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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

経団連 「経労委報告」を読む⑤ 公正取引の実現こそ

2024-02-17 07:12:16 | 働く権利・賃金・雇用問題について
経団連 「経労委報告」を読む⑤ 公正取引の実現こそ
中央大学教授 松丸和夫さん

岸田首相は1月4日の記者会見で、物価の上昇を上回る賃上げの実現に向け、中小企業の法人税の減税措置などの方針を明らかにしました。
6~7割の中小企業が赤字と言われているのに、この措置ではあまり効果がありません。社会保険料の事業主負担の軽減こそ即効性があります。2024年度の政府予算案でも、中小企業向けの「業務改善助成金」は前年度比で減少し、ハードルが高く利用実績は低いままです。

発注企業の責任
バブル経済崩壊の1991年に、経団連は「企業行動憲章―持続可能な社会の実現のために」(2017年改定)を制定しました。その前文は「企業は、公正かつ自由な競争の下、社会に有用な付加価値および雇用の創出と自律的で責任ある行動を通じて、持続可能な社会の実現を牽引(けんいん)する役割を担う」と書いています。
また、その行動原則の2番目には「公正かつ自由な競争ならびに適正な取引、責任ある調達を行う」としています。単価の一方的な切り下げや、下請け企業「振興基準」(22年改定)に定められる違法行為が、サプライチェーン(企業の取引連鎖)のどこかの結節点で発生した場合、今後は発注元企業の連帯責任が間われる法改正が必要となるでしょう。
すでに公取や政府機関の行政指導はその方向にかじを切っています。経団連の言う「責任ある調達」は、発注企業が取引先企業の労務費の「価格転嫁」を認める方法によってしか実現しません。
持続的賃上げのためには、大企業と中小企業の取引における公正取引の実現が必要です。そのためには、大企業も中小企業も消費者も、それぞれが経営や生活を持続可能なものとなる社会的コンセンサス(合意)を国民的に形成することが重要な課題です。

内部留保放流を
サプライチェーンは、生産と流通と所得分配のバランスがなければ、存続できません。地域循環型経済への転換が叫ばれて久しいですが、発注者の大企業(上流)から中小企業・労働者(下流)に至る資金の流れが公正におこなわれなければ、経済は「循環」しません。
過去最高水準を年々更新する大企業の内部留保の、たとえ一部でも取引先企業の単価や下請け企業労働者の賃上げの原資として「放流」しなければ、大企業の経営も中長期的に成り立ちません。「経労委報告」は「内部留保の意義・あり方についてステークホルダー(利害関係者)との間でいっそう議論を深め、理解を求めていく」と拘泥していますが、こうした姿勢への批判はかつてなく高まっています。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月16日付掲載


持続的賃上げのためには、大企業と中小企業の取引における公正取引の実現が必要。そのためには、大企業も中小企業も消費者も、それぞれが経営や生活を持続可能なものとなる社会的コンセンサス(合意)を国民的に形成することが重要な課題。
発注者の大企業(上流)から中小企業・労働者(下流)に至る資金の流れが公正におこなわれなければ、経済は「循環」しません。
過去最高水準を年々更新する大企業の内部留保の、たとえ一部でも取引先企業の単価や下請け企業労働者の賃上げの原資として「放流」しなければ、大企業の経営も中長期的に成り立ちません。

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