☆ やさし過ぎる弊害
やさしいことはとても良いことですが、それがあまりにも過ぎると
むしろ相手にとって「ありがた迷惑」となることもあるのです。
子育てをしているお母様方もまったく同様ですが、あまりにやさ
し過ぎは、「過干渉、過剰期待、過保護」となって、子供達の自立心を
摘み取ることにもなるのです。またやさし過ぎる母親に育てられると
家庭内暴力になるという事実もかなり報告されていますので、脅かす
わけではありませんが、もしも心当たりがある方は、これからご自分の
尺度の7・8割の愛情で押さえるように気をつけましょう。
☆ 指導の事例から
浩君は14歳の中学生ですが、幼いときから塾に通わされて、近所の
友達と遊んだことがほとんどありませんでした。
幼稚園に入るため、小学校に入るため、そして有名中学に入学する
ために、いつも母親の言うとおりに勉強ばかりさせられ、「何故自分は
みんなと遊べないのだろう?」と疑問を持ちながらも、抵抗できずいつも
母親の言いつけどおりに大変素直でした。
そして希望の中学に入学してから、今まで勉強のためズット我慢をして
きたスポーツをやりたくなり,両親に恐る恐る相談をしました。
無論母親は大反対でしたが、父親が「今までがんばって勉強をしてきた
のだから、少しは好きなことをやらしてやりたい」と言ってくれそのため
念願のクラブへ入ったのです。クラブは放課後から始まるので、帰りはど
うしても遅くなりその度に、母親から「運動よりも今は勉強の方が大切で
しょ」と毎回言われていたそうです。ある日暗くなって家の帰る途中(ま
たきっとママに文句を言われるのだろう。今ようやく楽しくなってきたのに
嫌だなあ)と考えていたら、何だか突然もの凄く腹が立ったそうです。
そして家に帰ると母親がまるで鬼のような顔をして「あなたが良い大学に
入るまでは、まだまだこれから勉強を続けなければならないのに、何よ!こん
なにお母さんが一所懸命あなたのためにがんばっているのに------」と、大声で
怒鳴なりました。
☆ 長年の抑圧が爆発して
すると浩君は急に頭に血が昇り、玄関にあったバットを持っていきなり家の
中に入り、家中のガラスや鏡食器棚など、すべてを叩き割ったのです。
その物音はすさまじく、何事が起きたのかと近状の人が大勢家から飛び出し
てきたそうですが、それから浩君の家庭内暴力が始まりました。
今まで素直だった態度が豹変して、母親にも暴力を振るうようになった
のです。その暴力は両親だけではなく、姉にも及び警察に相談しても、家庭
内のことだからと、相手にしてくれなかったそうです。
家族は毎日戦々恐々として暮らしていましたが、ある日暴力を振るって
いる最中にパトカーを呼び、結果として精神病院に強制入院したそうです。
息子のために良かれと思ったやさし過ぎる母親の態度が、もともと
自己主張できずイイ子だった浩君は、だんだんフラストレーションが溜まり
思春期に突然爆発したのでしょう。
またやさしさの裏返しは、実は「相手を自分の思い通りにしたい」と言う
気持ちが働くこともあるのです。ご自分の気持ちをコントロールして過不足
のない愛情を注ぐことが、良い親子関係をを保ち、そして子供もまっすぐに
育つことになるのではないかと思います。
「過ぎたるは及ばざるが如し」という諺もありますが、心当たりのある方は
子供にも自主性や人格があり、自分の敷いたレールをまっしぐらに走らせる
のは不可能だと、認識しては如何でしょうか。
◆ R大の研修旅行のために二日間お休みをさせていただきます。
能里子