尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

参議院選挙の結果を考える②

2013年07月23日 23時47分05秒 |  〃  (選挙)
 参議院選挙のデータ分析。3つの観点で見てみたい。
選挙予測は当たったか
 最近の新聞は数字を明記しない場合も多いのだが、18日付朝日新聞は数字を出している。それをもとに。
 選挙区はほぼすべて当たっている。が、まあこれは誰でも当てられる。民主が「8~11~15」とあるが、実際は10。「みんな」が「1~3~4」だが、実際は4。範囲内に入っているから間違いではない。だが、他の党はすべて中心の予測ドンピシャリ。これは宮城でみんなの党が民主党現職の岡崎トミ子を破ったのが、今回の唯一の番狂わせで、後は大体最後のころの勢いそのままだったということだ。

 比例区はしかし、少し違っている。自民は「19~21~24」と比例が削減されて以後の最大の勝利を予測していた。実際は18議席だから、予測の最低を割り込んでいる。自民は予想より不振だったのである。民主、みんな、社民は当たり。生活に一人当選を予想しているが実際はゼロだった。つまり、自民で3、生活1の4議席が予想より下。その分増えたのは、維新が「3~4~5」なのに、実際は6議席。公明と共産が1議席ずつ予想の中心から上積み(しかし上限の範囲内には入っている。)非常に意外な感じを受けるかもしれないが、今回自民が思ったより少なく、維新は事前予想より獲得したのである

 これは多分、投票率が思ったより高かったということだと思う。投票率が低い、低いと言う人が多いが、これほど事前予想がはっきりしている選挙で、52.61%は僕の予想より上。5割行くか行かないかではないかと予想していた。

 つまり、多少は自民が多くなり過ぎるのはどうかと思った有権者がいて、その人々は、与党内でも公明に、自民より維新へ、反自民は共産へと3つのパターンで行動したのではないかと思う。反自民票は今では民主には向かわない。そこで与党は支持するが公明に暴走を止める役を期待する、あるいは共産に期待する。では予想より維新が増えたことはどう考えるか。これはまだ僕にも判断が付かない。
都議選との比較
 局所的データになるが、直近に都議選が行われた。都議選とは選挙のやり方がかなり違うが、東京の比例区票と都議選の結果を比べてみたい。都議選では全区に候補を立てていない政党が多いので完全に有効な比較とは言えないが。まず最初が参院選の票で、カッコ内が都議選。

 自民180万(163万)、共産77万(62万)、みんな71万(31万)、公明69万(64万)、維新63.5万(37.4万)、民主58.5万(69万)…
 他党は都議選に多くの候補を立てていないので比較に意味がない。一応参院選の得票を紹介しておくと、生活12万、社民11.6万、緑の党9万、みどりの風7万、大地4万、幸福実現党1.4万。

 民主党は、都議選段階でははかろうじて第2党を維持していたが、参院選比例では何と第6党である。それに代わり、共産党が第2党で、都議選段階から15万票も増やしている。ネット選挙や選挙区との連動など理由はいろいろあるだろうが、東京では都議選で第3党になったことで「共産党が発見された」のではないか。それまでは負けを承知で入れる老舗左翼政党だったのが、当選を意識して反自民票を託せる可能性が出てきたわけである。みんなや維新は、都議選では候補がいない選挙区が多いのであまり比較の意味がないが、都議選の倍を獲得している。

 ちなみに、前回2010年を見ておくと、民主191万、自民125万、みんな92万、公明70万、共産50万、社民25万だった。民主の激減は言うまでもないが、社民は半減、みんなの党も維新ができたこともあり、20万票を減らした。公明も実は微減である。自民は55万票を増やし、共産は23万票、維新が40万票以上増やした。(維新は「立ち上がれ日本」と「日本創新党」の合計が26万票あり、それを基に考えた。)

 これを見ると、都議選以後に、自民と共産が勢いづき、民主の票離れがさらに進行したと言えそうである。まあ、常識をデータで裏付けただけだが。
各党の地域ごとの党勢は
 ついでに各地域での政党の強弱を簡単に見ておく。各党がその県で比例区票の何割を得ているかを見てみたい。自民は全国的に比例で3割以上を獲得しているが、ただ一県沖縄での支持が25%となっている沖縄では社民党が第2党で約20万票弱を獲得した。自民は山口、鳥取など幹部のいる県では、4割を超えている。北陸、中国、四国、九州で圧倒している。

 維新は大阪で100万票以上を獲得、第一党である。面白いことに大阪選挙区の東徹は105万6815票で、維新の比例票は105万3036票。ほとんど同じである。選挙区の個人票が全く流出していない。「橋下信者」がまだまだ多いということではないか。全国的にはまだら模様で、西日本でも少ない県もあり、東日本でも1割以上の支持がある県もある。まあ関西中心であるのは間違いないが。

 共産はほぼ全国で1割程度だが、京都と高知で高い。一方、東海と九州が弱い。公明はほぼ全国で1割半ばになっている。富山、石川、福井の北陸で9%台だが、これは真宗王国なので創価学会信者が少ないのだと思われる。「みんな」はほぼ愛知県以東で1割を超える支持があるが、西日本と北陸で5%程度の得票しかない。民主は、東京、大阪、沖縄と候補のいない富山、和歌山で1割未満の得票であるが、それでも多くの県では15%程度を取っている。民主が強い東海では、共産やみんなが少ない。そういう関係がありそうである。
 時系列に沿って各党の盛衰を見たかったのが、時間が遅くなったので次回に回す。
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参院選の結果を考える①

2013年07月23日 01時08分16秒 |  〃  (選挙)
 参議院選挙が終わり、与党の圧勝と言う、各マスコミが予測し、僕も公示前後に書いておいた通りの結果が出た。

 比例区は自民が18、公明が7で、過半数は超えているが、与党25、野党23で差は2つ。2人区では、民主が共産、みんな、維新に競り負けたところがあるが、それはそれとして自民は一人しか立てていないから差は付かない。3~5人区では、埼玉、千葉、東京で自公合わせると一つ多いので、合計3差。結局は1人区で、29勝2敗という自民の大勝になったということが、今回のすべてだった。その詳しい分析は次回に回す。

 僕はこのような、人口比例に著しく反するような一人区のあり方に根本的な疑問を持っている。参議院の役割から言って、衆議院より多くの議員を出す必要はない。だから各県の選挙区というやり方をする以上は、一票の格差が解決しようがないという問題を抱える。結局、比例区だけにすればいいのである。そういうことを前に書いた。もし、参議院が比例区のみ96議席だったとしたら、以下のような議席配分になる。

 自民30、民主22、公明13、みんな11、共産8、維新7、社民3、生活1、改革1 計96

 つまり、比例だけなら自公では過半数ではなかったということになる。

 しかし、とりあえず自公で大きく過半数は越えた。自民党は115議席、公明は20議席。参議院の半数は121だから、まだ自民は公明を必要としている。(数字上は9議席の維新と連立すれば、公明が離脱しても過半数にはなる。)ところで改選数の半分は61だから、今回は65で4つ超えている。次回2016年参院選で自民は久しぶりに(1986年以来)、参議院の単独過半数獲得が見えている

 さて、今後の政治日程を考えておきたい。衆院選後、僕は「次の総選挙は遠くない」という記事を書いた。その当時はその分析は当たっていたと思う。安倍首相は今回、衆参同日選をやるのではないかという観測がある時点までかなりあったのである。しかし、それはなくなった。来たるべき総選挙は、維新の橋下大阪市長が出馬する可能性が高いと見られている。大阪都構想を掲げる以上、2016年にならないと立候補できないと見られている。しかし、今の時点で自民に代わって維新が大きく伸びると言う可能性は全くなくなった。首相候補のライバルとしての維新、という問題はなくなった。早めに総選挙を仕掛けると、自民は精一杯伸びきっているので、伸びしろが少ない。憲法改正の同志たりうる維新が減って、共産のみ増えるという可能性が高い。従って、安倍首相が早めに総選挙に踏み切る可能性はほとんどない。

 安倍首相の、自民党総裁としての任期は2015年までである。今のまま高支持率を保っていれば、再選も視野に入ってくる。当面はそこに向け、2014年に何をするかという問題に絞られる。高支持率、衆参の過半数と条件はあれど、これがいつまでも続くかどうかは判らない。問題は4つ。消費税、TPP、スキャンダルや失言、首相の健康である。これに後継争いが加わる。すでに2回総理をやった安倍が自民党総裁に再選されれば、もう3年も続く。そうすると、次は一気に若返る可能性が高い。それを快く思わない人もいるだろう。それが消費税やTPPの政策課題の判断という形を取って、党内の政争が起きるわけである。当面は秋に、消費税増税とTPPの条件の最終判断をしなければならない。

 だから秋までは、安倍首相は低姿勢を続けざるを得ない。衆参で大勝したけど、案外安全運転を続けているではないかというムードが求められるのである。しかし、政界は一寸先は闇。何が起きるか判らない以上は、多数を持っている間に思ったことをやってしまおうという誘惑が強くなる。それが2014年。つまり来年こそが真に重大な政治の季節になりそうであると僕は予感する。野党のどこが少し減ろうが増えようが、最後は国家と民衆が直接対峙するという政治の本質は変わらない。いよいよ、来るのではないか。あっちにつくか、こっちにつくか、一人ひとりが決めなくてはならない時が。
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