きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 超円高③ 多国籍企業化の果てに

2012-12-22 16:17:59 | 経済・産業・中小企業対策など
検証 超円高③ 多国籍企業化の果てに

大企業にとって「超円高」はもうけを増やすチャンスです。「超円高」を利用して海外に事業展開を進め、多国籍企業としての性格をいっそう強めています。円が他国の通貨に対して高くなれば、日本企業から見た海外企業の資産価値は相対的に下がることになり、企業合併・買収(M&A)が容易になります。
10月にはソフトバンクによる米携帯電話大手、スプリント・ネクステルの買収を発表し、話題を呼びました。1兆5709億円の巨額買収です。これも「超円高」の効果です。
M&A助言会社、レコフの集計によると、2011年の日本の企業買収額は、調査を開始した1985年以降で3番目の高水準でした。日本の大企業が円高を利用して海外企業を傘下に収めていることが示されました。アジア企業へのM&Aは198件と、これまでの最高を更新しました。



米携帯大手スプリント・ネクステルの買収について記者会見する孫正義ソフトバンク社長=10月31日、東京都内(ロイター)

■M&A支援
日本政府は「円高対策」と称して大企業のM&Aを支援しています。海外でM&Aを行う大企業に国の資金からドル資金を融通する「円高対応緊急ファシリティ」という事業です。外国為替資金特別会計から1000億ドル(約8兆円)を使って、財務省所管の国際協力銀行(JBIC)がドル資金を低利で融資します。
ソニーによる携帯電話会社買収に656億円相当、東芝による電力メーター等製造・販売会社の買収に480億円相当など、すでに内部留保をため込んでいる大企業に至れり尽くせりです。
M&Aを仕掛ける日本企業はドル資金を貸してもらえるので、手持ちの円を売ってドルを買う必要はなくなります。円高対策としてはまったく逆行した政策です。政府は当初、今年夏に終了する予定だったこの事業を年末まで延長しました。




国際協力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」2011年度から作成

■国内空洞化
その上、大企業は「超円高」を口実に生産拠点の海外移転を進めています。国際協力銀行の調査によると、製造業の海外生産比率は、リーマン・ショックの年、08年度の30・8%から11年度には34・2%と急激に伸びました。
国内では首切り、リストラを強行し、犠牲を労働者、国民に転嫁。国内産業の「空洞化」を進めて雇用と地域経済を破壊してきました。政府の11年度「ものづくり白書」は「昨今の円高の継続は、さらなる国内事業環境の悪化を招き、企業の国内設備投資の縮小、海外への進出を一層加速させる可能性がある」と危機感を示しました。
トヨタ自動車は2011年度有価証券報告書で「生産施設が世界中に所在しているため、取引リスクは大幅に軽減されている」と述べています。同社の海外販売台数のうち11年には71%が海外生産です。生産を現地化することで円高による為替差損を避けることができます。海外に多くの生産拠点を置く大企業にしかできないことです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年12月20日付掲載



企業の生産を海外に展開、グローバル化は当然の方向です。大企業は円高による為替差損を避けることができますが、中小企業にはなかなか困難。
また、国内生産、内需を減らすことにより、ますます円高を加速することになります。
コメント
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