【ナデシコ科、原産地は地中海沿岸~中央アジア】
ブーケやフラワーアレンジで主役の花々を優しく包み込む清楚なカスミソウ。ナデシコ科カスミソウ属(ジプソフィラ属)の植物で、大別すると地中海沿岸から中央アジアにかけ広く分布する多年性のものと、小アジア~コーカサス地方原産の1年性のものがある。草丈も10~30cmほどの矮性種から、1mを超える高性種まで様々。欧米や日本などで主に高性種から多くの園芸品種が作出され、花色も多彩になってきた。花姿から「ムレナデシコ(群撫子)」や「ハナイト(花糸)ナデシコ」「コゴメ(小米)ナデシコ」などの別名を持つ。
学名のジプソフィラ(Gypsophila)は「石灰」と「好む」を意味するギリシャ語の合成語で、石灰質のアルカリ性の土壌を好むものが多いことに由来する。繊細な姿から英名には「ベイビーズ・ブレス(赤ちゃんの吐息)」という愛称も。多年性を代表するのが「宿根カスミソウ」として流通しているパニクラータ種。元々は一重の5弁花だが、米国で約100年前に八重咲き品種‘ブリストル・フェアリー’が作られ、切り花用として今も人気を集めている。一重咲きの代表種エレガンスは花茎がやや太く花も大きめなのが特徴。矮性種ケラスティオイデスはヒマラヤ地方原産で、地面を這うように広がることから「カーペットカスミソウ」と呼ばれている。
国内の主産地には福島・長野・北海道などの寒冷地域と、熊本・和歌山・静岡などの温暖地域がある。出荷時期は寒冷地が主に夏~秋、温暖地が主に冬~春。夏秋期カスミソウの栽培面積・出荷量日本一を誇る福島県昭和村では収穫後のカスミソウを「雪室(ゆきむろ)」という施設に運び込み、開花時期を調整しながら切り花を全国に出荷する。毎年冬の間に搬入する雪の量は3000㎥、10トントラックで300台分にも上るそうだ。カスミソウ栽培の新規就農希望者の受け入れ事業にも取り組んでおり、2017年には「かすみの学校」インターンシップ制度も導入した。冬春期カスミソウの出荷量全国一は熊本県の菊池・宇城・天草地域。JAグループ熊本花き部会はカスミソウの花言葉「感謝」に因み、「いい夫婦の日」の11月22日を「カスミソウを贈る日」にしようとPR運動を展開している。「霞草白き愁ひを散らし咲く」(村山故郷)