ビビッド能里子トーク・サロン

心身両面の指導者として感じたこと

今や認知症は社会問題

2014年06月10日 | 認知症の夫と向き合って
☆ 我が家の認知症患者は今…
 最近どこのテレビ局でも大きく取り上げているが、昨夜NHKの
「クローズアップ現代」では、認知症についてのさまざまな取り組み法を
紹介していた。これは個人の問題だけではなく、今や65歳以上は6人に
1人が認知症になると言われているので、社会全体で対応しなければならない
と思う。未だにまだ認知症の家族を「ボケて恥ずかしい」と、外出させな
かったり、また当人も同じように感じ、閉鎖的になる人もいるようだ。
 私は心理カウンセラーとして、認知症と診断された夫に「老化による脳の
病気だから、全然恥ずかしくない、だから堂々としていてね。そして忘れて
迷惑をかけないように、友人達にも伝えましょうね」と言った。
 夫はすぐに親しい友人達に話したようで、そのお陰で今でもことに女性の
友人は細かく気を遣ってくれて、本当に感謝している。
 
  初期の頃はどんどん物事を忘れる夫が、気の毒でならなかった。
明るく物事にあまり動じない夫が、一時的だがうつ状態に近くなったことが
あったが、一番辛いのはご当人なのだと思った。
 治療を受けて4年目に入った夫は、以前とほとんど変りないのは有難いが
進行しているのは確かだ。先日もいつもより早く入浴するので「今日は随分
早いのね」と言ったら「どうせ暇だからね」と入っていた。
 それから夕刊を読んでいたが、さっき入浴したことを忘れて、いつもの時間
にまた入浴したようだ。私は買い物へ行ったので、気がつかなかったが、これは
初めての経験だ。

 自分では日日が分からないので、毎日カレンダーを消しながら、その日の予定
を確認し努力している夫が何とも健気でいじらしい。
 これからどう変化するのか分からないが、まともに会話ができるし、ときどき
ギャグを飛ばすので「ほんとに認知症なの?」と、知人に聞かれることもある
そうだ。そんな時「ずっと治療を受けている、立派な認知症だからと答えるよ」
と笑って言っていた。スムージージュースをいつまで飲まないので「早く飲んで
すぐに飲まないと栄養分がなくなるから」と言うと、「そんな怖い顔して言わない
でよ。まるで鬼みたい」と言われ、つい噴き出してしまう。
 我が家は老夫婦とペットだけだが、いつも笑いが絶えない。
長年私に限りなく寛容で甘かった夫、そのお陰で現在の私がいる、そのお返しとして
私も同じように、これからも彼と接して行きたいと思っている。

夫は「認知症優等生」  後

2014年05月18日 | 認知症の夫と向き合って
 ☆ 夫なりのこまやかな気遣い
 今朝も夫は一人で起きて、身支度を整えペットを連れて、羽根木公園へ習慣の
ウオーキングへ出かけました。夫は治療を受けてから満3年以上過ぎましたので
確かに病気は進行しています。でもお陰様で精神科以外持病の治療は受けて
いますが、大変元気で、穏やかですし、まだ家事も手伝ってくれますし、交友
関係も従来とあまり変化はありません。
 何より私が嬉しいのは、日常的な会話は以前と全然変化なくできることです。
また、先日も私が梅ヶ丘駅の待合室に日傘を忘れ、出先から夫に「取りに行って
くれるかしら?」と連絡しました。すると、携帯などかけたことがないのに
「駅に行ったらあったから」と私に電話をくれました。
 それは家の電話帳から、私の携帯番号を探してかけてくれたのでしょう。
何日か前にはウオーキングの帰りに羽根木公園から、大輪のきれいなさつき
の花を拾いそっと手のひらに乗せて、私に持ってきてくれました。
 これらのことは、以前には絶対する人ではなかったのですが、多分それは
日頃の感謝の気持ちの表れだと、胸がイッパイになるほど嬉しかったです。
 ☆感謝や褒め言葉はダイレクトに
 また、先日は私がアルミの厚手な鍋を落とし、形が変わってふたができなく
なったのに、彼はすりこぎ棒を使って上手に直してくれて、びっくりしました。
 そんな時私は「有難う」は勿論ですが「さすが優等生のあなた!スゴーイ!」と
大変褒めますが、天真爛漫で無邪気な私だからこそできるスキンシップも欠かし
ません。私の陽性な性格も彼にとっては、メンタルな意味で効果的に作用して
いるのでしょう。
 短期記憶はもちろんですが、薬の管理、金銭の管理、家の管理などすべて
できませんし、月日も分からなくなりました。
 でも、何とかそれを忘れないように、自分で毎日カレンダーを消しながら
確認しています。でも、まだ新聞の一面記事を見て、自分なりの意見を
言ったり、テレビのニュース番組はかなり注意して見ているようです。
 ことに舌足らずで言語障害の私の話す言葉には、大変敏感で間髪入れずに
からかうのは、腹が立つほどですが、そんなときの頭の回転は抜群です。
 ☆五感をフル回転させるように
 私は夫を毎日視覚、味覚、聴覚、触覚、嗅覚のすべての感覚を刺激して
できるだけ今現在の状態を長続きさせたいと努力しています。
   視覚 自然の移ろい、笑顔。
   味覚 毎回の手作りの食事。
   触覚 スキンシップ、ペットとのふれあいなど。
   聴覚 音楽、落語など。
   嗅覚 天然のアロマオイルスプレーを絶えず使う。
 これからも、いつまでも夫が心穏やかで、元気で明るい「認知症優等生」
でいてくれるように、いろいろ工夫して、自分なりに努力するつもりですが
最近はもしかしたら、エネルギーの半分は、彼のために使っていると感じること
もあります。でもそれは、長年私を自由に羽ばたかしてくれた、包容力のあった
彼にそのお返しかも知れません。認知症のご家族を持ってご苦労なさっている
方に、私が毎日行っている方法がが、もしも少しでもお役に立てたら嬉しく思います。
 ※ 子供たちが大学生で幸せだったお正月です
  




夫は「認知症優等生」 前

2014年05月17日 | 認知症の夫と向き合って
☆ 主治医の先生からのお便り
 今や認知症は大きな社会問題で、このところテレビで特別番組や、昨夜も
同じような番組があり、最近マスコミでも大きく取り上げられています。
 高齢者の4人に一人、また20代でも発症するとも言われ、とても「対岸の
火事」のようではなく、誰ににも起こりえるごく身近な問題です。
 今月主婦の友社発売の、女性月刊誌「ゆうゆう」に「夫は認知症優等生」が
取材され、私達夫婦の大きな写真入りで掲載されました。
 これは私が心理カウンセラーとして、認知症のご家族を持つ方々のお役に
立てればとの願いも込めましたが、お陰様で知人や友人達には大変好評でした。
 私はその記事のコピーを精神科の主治医の先生にお送りしましたら、こんな
お返事をいただきました。

「お手紙ありがとうございました。勇気のあることをサラリと紹介されており
見事だと思いました。8カ条もなかなか良いですね。ことに7番はとても気に
入っています。男性陣はみんなグッとくるのではないでしょうか。
(ときどき使わせてください) 後略」
 精神科の認知症専門医の先生におほめ頂き、とても嬉しかったのですが
やはりまだ認知症に対する、世間一般の偏見もあると感じました。
 また先生は落語を習い始めたそうですが、これからは認知症医療に「笑い」が
一つのキーワードであるとも書いてありました。

「ゆうゆう」誌に掲載され紹介されてた8カ条とは・・・少々面映ゆいのですが
私の夫への接し方をご紹介しましょう。
「小池さんの心がけ 8カ条
 1 同じことを何度聞かれても、普通に答える。
 2 昔話でも、同じ話でも、できるだけ楽しそうに聞く。
 3 何があっても決して責めない。
 4 できることは頼むようにし、家事に参加するよう仕向ける。
 5 何か手伝ってくれたら必ず「有難う」「助かるわ」と言う。
 6 夫の意見にできるだけ同調し、逆らわないようにする。
 7「あなたがいないとダメなの。だから元気でいてね」と、感じた時には
   素直に言う。
 8 その日の出来事など話し、意見を聞いたり、同意を求めたりする。

 夫が認知症と診断されたとき、ハッキリ言って、大変ショックを受けました。
でも、私が師事していた世界的に有名な心理学者で、医学博士の先生もそう
なったプロセスを、私は二年間にわたり経験しましたので、「あれほど優れた
方でも避けられないのだから仕方がない」と思いました。
 それから何回か「認知症家族の会」に出席し、認知症の症状や、ご家族の大変
なご苦労を知りました。古い友人は「あなたのように刺激的な奥さんを持っていて
も、やっぱり認知症になるのね」とからかわれましたが、私はプロとして
「絶対に夫を凶暴にしてはいけない、扱い方では進行は穏やかになり、日常生活
に支障ない程度になるはず。努力が必要かも知れないけれど、私は運命だと
思って素直に受け止めよう」と、心に決めました。
 次回は雑誌ではお話しなかった「今現在の、夫に対する接し方」を
ご紹介いたしましょう。



認知症の夫を持つ心理カウンセラーとしての取材

2014年03月18日 | 認知症の夫と向き合って
 私の実体験から見ても、早や中期に入った認知症の夫は、こんな言葉はないが
「認知症優等生」だと思っている。短期記憶は全くできず、月日も分からないが
今現在は精神状態は安定しているし、家事も手伝ってくれるし、日常生活には
全くと言ってよいほど支障はない。友人達とも私とも普通の会話ができるのも
有難いと思っている。昨日も心理カウンセラーとしての、夫の対応法について
詳しく取材があった。今まで何度か世田谷区で開いている「認知症家族の会」で
聞いた認知症の人の状態を聞くと、それは本当にお気の毒で大変だった。

 
 「殺してやりたい」と思うと、涙ながらに語った男性、夫は妻が分からなくなり
「早く帰って欲しい」と言われた奥さん、母親に「娘が私を殺そうとしている」と
警察に訴え、朝から警察官が来たなど。壮絶な実体験をいろいろ聞くと、現在の夫は
本当に感謝できるほどだ。夫の写真も撮りたいとの要望もあり、カメラの前で二人で
収まったが、彼はとても嬉しそうだったし、とても如才なく明るい、取材の編集者
ライター、カメラマンの方々ともごく普通に会話できる。
 夫が参加してから、終始笑いが絶えず、私達のなれ初めなど、思いがけない方向に
話が発展したが、全員が「全然普通の人と変わらない」と言ってくれた。

 私は心理カウンセラーとして「こうすれば認知症の人の精神状態も安定し、進行も
抑えられるのではと思える、その自分なりに工夫した対応法」を、そのご苦労している
ご家族にお伝えしたいと思っている。
 その取材記事は、主婦の友社月刊雑誌「ゆうゆう」6月号の掲載されるが、発売は
5月、認知症のご家族を持つ方に、ぜひ読んでいただき、少しでもお役に立てれば
とても嬉しいが、また発売したらご紹介するつもりだ。

認知症の夫と向き合って 最終回

2014年03月01日 | 認知症の夫と向き合って
☆「認知症優等生?」の夫
 夫が都立松沢病院院認知症外来で治療を受け、認知症と診断されてから、早や
満三年過ぎた。緩やかではあるが、少しづつ確実にその症状は進行している。
 ホンの10分前ほどのことも覚えていないし、年、月、日についても全く分か
らない。先日診察をしていただいた、松沢病院認知症専門医新里先生は「今は
3年目になるので、認知症の中期に入っている」と診断された。
 でも比較的初期の段階で、初めから良い専門医に巡りあい、適切なアドバイスを
頂いたことも、きっと幸運なのだろう。
 お世話になっている新里先生は、運動、笑いなどが効果的とおっしゃったが
ときどき夫の好きなライブ、コンサート、落語などに行くとお話しすると、「最近
すごく大笑いしたことありますか?」と質問された。
 私達夫婦の日常会話の一例や、夫に対する態度などについてお話したところ
我が家は理想の環境だとおっしゃって下さった。
 
 
 

 私は心理カウンセラーとして、今まで勉強したことを元に、どうすれば夫の認知症
の進行を遅らせられるか、このように自分なりに工夫している。
1 絶えず褒め言葉、感謝の気持ち、愛情表現などを、ダイレクトに言葉に出す。
2 同じようなことを聞かれても、何度でも丁寧に答える。
3 同じ話をしても、初めて聞いたように、目を見て聞く。
4 忘れても決して責めず、不安そうなら「私がシッカリ覚えているから大丈夫
  私に何でもすぐに言ってね」と、安心させるような言葉をかける。
5 何か頼むときには、「あなたやってくれる?」と、必ず依願形式にする。
6 自分の意見は断定的ではなく「こうした方が良いと思うけど、あなたは
  どう思うかしら?」問いかけ形式にする。
7 好きな音楽のコンサートや、落語会などを時々聴いて、精神状態を高揚させる
  ようにしている。
8 夫の意見や考えに対して、できるだけ同調し逆らわないようにする。
 

 まるでお手本のようにカッコいいことをお話ししているが、滅多にないがいくら努力
しても、どうしようもない激情に駆られるときもある。
 そんな時は、大きな声で怒鳴ることもある、すると「ああ怖い!そんな怖い顔して
言わないでよ!能里子さんはいつもやさしいでしょ!」と、はぐらかされて、つい
笑ってしまう。私達夫婦は相性が良いのか、長い結婚生活でも怒鳴り合いをしたことなど
一度もないから、もしかしたら夫の精神状態は良いのかも知れない。
 「あんたを見ていると、寄席へ行くより面白いよ」と、のたまう夫だが、たとえ
腹が立っても大きな声を出すのは、一度だけにし、決してくり返さないように気をつけて
いる。でも、私が怒鳴っても、穏やかな夫は怒ることはないから助かるが、もしも
それを続けていたら大変なことなると、感じることはしばしばあるからだ。


 友人達との交流もスムーズだし、私との会話もあまり以前とは変わらないから、比較的
楽だが、これは依頼心の強い私自身の性格が、夫にとっては良い状況なのかもしれない。
 でも時には、どうしようもない淋しさに見舞われることもあるが、それは適度にコント
ロールするようにしている。
 私の煩雑な用が増えたことは確かだが、今現在は二人で仲良く暮らしているので
あまり先のことは考えず、今現在の幸せを感謝して過ごすつもりだ。
 今は記憶力、思考力、判断力はまるで衰えているが、夫の精神状態は穏やかで
ふつうに会話ができ、まだ家事も手伝ってくれるのはとても有難いと感謝している。
 心理カウンセラーとしての見解では、夫は「認知症優等生」と私は花丸をつけたい。
これから夫はどのように変化するか分からないが、3年間にわたり書いた
「認知症の夫と向き合って」は、これで最終回にするつもりだ。
 ご家族にもしもそんな方がいらしたら、参考になれば良いと思っている。
      

認知症の夫と向き合って

2014年01月14日 | 認知症の夫と向き合って
 ☆ 思わずカッとして
先日薬味のねぎを刻もうとして、野菜室を見たが、どうしても見つからない。
確かに買ったばかりなのにと、夫に聞いたら「ここに入っているよ」と出したのは
冷凍でコチンコチンになったねぎだった。
 思わずカーッとなった。「もう何度言っても分からないのだから」と私はねぎを
流し台に叩きつけた。すると真っ白で太いねぎはまっ二つに折れたので、私は二本の
ねぎをばんばんぶつけたら、少しは気持ちが晴れたが、夫は「そんなことすると
流しがこわれるよ」ニヤニヤしている。

今は野菜がとても高い、勿体なくて捨てられない、まして私の最も大好きな長ねぎ
だ。急いでお湯を沸かし、叩きつけて鍋に入る位に短くなったねぎと、同じように
コチンコチン小松菜を茹でながら、昨日のことを思い出した。
一旦買い物から帰り、もう一度足りないものを買いに行くため、沢山の買い物を
夫に「これ冷蔵庫に入れておいてね、お願い」と言って家を出たのだ。
 冷蔵庫は買い換えてから一年半経つが、以前は野菜室が一番下で、真ん中が
冷凍室だったので、それが以前の場所が彼の頭にインプットされているようで
実は何度も野菜を冷凍にしたのだが、それをうっかり忘れて、私が出ていったので
それを忘れた私が悪かったのかもしれないと少々反省した。

あんなに腹が立ったことは最近あまりないが、でもしばらくして冷静になって
から考えた。夫は認知症と診断され治療を受けてから、この三月で満三年になる。
金銭管理もできず、日にちの感覚がなく、短期記憶はほとんどできず、判断力も
衰えているのは明らかだが、今現在は日常生活にはほとんど不自由はない。
ただ、毎日治療のための薬を飲ませるのが、とても大変だが、やはり夫を介護して
いる友人の電話では、最近おむつをしているが、それが漏れて大変だと聞いた。  
それに比べたら、夫は穏やかでまだ家事も手伝ってくれるし、友人達との交流関係
も大変良い。昔のことはシッカリ覚えているし、誰にでもキチンと対応できるので
他人には彼が認知症とは気がつかない人が多いようだ。
 ☆ 家に帰ってみると
 でも今日はお昼の食事を準備し、早い夕食にもし間に合わなければと、夕食も
ほとんど用意して出かけたが、途中で何度電話をしても出なかった。
7時ごろ家に帰ったら、お昼は食べてキチンと片づけてあったが、夕食はすました
様子がない。寝ていたので「夕飯は食べたの?」と聞いたら、「食べていない、お腹は
空いている」と言った。すぐに準備し起こしたが、何時に寝たのか聞いても分か
らないし、ペットにえさをやったのかも覚えていない。

 何を聞いても「覚えていない」と一点張りで、会話ができず、ずっと一人で鼻歌
を歌っている。私が見ている番組も、気に入らないと突然替える、とにかくあまり
機嫌が良くないのは確かだ。彼の精神衛生には、私が何時も家にいた方が断然良い
ことを改めて実感した。これからはだんだん長時間家を空けられなくなるかも知れ
ない、すると「現在の私の生活様式は変えざるをえないのだろうか?」と、初めて
暗然とした気分になった。でももしかしたら、三年も経過したのに、何とか自分の
生活パターンを維持できただけでも幸せなのかもしれないと、自分をなだめた。

認知症の夫と向き合って

2013年10月10日 | 認知症の夫と向き合って
☆明るく穏やかな夫
 最近料理を残すようになった、ことに野菜類をよく残すのが最も困っている。
「野菜は体にとても大切なものだから、全部食べてね」と、しばしば言っても
残すことがある。でも、今日のポテトサラダは全部食べたが、ブロッコリーは半分
残した。野菜中心の我が家の食卓だが、できるだけ彼の好みのものをつくるよう
にしているが、ピーマンは好きではないが、以前は食べてくれたが、最近はほとん
残すのは、やはり嫌なものはガマン出来ないのだろう。
 大根を煮たのは大好きなので、前の晩に煮た方が美味しいから、今お鍋の中で
大根がコトコトと音を立てていて、何だかとても幸せを感じる。
 

今朝も五時頃起きて支度している夫に「毎日朝早く起きてウオーキングに
行って偉いわね」と声をかけたら「だってさ、夜行ったら困るでしょ、朝だか
らいいんでしょ」と返事をした。私は可笑しくなって笑ったら「朝からそんなに
嬉しいの、ホントあんたは幸せだね」ときた。
 彼は何時も私をからかう。昨日も「どうしてそうなに頭がまわるの?」「頭を回
しているんじゃないの(頭をまわしながら)そうしたら目が回るでしょ、つまり
頭の中を使ってる訳よ」、一事が万事この調子なので、我が夫婦の会話は笑いが
絶えない。言語障害の私に、実に敏感に反応するのは、良く考えたら、彼が認知症に
なってからだから、彼は彼なりに頭を使っていると思うと、カワユクいじらしい。
 

社会問題など、テレビを見て一人で怒っていることは時々あるが、私には全然
怒ったことはまったくなく、そのため私達は喧嘩をしたことがない。
 家事も頼んだことは手伝ってくれるが、何もしないでほとんどテレビを見ながら
ソフアーに横になって、私の座る場所がないのが気になる程度だ。
これは昔からだが、口煩いことは一切言わないし、外出しても「どこに行くの?」
とも聞かないが、必ず私は(00へ行き、00時ごろ帰る予定と伝えるが)と伝えて
から外出するようにしている。一切干渉しないので、本当に扱いやすい。


唯定期的に通院している、医院や、治療院、約束などの管理はほとんどできず
日時の感覚もあまりないようだ。でも今現在は、ほとんど問題なく過ごせているので
このままの状態が続いて欲しいといつも考えている。
今まで幸せだった分、世話をするのも悪くないと思うこの頃だが、昨日はある商品の
振込用紙を捨ててしまい、二人でゴミ箱の中から探し出したが、本当は物凄くカッカッ
した。でも、一所懸命一緒に探してくれたので我慢したが、こんなことは度々ある。
私は余程でない限り、怒ったりはしないようにしているが、治療のための薬を飲まな
い時は、「あなたの命の元でしょ!」と、怒ることにしているが、それは当人も良く
分かっているようだ。いずれにしても、今現在は大変扱いやすいので、とても助かって
いる。

認知症の夫と向き合って

2013年09月23日 | 認知症の夫と向き合って
☆夫の穏やかな精神状態をキープするために
 最近は今のことでもすぐに忘れる、そんなときは絶対に責めずに「何でも
私に言ってね。シッカリした妻がついているのだから」と言うと、彼は私をジッと
見つめてニヤニヤする。臆病で弱虫で、人一倍力がなく、いつもキャーキャー悲鳴
を上げていて、何でも「あなたやって!」と、依存心が強い私を、長年熟知して
いるからだ。人に差し上げるつもりのプレゼントを開けられた時には、本当に
腹が立ったが、グッと我慢した。
 また片づけてくれる食器棚の瀬戸物は、その度に場所を変えるので、どこに
あるか分からないし、急いでいる時はカッカする。
買ってきたものをしまわれて、使う時に見つからないこともよくある。
 そんな時には、一所懸命自分の気持ちを抑えるが、ときにはどうしようもなく
激しいしい感情を持て余すときもある。
 でもこれほど忘れたら、私ならどうなるだろうと思うと、夫が気の毒で
ならない。

 夫にあたるより何かアクションを起こした方がよいので、スタジオへ行って
メチャメチャ踊り狂ったり、音楽を聴いたり、ピアノを叩いたりして発散する
ことにしている。でも、夫は黙っているが、私の感情を理解しているのだと
感じる。以前「高齢者の認知症の会」に参加して、介護をしている方たちの、
色々な実体験を聞くと、夫はふつうの人とあまり変わりないと思うし、今現在は
その程度の状態なので、感謝できるかもしれないと、自分をなだめる。
 ご家族に認知症の方がいて、介護をしている方のご参考になるかも知れないので
私が日頃心がけていることをご紹介しようと思う。


1 同じ事を何度も聞かれても、ふつうに答える。
2 昔話でも、同じ話でも、出来るだけ楽しそうに聴く。
3 何があっても決して責めない。
4 できることは、(蛍光灯の交換、固いものを切る、ゴミ出し、洗濯物を干す
  入れる、食器洗い、1点だけの買い物)頼むようし、共同生活者として
  の意識を持たせ、家事に参加するよう仕向ける。
5 何か手伝ってくれたら、必ず「有難う」とか、「助かるわ」と言う。
6 夫の意見に出来るだけ同調したり、逆らわないようにしたりする。
7「あなたがいないとダメなの、だから元気でいてね」と、感じた時には、
  素直に表現する。
8 その日の出来事など話すようにし、「あなたはどう思う」とか、意見を
  聞いたり、同意を求めたりする。 


 最も注意しているのは、「夫の人格」を認め、傷つけないようにすることだが
これは心理カウンセラーの私だからできるのかも知れないが、実は自分でも大変
努力を要するのは明々白々の事実だ。
 しかし毎日のことだから、実際に介護している人は、時にはどうすることも出来
ない感情を、つい当人にあたってしまうこともあることだろう。
でも、それは受け手にとっては、大変なストレスで、怒りや、凶暴な動作の原因
になるのだと思う。なぜなら、分からないようでも、自分が傷つけられたことは
ハッキリ認識しているからだ。それを認知症の説明会で知り、本当は当人が一番
辛いはずだから、滅多に怒らないようにはしている。


 過去に夫に対する確執も、恨みもないので、そんな意味では私は大変幸せかも
しれない。辛い時には、過去の幸せだったことを思い出すのも、私にはとても
役立つようだ。でも、常用薬、金銭管理、スケジュールの管理、我が家の管理以外
は、ほとんど自分でできるし、宅急便なども受け取ってくれるので、私は外出でき
るから大変助かっているが、これからどのように変化するか分からない。
 でも、あまり先のことに不安を抱かず、今の幸せを感謝するように心がけている
けれど、これはタテマエでなくホンネの私の気持ちだ。
 と書きながら、健気にガンバっている自分が、たまらなく愛しくなった。
いずれにしても、肩の力を抜いて、あまり無理しないで、時には自分にご褒美を
上げたり、ねぎらったり、誰かに聞いてもらったりなどして、できるだけストレス
を溜めないようにすることが、長丁場を乗り切るコツだと私は思っている。
       

小池能里子的造語?「愛夫家宣言」

2013年09月09日 | 認知症の夫と向き合って

 今日の読売新聞の「寿美花代さんのケアノート」を読んだが、ご主人の
高島忠夫さんはうつ病を発病してから15年経ち、随分長い期間で大変なご
苦労だと思った。一度良くなって仕事に復帰したようだが、また逆戻りして以来
自宅で治療なさっているようで、「81歳で現役の女優」の寿美さんが、仕事をし
ながら高島さんを介護しているのは、本当にすごいと感心してしまった。
 決して嘆かず、前向きに捉えるお姿には、本当に感動し、比較にはならない
けれど、私ももっと頑張らなくてはいけないと思った。

 夫がハッキリ認知症と診断され、治療を受けてから2年半経つが、緩やかに
進行しているのは確かで、狭い家の中で、自分の着替えがどこにあるのか、薬は
どこにあるのかも分からない。さらに今月は何月か分からないし、時間の感覚は
あまりないようだ。でも、有難いことに毎朝早朝に起きて、長年の習慣のペット
を連れてウオーキングに行き、その仲間との交流など、彼にとっては色々な意味
で大変刺激があり、認知症の進行を穏やかにしているようだ。
 私達夫婦は相性が良いのか、ほとんど喧嘩をしたことがない、また価値感や
考え方もかなり一致しているし、趣味が合うし、体温度感覚も類似している。
 夫は商人でいつも家にいたため、どんなことでもやってくれたし、私にはやさし
いと言うより、子供たちが呆れるほど大変甘かったので、すべてを頼りきって長年
生活をしてきた。ところが、最近では「記憶がない」「分からない」の連発で、金銭
管理その他、もろもろのことをすべて私が関わり、立ち会わなくてはならない。
 先日もガス湯沸かし器を変えたが、「説明を聞いて」と夫に言われて一緒に聞いた。

 今夜はお風呂の前のマットがビショビショが濡れていて驚き、調べたが水が
漏れるような場所ではないので、とても気になった。
 夫はすでに寝ているし、起こすのも気の毒だし、多分分からないだろう。
一度ベッドに入ったが、それが気になって眠れなくなったが、朝一で水道屋さんか
ガス屋さんに見て貰わなければと思っている。
 我が家は小さなビルで、地下と一階を飲食店に貸してあるが、その地下でガス
漏れがあり、肝を冷やしたが、夫はボーっとしてあまり感じていないようだ。
 人一倍依頼心が強い私が、その精神的支えが無くなったのが、大変辛く淋しい。
記憶、思考、理解力は低下しているが、今現在は会話も普通にでき、私をからかう
頭の回転は、まだ素晴らしくよく呆れるほどだが、いつも二人で笑って結構楽しく
生活している。長年友人達に「ちょっと神様」とか、「国宝的な愛妻家」と言われ
包容力も理解力もある夫を、これから私は「愛夫家?」になって、彼を支えなければ
ならないと、改めて覚悟したが…でも、今夜はとても眠れそうにない。

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