【応募124カ国・地域の5000人余の作品から約170点を厳選】
「世界報道写真展」が16日までの会期で大阪・梅田のハービスOSAKA地下2階「ハービスHALL」で開かれている。今年で55回目。世界124カ国・地域の報道カメラマン5247人が2011年に撮影した応募写真10万点余の中から厳選した約170点を一般ニュース、自然、スポーツ、日常生活など9つの部門に分けて展示している。北アフリカ・中東の民衆運動、東日本大震災、ノルウェーでの大量殺人事件、サイの角の密漁、麻薬依存症の娼婦……。迫真の写真の1枚1枚が胸に迫ってくる。
「世界報道写真大賞2011」に選ばれたのはサムエル・アランダ氏(スペイン)がイエメンでの民主化運動を撮影した一こま。反体制デモで催涙ガスを浴びた上半身裸の息子を母親が抱きかかえた写真で、会場を入ってすぐ真正面に展示されていた。母親の全身を覆った黒い衣装と19歳の愛息をしっかり抱く両手袋の白さが印象に残る。「一般ニュースの部」組み写真1位のレミ・オシュリク氏(フランス)がリビアで撮った写真は衝撃的だった。機関銃を手にカダフィ大佐の邸宅に突入する反政府派、半裸で横たわる大佐の遺体……。オシュリク氏はその後、シリアで取材活動中、政府軍の砲撃により命を落としたという。まだ28歳の若さだった。
「自然の部」組み写真1位のブレント・スタートン氏(南アフリカ)は角の根元を引き抜かれたサイの無惨な姿や24時間体制で希少種のキタシロサイを密漁から守る監視チームをカメラに収めた。サイの角の取引は禁止されているが、古くから解熱や解毒剤として効き目があるといわれ、最近ベトナムなどアジア新興国で需要が急増しているという。昨年は南アフリカだけでも密漁で400頭が失われたそうだ。同じスタートン氏が撮った「ウクライナで働く麻薬依存症の娼婦マリア」の写真は、「現代社会の問題の部」単写真でも1位に選ばれていた。
母国イランの公開処刑の生々しい現場をモノクロで収めたエブラヒム・ノルージ氏の写真も衝撃的。絞首刑の執行直後だろうか、4人の男性が首にロープをかけられ宙ずりのまま。イランは中国に次いで死刑執行が多い国といわれ、殺人や強姦のほか詐欺のような軽い罪でも死刑を言い渡されることがあるという。一連の写真は「現代社会の問題の部」組み写真2位で、同1位はステファニー・シンクレア氏(米国)の「世界各地で存続する児童結婚の伝統」の写真だった。
東日本大震災の爪痕を撮影した7人(うち日本人3人)の作品も選ばれ展示されていた。手塚耕一郎氏が津波に襲われてから12分後に撮った宮城県名取市や仙台空港に向かう津波の写真は「スポットニュースの部」組み写真1位。また、がれきの中から娘の卒業証書を見つけ、うれしそうに広げる母親の姿などを撮った千葉康由氏の写真は「ニュースの中の人々の部」組み写真1位に選ばれていた。
隣接会場では「東日本大震災報道写真展」も同時開催中。「世界報道写真展」はこの後、9月から11月にかけて京都市、滋賀県草津市、大分県別府市を巡回する。
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