COP25 パリ協定実施へ課題と展望① 排出ゼロ 意欲問われる
スペインの首都マドリードで開かれていた国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)は15日、2週間の議論を経て閉幕しました。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の本格的始動を前にした最後のCOP25を振り返ります。(マドリードでCOP25取材団)
COP25は、「パリ協定」運用ルールで未解決の温室効果ガス削減量の国際取引(第6条)=「市場メカニズム」をめぐり合意に至らず、来年のCOP26(英グラスゴー、11月)に持ち越されました。同協定の目標である地球の温度上昇を産業革命前と比べ1・5度に抑制するための国別目標(NDC)引き上げを促す文書が採択されました。
機運つくれず
この決定文書は、パリ協定目標と各国のNDCには「重大なギャップがある」として、「可能な最高の野心を反映させる」などの表現でさらに進んだ目標をよびかけています。
日本の環境NGO「地球環境市民会議(CASA)」は「2050年排出実質ゼロと各国の削減目標を引き上げる機運を作れなかったことは、COP25はその任務を果たせなかった」(16日)と厳しい評価を下しました。
NDCをめぐっては、パリ協定自体が2020年の再提示(5年ごと)を規定。今後、意欲的な削減目標を提示できるかどうか各国の本気度が問われます。
一方、COP25を通じて、議長国チリが設立した「気候野心連合」に121カ国が賛同し、NDC引き上げや2050年二酸化炭素排出ゼロへの野心を表明するなど前向きな動きもみられます。
COP25閉幕セッション=15日、マドリード(遠藤誠二撮影)
合意せず閉幕
他国への排出削減で貢献した分を自国の削減分に算入するなどの「市場メカニズム」をめぐり、ブラジルやインド、中国など「排出大国」が以前の排出権をパリ協定にも算入できるよう要求。これに反対する欧州や島しょ国との対立が解消しないまま「合意」せずで閉幕しました。
パリ協定における最後の運用ルールの確定が実現されず、「すべての努力でも合意に至ることは不可能だった。すべての諸国は地球に債務を負っている」(シュミット議長)など、多くの代表、組織が遺憾の意を表明しました。しかし、6条自体が、来年のパリ協定始動にむけ、大きな影響を及ぼすことはありません。
COP25に参加した「気候ネットワーク」の浅岡美恵代表は「(6条は)パリ協定の実質的な抜け穴となる恐れもあったことから、先送りをし、よりよい合意を目指すほうが賢明だったという面も否定はできない」(15日の発表)と指摘します。
本番これから
2日間にわたる徹夜の延長を経て開かれた15日の閉幕セッション。最後に演説した市民社会代表らは口をそろえて「われわれにとって会議は失敗だ」と主張。疲労困ぱいのシュミット議長の表情はそのたびに曇りました。
国際環境NGO「350.or9」のブーヴィ事務局長は会議終了を受け声明を発表しました。「今年の気候交渉は閉幕だが、市民運動が終わる訳ではない。本番はまだこれからです」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年12月18日付掲載
「2050年排出実質ゼロと各国の削減目標を引き上げる機運を作れなかった」ことは問題ですが、議長国チリが設立した「気候野心連合」に121カ国が賛同したことに希望があります。
スペインの首都マドリードで開かれていた国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)は15日、2週間の議論を経て閉幕しました。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の本格的始動を前にした最後のCOP25を振り返ります。(マドリードでCOP25取材団)
COP25は、「パリ協定」運用ルールで未解決の温室効果ガス削減量の国際取引(第6条)=「市場メカニズム」をめぐり合意に至らず、来年のCOP26(英グラスゴー、11月)に持ち越されました。同協定の目標である地球の温度上昇を産業革命前と比べ1・5度に抑制するための国別目標(NDC)引き上げを促す文書が採択されました。
機運つくれず
この決定文書は、パリ協定目標と各国のNDCには「重大なギャップがある」として、「可能な最高の野心を反映させる」などの表現でさらに進んだ目標をよびかけています。
日本の環境NGO「地球環境市民会議(CASA)」は「2050年排出実質ゼロと各国の削減目標を引き上げる機運を作れなかったことは、COP25はその任務を果たせなかった」(16日)と厳しい評価を下しました。
NDCをめぐっては、パリ協定自体が2020年の再提示(5年ごと)を規定。今後、意欲的な削減目標を提示できるかどうか各国の本気度が問われます。
一方、COP25を通じて、議長国チリが設立した「気候野心連合」に121カ国が賛同し、NDC引き上げや2050年二酸化炭素排出ゼロへの野心を表明するなど前向きな動きもみられます。
COP25閉幕セッション=15日、マドリード(遠藤誠二撮影)
合意せず閉幕
他国への排出削減で貢献した分を自国の削減分に算入するなどの「市場メカニズム」をめぐり、ブラジルやインド、中国など「排出大国」が以前の排出権をパリ協定にも算入できるよう要求。これに反対する欧州や島しょ国との対立が解消しないまま「合意」せずで閉幕しました。
パリ協定における最後の運用ルールの確定が実現されず、「すべての努力でも合意に至ることは不可能だった。すべての諸国は地球に債務を負っている」(シュミット議長)など、多くの代表、組織が遺憾の意を表明しました。しかし、6条自体が、来年のパリ協定始動にむけ、大きな影響を及ぼすことはありません。
COP25に参加した「気候ネットワーク」の浅岡美恵代表は「(6条は)パリ協定の実質的な抜け穴となる恐れもあったことから、先送りをし、よりよい合意を目指すほうが賢明だったという面も否定はできない」(15日の発表)と指摘します。
本番これから
2日間にわたる徹夜の延長を経て開かれた15日の閉幕セッション。最後に演説した市民社会代表らは口をそろえて「われわれにとって会議は失敗だ」と主張。疲労困ぱいのシュミット議長の表情はそのたびに曇りました。
国際環境NGO「350.or9」のブーヴィ事務局長は会議終了を受け声明を発表しました。「今年の気候交渉は閉幕だが、市民運動が終わる訳ではない。本番はまだこれからです」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年12月18日付掲載
「2050年排出実質ゼロと各国の削減目標を引き上げる機運を作れなかった」ことは問題ですが、議長国チリが設立した「気候野心連合」に121カ国が賛同したことに希望があります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます