尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

ネルソン・マンデラと奥西勝

2013年07月20日 23時11分29秒 |  〃 (冤罪・死刑)
 今、ネルソン・マンデラ(1918~)が生涯最後の闘いを続けている。言うまでもなく、南アフリカ共和国の元大統領。人種隔離政策(アパルトヘイト)に抵抗して、1962年に逮捕され1990年に釈放されるまで、獄中で不屈の人生を送った。その様子は「マンデラの名もなき看守」という映画で見ることができる。7月18日が誕生日で、国連はその日を「ネルソン・マンデラ・デイ」に指定して、67分間を誰かのしあわせのために使うことを提唱しているという。09年に出来たらしいが、僕は今まで知らなかった。

 80年代に、欧米諸国が南アフリカとの経済活動を断つ中で、日本が貿易額で一位になった時期がある。日本でも反アパルトヘイト運動が高まり、この恥ずべき日本政府や日本企業への抗議を行った。僕もそういう集会で買った「Release Nelson Mandela」という顔写真入りのTシャツを持っている。これはずいぶん教室で役だった。ネルソン。マンデラと言う人は、だから僕にとっても、長く自由と人権の象徴である。生きているだけで、世界の多くの人々を励ますという存在である。一日も長く生きていて欲しいが、しかし人間である以上は人生の終わる日がやがてあるのは間違いない。

 6月に危篤が公表されて以来、世界のメディアが殺到し、南アフリカ内部、あるいは家庭内の状況なども様々な混乱した情報が流されている。最近面会したズマ大統領は、「着実に改善している」と言っている。「危篤ではあるが」という前提があるが。実際のところはよく判らないが、数年前から公の活動はできなくなっており、今後も公衆の面前に出てくると言うことはないだろう。

 さて、一方日本では「名張毒ぶどう酒事件」で再審を請求している奥西勝さんの危篤状態が続いている。僕はこの事件について何回か書いている。最近公開された「約束」という映画のことや、昨年5月の再審棄却決定を批判する「名張事件再審棄却に異議あり」などである。

 この事件ほど複雑怪奇な経過をたどっている事件はないだろう。何しろ一審は無罪、二審で逆転死刑である。こういう事件は他にない。これだけで、死刑制度に疑問が湧いてくる。その後何度も再審開始を求めたが、棄却され続けた。そしてついに2005年に名古屋高裁が再審開始決定を出した。これに対し、検察が異議を申立て、それが2006年に認められ再審開始が取り消された。それに対し、最高裁が全く異例なことに、2010年に差し戻し決定を行った。そして、それに対する決定が2012年5月に出て、再審棄却だった。こういう風に、再審開始決定が一度は出たものの、裁判所をエスカレーターで行ったり来たりしてるうちに、肝心の奥西氏の容体が悪化の一途をたどりつつある

 死刑囚というのは、「死刑執行」そのものが刑なので、有期懲役の被告が刑期の確定とともに刑務所に行くのと違って、ずっと拘置所(裁判中の被告、あるいは取り調べ中の容疑者を勾留する施設)にいる。しかし、奥西氏は今、八王子医療刑務所に移送され、そこで意識のない状態が続いていると伝えられる。誰でも面会できるわけではないので、情報が限られているが、極めて厳しい状態が続いているものと思われる。現在、87歳

 今再審は最高裁段階にある。一刻も早い再審開始が望まれる。アムネスティ・インターナショナル日本支部が、最高裁の再審開始を求める電子署名を募っている。是非、アクションに参加して下さい。
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