今の世界を見ると、「急速に変化しているな」と、しみじみ思う。
「世界の警察官」だったアメリカは、軍事費を大幅に削減し、世界秩序を維持する役割から降りつつある。シリアの内戦でも、「化学兵器を使ったのはケシカラン。攻撃するぞ」とアメリカ大統領は宣言したが、結局、実行されなかった。ロシアがクリミア半島を併合しても、経済制裁を発表したくらいで、介入するような動きはない。
在韓米軍の司令官も、「軍事予算が削減されたので、もう朝鮮半島を防衛するだけの軍事力を維持できない」とコメントしている。アメリカは、韓国から徐々に撤退する方向だ。
世界から手を引きつつあるアメリカに代わって、中国が太平洋とインド洋に手を伸ばしている。でも、中国の場合は、国内がガタガタな状態だ。
今まで10年以上もの間、「中国は崩壊する」という話をさんざん聞かされてきた。筆者も、そう言い続けてきた(笑)。でも、現実はそれとはウラハラに、中国経済はますます勢い盛んになるばかり。中国は、いつまでたっても崩壊するどころか、ますます発展してゆく。「中国は崩壊するぞ」と唱える人たちは、まったくのオオカミ少年と化したのだ。
ところが、「今年は、本当にヤバイ。いよいよ、オオカミ少年が本当になるときが来たようだ」という声が、世界各国で高くなっている。というのも、マネーゲームが、いよいよ本当に限界に来ているからだ。
上海や南京・杭州その他の不動産は、急速に値下がりしてきたので、現地に行った知り合いも驚いていた。マンションの売り出し価格を大幅に下げるので、先に買った人たちが怒って暴動を起こしたり・・・。日本のバブル崩壊でも、そういうことは多かった。ただし、日本人の場合、暴動を起こすことは、まず無いのだが。
それだけではない。他のいろんな指標も、中国のマネーゲームがいよいよ限界だということを示している。
たとえば、中国では、大量の鉄や銅を作るため、ものすごい量の鉄鉱石や銅鉱石を輸入している。銅鉱石の場合、輸入量が世界の4割を占めるとか。
普通は、輸入した銅鉱石は、金属工場で銅を作るために使われるんだけど、中国の場合は、それに止まらない。それを担保にしておカネを借り、高利回りの金融商品に投資する・・・なんてことが広く行われている。
たとえて言えば、クレジットカードでおカネを借りまくり、それでパチンコをやっていた人が、限度額いっぱいにまでキャッシング枠を使い切ってしまったときにやる手口みたいなものか。
「残念ながら、アナタは、キャッシング枠を使い切ってしまいました。もう、おカネを貸せません」と言われた。そういうときは、ショッピング枠で商品券とかを購入して、換金業者のところに持っていく。そこで、商品券を売って現金をゲットする・・・というわけ。それと同じように、中国では資源を輸入して、それを元手に資金を集めて、バクチを打っている。本当に、バクチ好きな国民だ。
今までは、国をあげたバクチがうまくいって、経済を活性化してきたけど、問題は逆回転してきたときだろう。実際、シャドーバンキングの高利回り商品の償還が滞ってくれば、輸入代金を決済できなくなる。そうなると、銅鉱石を輸入できなくなる。
「そのせいで、銅の価格が世界のマーケットで急落している」というから、バクチ好きの恐ろしさは想像を超える。でも、多くの専門家がそれを指摘している。
>約1か月前の3月7日、銅の国際相場は、7200ドル/トンレベルから一気に6500ドル/トン近辺まで急落した。実に約10%の急落であるから、市場関係者は「何が起こったのか?」と驚いた。
>この状況は一過性のものではない。4月から6月にかけて、さらに銅価格の下落の可能性もある。理財商品で集められたカネ自体も、建設関係や鉱山開発などに投資されているので、運用成績が不調でデフォルトが発生すれば、さらなる悪循環を招く懸念がある。
(ブロゴスより)
いつも、「危ない、危ない」と言われ続けているのに、なんだか、誰にも本当のことは分からないようなブラックボックスの中国経済だけど、こういった「銅の相場」とかはゴマカシがきかないので、こういうのを見れば、だいたい状況がわかるというもの。
エコノミストは、こういうデータを集めて、判断を下す。経済が本当に危ないときだけ、「本当に危ないです」と言えば良い。そうすれば、オオカミ少年にならなくても済んだのに(笑)。
これだけでなく、「いよいよ本当に、中国バブルは崩壊」という事態を示す根拠は、他にもたくさんある。これは、ホンの一例にすぎない。
そんなこんなで、「中国」という国家そのものが、いきなり崩壊するかどうかはともかく、バブル経済は崩壊して終焉。「少なくとも、今までみたいな経済成長はできないでしょうな」という点で、多くの専門家の意見が一致している。
・・・ここからは、願望も混ざった意見になるけど、やっぱり、中国には崩壊してもらいたい。ああいう巨大な統一国家ではなく、もうちょっとバラバラになってもらいたいものだ。
四川省や山東省などは、たとえ独立したとしても、人口1億もいる大国だ。広東省はもっと大きくて、経済規模は韓国にも匹敵する。全部の省が一斉に独立したら、それぞれが、インドを除くアジアのほかの国々と、ちょうど同じくらいの規模の国になる。
もちろん、これらの省が、ある日突然、「中国から独立します」と宣言する・・・なんてことは、あり得ない。台湾でさえ、いまだに独立宣言していないというのに、大陸でそんなことをマジメに考えている人など、普通はいない。
でも、北京の共産党政府が崩壊して、地方をコントロールできなくなれば、独立宣言はしないまでも、実質的にバラバラな状態になるだろう。軍閥割拠で、大陸はいくつかの軍区に大きく分かれる。過去2千年以上の歴史の中で、数え切れないほど繰り返されてきた事態だ。
そもそも、東アジアでは、ヨーロッパほど、キッチリと国境を定める必要がない。香港や台湾がいい例だ。建前としては「中国」という国家が続くにしても、実態としては、香港みたいな自治都市や、台湾みたいな事実上の独立国とか、韓国のような衛星国といった、バラバラな地域がたくさんある、緩やかな国家連合になるのがベストだ。
そうなったら、何年かは大陸が混乱するだろうけど、しばらくすれば、以前にも増して力強く、東アジア全体が発展するに違いない。
ヨーロッパ諸国も、ドイツ帝国・オーストリア帝国・ロシア帝国・オスマントルコ帝国・・・があった頃は、帝国同士がぶつかり合って、いつも険悪なムードだった。でも、1914年の第一次世界大戦で、これらの帝国は、みんなガラガラと崩壊した。それからも紆余曲折はあったものの、いまやヨーロッパは、東欧の一部を除いて、すっかり平和な文明圏になった。
今年は、それから100周年。今度こそ、中華帝国が崩壊する番だろう。
その後の東アジアは、すばらしい文明圏になる。広大な中国大陸を、韓国・台湾・香港・シンガポールが取り囲み、その周囲には先進国の日本や、資源の豊かな東南アジアもある。貿易は、世界の半分以上を占めるようになるだろう。欧米がすっかり小さく見えてしまうほど、東アジアが世界の中心になるに違いない。
「願望が混ざっている」と言っても、遅かれ早かれ、いずれは確実にそうなっていく。できるだけ、早いに越したことはない。その時期はもう、すぐそこまで来ている。
「これからの地球の進化は、日本が中心になる」と言う人も多いけど、筆者の見たところでは、「日本」というより、「自由で繁栄する東アジア」こそが、21世紀の地球の進化の表舞台になるはずだ・・・。