ビビッド能里子トーク・サロン

心身両面の指導者として感じたこと

「世界心理治療学会」で発表した小池能里子からのアドバイス 前

2013年03月10日 | 世界心理治療学会アドバイス
★ 自己主張できないために 
 Tさんは41歳で、一流企業のコンピュータ開発部門で働いています。
最近ある大手企業にコンピュータを何台も導入すると言う、大きな仕事があり
ました。そのチームでは彼が一番年長者なのに、責任者は自分ではなく、まだ若い
後輩だったのです。自信過剰なタイプではありませんが、内心では「おそらくこの
責任者には、経験が長い自分がなるのでは」と思っていたので、Tさんは大変
ショックを受けました。Tさんは成績優秀で現在の会社に就職し、友人達からも
大層羨ましがられ、将来を期待されていたのです。
ところが、もともと控え目で、あまり自己主張できないため、社内では目立た
ない存在になっていたようでした。

 研究開発は数人のグループで行っていますが、定時に帰れることは滅多にあり
ませんでした。そのため、だんだん疲労が蓄積し、さらに精神的なショックを受け
たためか、あまり熟睡できなくなり、いろいろ考えることも多くなったのです。
さらに今回のように、自分のプライドを傷つけるような、大きな出来事があった
ことがきっかけになり、以前から気になっていた自分の性格を何とか改善したいと
カウンセリング・ルームを訪れました。
今までは先輩について行けばよかったのですが、自分の後からどんどん若い人が
入ってきて、これからは自分がリーダー的立場にならなければと言う思いをひしひし
と痛感していたことも、その気持ちに一層拍車をかけたようです。
   ★ 性格分析の結果は
 性格分析では自己評価は高く、プライドも強いのですが、何か問題が起きると
すべて自分が悪いと捉える「内罰的傾向」が目立ち、本人が自覚している通り、自分
を表現するのが、大の苦手でした。
 さらにうつ度も大変高いため、やや不安を感じたので、初めにそれらについて詳しく
説明したのです。うつ度が高くなると、最悪の場合には自殺、というケースも考えら
れるからです。「うつ度のテスト」では、中程度のうつ病と判断してもおかしくない
状態でした。Tさんはもともと内向的で穏やかなタイプでしたが、決して悲観的な
方ではありませんでした。また小学生と中学生の息子を持ち、家庭的にも円満で
恵まれていたので、安心して指導を進めました。
 
 
 
 


 ただし「もし私が必要と感じたら、精神科の治療を受けることを約束して下さいね」
とお話ししました。子供の頃から優等生でしたが、控え目で目立つのが嫌いで、もし
何か起きた場合には、「恐らく自分に責任があるのだから、自分から謝っても人間関係
を良くしたい」という、価値観の持ち主だったのです。
 研究開発と言う仕事は、時には議論を戦わせることもあるそうですが、そんな場合
にも「こんなことを言って笑われてしまうのではないか」と言う思いが先に立ち、同じ
チームの人がいろいろな意見や、提案しているときでも、ほとんど自分の意見を
言うことが出来なかったそうです。それではどんな優秀な人材でも、影が薄くなるのは当然。
 人間は言葉で考えを伝える動物です、いくら頭の中に素晴らしい発想があっても、それ
を表現しなければ誰にも伝わらないし、評価もされません。
 人一倍能力がありながら、それを発揮できない彼をどうすれば向上させられるか、私なり
にいろいろ考え、工夫しながら、ご指導を続けました。

 ※ 長くなるので明日に続けます。


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