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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

危機の経済 識者は語る① 債務と中銀信用が膨張

2020-08-01 06:12:37 | 経済・産業・中小企業対策など
危機の経済 識者は語る① 債務と中銀信用が膨張
静岡大学教授 鳥畑与一さん

株主重視の資本主義のあり方は、「不平等の危機」を深刻化させました。富はますます一握りの大企業と富裕層に集中し、貧困と格差の拡大は需要の喪失をもたらしました。

国民を債務漬け
一部の者に集中した富は、租税回避地を経由して投資ファンド等に流れ込み、株主重視経営の名のもと労働分配率を下げ、株主への還元を拡大しました。
貧富の格差による需要の喪失は、過剰生産恐慌をもたらしてきましたが、それを覆い隠したのが財政赤字による需要喚起策や消費者信用等による国民の債務漬けです。この公的、私的な債務拡大を支えたのが中央銀行の信用膨張でした。
2008年のリーマン・ショックを引き起こしたサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)危機は、国民を債務漬けにしたことの破綻でもありました。主要先進国では、この危機を世界的な財政出動と大規模な量的金融緩和で乗り切りました。これらの国では、中央銀行の信用膨張で支えられた財政支出の拡大と資本市場の活性化が常態化しました。しかし、富の集中と偏在を生み出す経済構造を放置したもとでは、財政政策や量的金融緩和策は、いわば穴が開いたバケツに際限なく水を注ぎこむようなものです。いたずらに中央銀行信用と公的債務が膨張するだけでした。



東京都中央区の日銀本店

財政赤字と公的債務の増大 対GDP比(%)
 財政収支総債務
19年20年19年20年
世界-3.9-13.982.8101.5
 G20-4.5-15.490.4111.2
 先進国-3.3-16.6105.2131.2
  米国-6.3-23.8108.7141.4
  欧州-0.6-11.784.1105.1
  日本-3.3-14.7238.0268.0
 新興市場国-4.9-10.652.463.1
資料:OECD Economic Outlook
注:20年は推計値


需要喪失が襲う
そこに襲い掛かったのが、コロナ危機による「需要喪失」です。
コロナ危機の特徴は、経済活動の突然の停止による収益・所得喪失で中小零細企業等の存続や個人の生活・生命が直接脅かされた点にあります。この対応には、迅速な財政支出による失われた収益と所得の補填(ほてん)が優先されました。また債務支払いに迫られた企業の資金調達や株価維持を支援する金融市場への流動性供給が行われました。
1929年の世界大恐慌に匹敵する国内総生産(GDP)減少(先進国で7%の推計)に比例した財政支援が行われましたが、それを支えたのが中央銀行信用の拡大でした。
国際通貨基金(IMF)等によれば、コロナ危機対応での財政支出額は保証や公的融資を含めて11兆ドル(約1200兆円)とされます。同時期の先進国中央銀行の資産拡大(信用供給)は6兆ドル、GDP比15%とされ、財政支出と中央銀行信用の拡大がほぼ並行して進んでいます。
日本の場合、2次にわたる補正予算は全額新規国債発行でまかなわれ、当初予算と合わせた国債発行額は90兆円と一般会計予算160兆円の56%を占めています。財政投融資も含めれば予算223兆円中144兆円、65%を国債発行が占め、公債残高はGDP比268%と予想されています。現在でも約516兆円の国債を保有する日銀への財政依存がいっそう進むことになります。
欧米でも、中央銀行の国債購入による財政赤字拡大が進んだ結果、赤字財政支出を通じた中央銀行信用の貨幣化(マネタイゼーション)による失われた需要の穴埋めがますます膨張しています。
コロナの世界的大流行による経済的危機に対応した「必要」な財政支出と中央銀行信用の膨張が、持続可能な世界経済をもたらすのか否かが、いま間われています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年7月29日付掲載


リーマンショック以来、もともと進んでいた公的債務の増大。
コロナ危機による「需要喪失」により、財政支援が必要に。
日本の場合も2次にわたる補正予算は全額新規国債発行(赤字国債)で。
しかし、このまま膨張させていいのかが問われます。

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