【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

城山三郎『そうか、もう君はいないのか』新潮社、2008年

2012-11-01 00:36:21 | エッセイ/手記/日記/手紙/対談

           

   経済小説の草分けだった城山三郎さんが、妻との生前の想い出、夫婦生活を語った書。


   著者は大学を卒業後、愛知学芸大学で教鞭をとりながら、小説も書くという二足の草鞋の時期を経て、筆一本で身をたてる小説家となった。「総会屋錦城」で直木賞受賞。文学の世界でのその後の活躍は、よく知られている。

   巻末に、娘(次女)でっあった井上紀子さんの「父が遺してくれたもの-最後の「黄金の日々」によると(この「あとがき」のような文章がよい)、この本の原稿はバラバラに残されていた原稿を編集者がまとめたもの、とのこと。城山さんが妻になった容子さんとの名古屋の図書館での偶然の出会いから、彼女が癌でなくなるまでのことが、思いつくままに語られている。容子さんは2000年2月24日に亡くなった。著者は書く、「4歳年上の夫としては、まさか容子が先に逝くなどとは、思いもしなかった。/もちろん、容子の死を受け入れるしかない、とは思うものの、彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる。容子がいなくなってしまった状態に、私はうまく慣れることができない。ふと、容子に話しかけようとして、われに返り、『そうか、もう君はいないのか』と、なおも容子に話かけようとする」(p.134)。

   この夫婦も(先日読んだ「いまも、君を想う」の川本三郎夫妻同様)仲がよい。上記、次女の紀子さんの想い出によると、妻の容子さんが亡くなった後の城山さんの生活は痛々しく同情を禁じ得ないが、共感ももてる。いい人生だったな、と。

   城山さんの好きだった言葉は経済学者のパレートの次のフレーズだったいう、「静かに行くものは健やかに行く、健やかに行くものは遠くまで行く」。


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