあっても、「盛り上がって50パーセントを超えた」というレベルだろうから、前回に比べて10%程度は減ると見ておかないと行けない。昨年の都議選は、なんと43.5%だった。それよりは高いのではないかと思うが、やはり必ず減るだろう。それを予測できるデータもある。

 東京新聞1月13日付に出ている世論調査結果である。その記事は「『投票行く』93%」と一面トップで大見出しが出ている。読んでみると「投票について『必ず行く』と『たぶん行く』と答えた人が合わせて93%に上り、関心の高さを示した。」と書いてある。僕が思うに、これは「そう書いておかないといけない」という記事であって、データ読解が間違っている。なぜなら、前回の調査結果も出ていて、前回は「必ず行く」が66.5%、「たぶん行く」が25.7%で、91.5%が「高い関心」を持っていたからである。で、実際は62、2%。「必ず行く」人も行かないのである。だから「たぶん行く」は行かないということで、新聞社に聞かれると、まあはっきり行かないとは言わないのである。まだこの国では、聞かれれば「選挙は一応行くべきもの」という「空気」があるのである。

 そう考えると、「必ず行く」が、今回は5.9%減少しているという所こそが、この調査の示す一番大事なデータである。「必ず行く」からさらに少し引くと、50%台半ばということになる。近い時期に国政選挙どころか、地方選挙もない、完全に独立した選挙になったこと、一番寒い1月末から2月の選挙戦になったこと、特に都議選が終わってから半年ほどということなどを考え合わせれば、5割を超えるかどうかこそが問題で、盛り上がって5割台半ばと思っている方がいいのではないか。もちろん、それがいいと言う話ではない。

 ところで、昨年の「12月2日現在の選挙人名簿登録者数」は、「10,806,141人」となっている。性別を示すと、男が5,311,546人、女が5,494,595人。
 大まかに言えば、東京の有権者は1千万人である。従って、5割の投票率で500万票、6割になれば600万票となる。さて、その投票結果がどうなるだろう。何となくの予測はあるが、書かないことにする。影響力もないし、当たっても特にうれしくないので、終わってから書く気になれば書く。それにしても、有力候補なる人々はみな高齢男性ばかり。この厳寒期の選挙で、インフルエンザにかかって倒れたりすると、あっという間に陣営が崩壊する恐れもある。動員されても演説をあまり近くで聞かない方がいいかもしれない。まあ、健康に気を付けて下さい。

 東京では、有権者が多すぎて、調べて演説会に行かない限り、選挙カーにあうこともなく、選挙ハガキも来ない。電話も載せてないから来ないし、新聞を取ってない人は広報も入手しにくい。かなり多くの人が、ポスター掲示板しか選挙らしいことがないということになる。東京で1人を選ぶというのは、「砂漠の中で石を見つける」ようなものだと思う。さて、どうなるか。
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