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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

税と新自由主義③ 資本の支配 打ち破る力

2021-11-18 07:13:33 | 経済・産業・中小企業対策など
税と新自由主義③ 資本の支配 打ち破る力
政治経済研究所理事 合田寛さん

―グローバル化と新自由主義にどう対抗すればよいでしょうか。
グローバル資本主義の下で資本は簡単に国境を越えます。より低い税、より安い人件費を求めて移動し、諸国民に「底辺への競争」を強います。多国籍企業やその支配的株主に応分の負担を求める課題は困難に直面しています。しかし巨大な力とたたかわずにあきらめてはなりません。

世界的な連帯を
新自由主義の背後にグローバルな競争を利用した資本の支配があるならば、それを打ち破る力はグローバルな連帯の中から生まれます。税の世界で始まった国際協力の取り組みは、新自由主義と決別する道へ踏み出した大きな一歩です。
―どんな変化が見られますか。
税の国際協力は2012年に経済協力開発機構(OECD)の主導で始まりました。15年に最終報告書をとりまとめ、多国籍企業に国別報告書の提出を義務付けました。
国別報告書とは、事業活動を行っている国ごとの収入金額や税引き前利益、納付税額、利益剰余金、従業員数などの報告を求めるものです。多国籍企業と富裕者の隠された富を明るみに出し、失われた税収を取り戻すために活用できます。
国別報告書は課税当局だけが保有し、一般には非公開です。しかし研究者や市民社会の強い要求を受け、OECDは20年7月に企業名を匿名にして集計値を公開しました。国際NGOのタックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)はこれに基づいて税逃れの実態を調べました。
TJNの分析によると、多国籍企業と富裕者の税逃れによる税収損失は毎年4270億ドル(約49兆円)。減税競争などの波及効果を含めると税収損失は9800億ドル(約112兆円)にのぼります。



米国ニューヨーク市にあるグーグルの店舗の入り口に取り付けられた同社のロゴ(ロイター)

2本柱の新規則
―新しい国際課税ルールも決まりました。
16年以降、OECDの主導で約140カ国が参加する「包摂的枠組み」がつくられました。巨大IT(情報技術)企業などに課税するための新しいルールを検討してきました。今年10月に最終合意に達し、2本柱の新ルールを決めました。
一つは、多国籍企業の世界利益を合算し、売上高に基づいて各国に課税権を再配分するルール。ユニタリー(合算)課税と呼ばれます。配分される利益は総利益のうちのわずかな部分だとはいえ、現行ルールを打ち破る斬新な方式です。
もう一つは、法人税に世界共通の最低税率を設定するルール。半世紀続いた減税竸争に歯止めをかける画期的な性格を持ちます。
ただし最低税率が15%という低水準に設定されるなど、内容は不十分です。抜本的な改革に向けた取り組みをさらに進めなければなりません。途上国の意見が十分反映されなかったとはいえ、約140カ国が参加する枠組みの下で税の国際協力が進められたことは今後も重要な意味を持つでしよう。
―米国でも大きな変化が起こりました。
バイデン政権は「米国雇用計画」「米国家族計画」という二つの中長期プランの財源を、大企業への法人税増税と富裕者への所得税増税でまかなうという税制改革を打ち出しました。最低法人税率の設定に向けた国際交渉にも積極的に関与し、「底辺への競争」に終止符を打つ考えを示しました。法人税減税競争の先頭を走っていた米国が方向転換したのは歓迎すべき変化です。
「底辺への競争」に歯止めがかかり、国際的な税の協力体制が強められれば、各国は他国の動向にとらわれず、自国の法人税や資本所得課税を強化することができます。世界的な公正税制の実現へ大きなチャンスが訪れているといえます。
―世界の変化の背景には市民社会の行動がありました。
国際交渉で採用された画期的なルールは、TJNをはじめとする市民運動や有識者が提起し、導入を求めてきたものです。国別報告書も合算課税も最低法人税率も、すべてそうです。市民社会が監視と行動をいっそう強めれば、新自由主義的な税制改革を逆転させ、労働課税から資本課税へのシフトを進めることができるでしょう。
卿(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年11月12日付掲載


一つは、多国籍企業の世界利益を合算し、売上高に基づいて各国に課税権を再配分するルール。ユニタリー(合算)課税。配分される利益は総利益のうちのわずかな部分だとはいえ、現行ルールを打ち破る斬新な方式。
もう一つは、法人税に世界共通の最低税率を設定するルール。半世紀続いた減税竸争に歯止めをかける画期的な性格。
バイデン政権は「米国雇用計画」「米国家族計画」という二つの中長期プランの財源を、大企業への法人税増税と富裕者への所得税増税でまかなうという税制改革。
大企業や富裕層に応分の負担。税金は負担能力に応じて徴収を…。

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