く~にゃん雑記帳

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<阪急文化財団> タカラヅカ 半世紀前に全国の民俗芸能を記録! その膨大な資料を保存・公開

2012年09月24日 | 祭り

【奈良県立民俗博物館で映像上映会「宝塚が記録した大和の芸能」】

 宝塚歌劇というと華やかなレビューを連想しがちだが、かつて全国の郷土芸能を地道に取材し記録した時代があった。今から半世紀ほど前の1958年から20年間で、動画テープ(8ミリテープ)1700巻(音なし)、録音テープ(オープンリール)1200巻、写真ネガフィルム7万コマなど膨大な資料が残る。その中にはすでに途絶えた芸能も多く、学術的な価値は極めて高い。その一部を鑑賞する民俗映像上映会「宝塚が記録した大和の芸能―宝塚歌劇団郷土芸能研究会の記録」が23日、奈良県立民俗博物館(大和郡山市)で開かれた。

   

 宝塚歌劇団に郷土芸能研究会ができたのは58年4月。上映会のコメンテーター、阪急文化財団・池田文庫の鶴岡正生さん(写真)によると、「その2年前の56年の『春の踊り』に南九州の盆踊りなどを取り入れたところ大変受けた。これをきっかけに日本各地の郷土芸能を取材し舞台化しようと研究会が設立された」。まず全国都道府県の教育委員会にどんな郷土芸能があるかアンケート調査、これを基に東北から沖縄までほぼ全国の芸能大会や保存会などを取材して回った。それらをまとめた同財団の「日本民俗芸能資料目録」(2006年改訂版)の登録演目数は約7000件に上る。

 中心になって活動したのは故渡辺武雄・歌劇団名誉理事。1カ所の取材は通常4~5日、長い時は1~2週間がかりで、演出・振付家や作曲家、舞台衣装担当者のほかタカラジュンヌまで同行、「舞台で忠実に再現するため、現地の演者から指導を受けたり、細かくスケッチしたりして帰ってきた」。舞台化したのは民俗舞踊シリーズ14編と物語風土記シリーズ8編の計22作品。その中には4作目の「火の島」のように文部省(現文化庁)の芸術祭賞を受賞したものもある。この作品には鹿児島に伝わる上山田や伊作の太鼓踊りなどを取り入れた

 研究会の取材活動は当初観客受けする作品づくりを目的に始まったが、「各地の芸能を取材するうちに、いかに伝承していくかが大きな課題になっていることが分かり、伝承への使命感から忠実に舞台化する機運が高まった」(鶴岡さん)。だが1978年の22作目の「祭ファンタジー」が最後の舞台となる。その背景には、「ベルサイユのばら」(74年初演)など洋物の大ヒットのほか、日本万博の「日本の祭り」や旧国鉄の「ディスカバー・ジャパン」などで民俗芸能が観光資源として見直されてきたこともある。ただ宝塚が全国の郷土芸能を掘り起こし、記録してきた役割は実に大きい。

 この日の上映会ではまず「火の島」と「祭ファンタジー」の2作を基に、各地の芸能がいかに舞台化されたかを映像で鑑賞。その後、研究会が記録した奈良県の芸能のうち阪本踊や鎌倉節踊、そうめんかけ唄、矢田地蔵練供養などが上映された。阪本踊や矢田地蔵練供養は今では途絶えている貴重なもの。仮に復活する場合には大いに参考になりそうだ。音源だけ残っている麻布さらし節や大和万歳も流された。

 研究会が収集した膨大な資料は2003年、阪急文化財団が運営する池田文庫(大阪府池田市)に移管された。同文庫では資料の劣化を防ぐため、映像のDVD化や音源のデジタル化に取り組んでいる。08年には閲覧室での一般公開を開始、昨秋には「タカラヅカを彩った郷土芸能」展を開催した。鶴岡さんによると「資料のインターネットでの公開に向けて準備を始めている」という。ただ別々に記録した映像と音をいかにシンクロさせるかなど課題も多いそうだ。


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