千の天使がバスケットボールする

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「幻影シネマ館」佐々木譲著

2009-02-22 11:21:54 | Book
昨日、ブログで更新した映画『戦争はまだ始まっていない』の感想は、映画マニアの方だったらすぐに気づかれたと思うが、実は存在しない映画である。
真相をあかすと、推理小説作家の佐々木譲さんが「小説すばる」で連載していた”架空の映画の紹介と批評”を昨年まとめて、世界初の<実在しない映画>の本として出版された36本の中にだけ、”存在する”映画である。こんな映画があったらいいなという著者の映画の中で、私が一番熱心に観たいと感じた映画に、多少の妄想をふくらませた幻想の映画が『戦争はまだ始まっていない』である。

著者の語り口は、絶妙。この映画が存在しないということがわかっているだけに、単なる作品紹介や批評に留まらず、映画製作の背景や経緯、他の映画との関連や登場する俳優たちの計算など、いかにもありなんという感じで、ただただ著者の豊富な知識と想像に感心しきりである。ある種の知的遊戯の雰囲気もある。但し、この本のお楽しみ指数は、読者の映画のはまり度、偏愛度、マニアックさに比例する。だからそこそこレベルの映画好きでしかない私としては、昔の俳優の知識がいまひとつで、その遊戯に参加できない無念さも感じる。全くだーーっ。勿論、単なる知識の披露に留まらず、映画へのおだやかな愛情と俳優を慈しむようなまなざしが感じられ、また実在の映画ともリンクして紹介されていて、やっぱり映画好きなら読んでおくべきじゃないかの一冊である。

過去に、ウッディ・アレンが架空の戯曲やバレエについての批評を書いたそうだが、著者はそれにならって映画版で連載したのだが、連載当時の読者のなかには、「あの映画は見逃した」という反応があったり、実際にレンタル・ビデオショプで当該作品を探した被害者の方?もいたそうで、ちょっと罪つくりな本だったそうだ。慌てものの私も「小説すばる」でこの連載を読んでいたら、きっとビデオ屋で探していただろうと確信するもう1本の映画。

後にエイズで亡くなるアルファンソ・デミル製作の1981年『サマー・デイズ』という青春群像映画である。
トレントンの街を舞台に、地元の市立高校を卒業したブラスバンドのメンバーのその後の一夏である。彼らを指導した教師がウィリアム・ハートで同僚との不倫の恋に悩む平凡な教師。まだ無名だったケビン・コスナーが、卒業後、町の警察官になる主人公の役で登場し、政治家をめざすデニス・クエイドや、彼の恋人役にアンディ・マクダウェル。そして、女優の卵になったミシェル・ファイファーや、挫折してやくざになったミッキー・ロークたちが、帰省してきた者たちとの一夏のできごとを繊細に描いた作品である。医師になるためプリンストン大学に進学したアレック・ボールドウィンは、学費が続かず休学を考えているのだが、優秀な兄(デニス・クエイド)にコンプレックスをもつ弟に言う。

「人生というのは、幸福を選ぶか不幸を選ぶか、という実に単純な選択だということだ。人は不幸になるんじゃない。不幸を選ぶんだ」
・・・こんな青春映画を観たい。。。


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