チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

衣ずれの音

2014年04月24日 09時15分58秒 | 日記
チャコちゃん先生は病院は苦手
できるだけお見舞いに行かないようにしている
冷たいと思われるかもしれないが
弱っているその人のお顔を見るのが辛い
外科の場合はまだしも

先日長く患っている方のお見舞いにちょっと遠くまで出かけた
というのはその方の奥様から
「主人が比佐子さんに会いたがってるの」
と言うご連絡をいただいたから

病院ではなくご自宅に帰っておられた
病室に上がる
できるだけ音を立てないようにと静かに廊下を歩き
顔を出すと
「好いねえ衣擦れの音」
第一声
心が静まっていくようだと
身動きする度にでる絹の音にじっと目をつぶって聞き入る

「こう言う音を日本人は忘れていくのかもしれないね」

チャコちゃん先生が着物の仕事をし始めた頃
着物姿の美しい人のいる場所へと連れ回って下さった恩人のお一人
芸者であったり舞踊家であったり
当時はホントウに美しい女人たちがアチコチにいて
其の所作を学ばせていただいていたのだ

「比佐子さんあんたがきちんと伝えなければね」
「ハイ」
「デモ良く続けてもらっていて嬉しい今日はあんたの衣擦れの音が聞けて満足」

目を閉じられたので
また廊下を静かに歩いて奥様に入れていただいたお茶をいただきながら
お世話になった当時のお話しをアレコレさせていただいた
たぶん最後のお別れになるのだろう
コメント
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