【桜井市まほろばセンターで30日まで】
奈良県桜井市のJR桜井駅前にある市まほろばセンターで、西陣美術織工房(京都市)による「西陣美術織 動植綵絵(さいえ)展」が開かれている(30日まで)。「動植綵絵」は江戸中期の絵師伊藤若冲の代表作。所蔵していた京都・相国寺から明治天皇に献上され、現在は宮内庁が管理している。同工房は昨年の若冲生誕300年を記念して全30幅の作品を西陣織で再現し、全国各地で巡回展を開催中。全国100カ所の開催を予定しており、桜井は55カ所目という。
「動植綵絵」シリーズの実物は横79cm、縦142cm前後の大きさだが、西陣織の作品は横幅が着物の帯幅とほぼ同じ30cm強で、縦は60cmほど。1作品につき縦糸2700本、横糸1万5000本を使って色鮮やかに織り上げた。掛け軸に仕立て小さな実物写真と並べて展示しているが、鶏の羽や魚のうろこなど細部まで忠実に再現しており、その精巧さにただ驚くばかり。会場で貸し出しているルーペで覗くと、金や銀、赤など様々な色の糸が縦横に織り込まれてきらびやかに輝いていた。遠目では分からなかった宝石のような美しい世界にまた驚嘆した。
同展では「動植綵絵」と並んで若冲の代表作でもある「釈迦三蔵像」三幅を再現した作品や、西陣呼称550年記念作として若冲の「菜蟲譜(さいちゅうふ)」と「動植綵絵」をそれぞれ全通帯として再現した〝織絵巻〟も展示中。さらに聖林寺(桜井市)の国宝十一面観音菩薩立像や瀬戸内寂聴さんが描いた「百歳観音」の西陣織作品、若冲晩年の傑作である襖絵「仙人掌(さぼてん)群鶏図」(大阪府豊中市の西福寺所蔵)を日本画家小野喜象氏が実物大で模写した墨彩画なども並ぶ。西陣織の匠の技を堪能させてくれる作品展だった。
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