エックハルト・トールの「ニューアース」は、全米で500万部を超える大ベストセラーになった。これを読んだ、日本の精神世界ファンが一様に抱く感想は、「これほど重厚で哲学的な本が、そんなに売れるとは・・・」という驚き。有名なテレビ司会者・評論家のオプラ・ウィンフリーが番組で宣伝してくれたおかげとはいえ、もはや押しも押されもせぬスピリチュアル・リーダーと言える。
「ニューアース」の主要テーマは、「人類の意識の変容」。
日頃、エックハルト・トールは、「地球の次元上昇」といったようなテーマから一線を画している。ひたすら、「いまに在る」という目覚め、内面的な意識改革を唱えてきた人だ。
でも、そんなエックハルト・トールも、「ニューアース」では、「地球人類の意識は、急激に変容しつつある」と言っている。実際に、目覚めた人の数が急激に増えると考えているらしい。
このことに、論理的な根拠はない。結局のところ、それは「エックハルト・トールの直感」というだけ。でも、多くの人々が、同じ直感を共有している。
前書きによると、「ニューアース」という本が書かれた目的はただひとつ、読者を目覚めさせること。読んだ本人の意識の状態が変わらないのならば、この本の存在意義はないとまで言っている。つまり、この本に存在意義を持たせたければ、読んだ我々が目を覚ますしかない(笑)。
ただし、残念なことに、準備が整っていない人は、目覚めることはできないらしい。でも、準備ができている人は増えている。一人が目覚めるたびに集団的な意識のうねりは大きくなり、その他の人々の目覚めが容易になるという。
エックハルト・トールによれば、ほとんどの人間の「ふつうの」精神状態には、狂気と呼べる要素が含まれている。ラマナ・マハリシいわく、「心とは、妄想である」。この、人間の心に含まれる妄想・狂気が、あらゆる苦を生み出す元凶だ。
「人類の歴史は、おおまかに言えば狂気の歴史なのである」と、トールは言う。
これには、うなずける。古今東西を問わず、人類はすさまじい殺し合いをやってきた。歴史は、「戦乱と疫病で、一国の人口が半減しました」とか、「人口が何十万人もいた大都市の住民が、一人残らず殺されました」なんていう事例に事欠かない。人間同士に限らず、地球環境や、動物・植物への凄絶な破壊活動がいまも続いている。
自らの狂気を認識することが正気の台頭であり、治癒と変容の始まり。いわく、「すでに地球上には意識の新たな次元が現れ、最初の花々が少しずつ開きだしている」・・・。
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