く~にゃん雑記帳

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<万葉文化館> 「万葉人心情 ―景―」 万葉日本画約40点

2015年02月14日 | 美術

【柿本人麻呂・大伴旅人ら5人の歌をモチーフにした作品群】

 奈良県立万葉文化館(明日香村)で「万葉人心情―景―」展が開かれている。現代日本画家が万葉集の歌を基に描いた同館所蔵の〝万葉日本画〟は全部で154点。今回はそのうち柿本人麻呂・大伴旅人・山上憶良・山部赤人・大伴家持の5人の風景・心情を詠んだ歌に焦点を当て、それらの歌をモチーフに描かれた作品約40点を集めている。会期は3月15日まで。

 最も展示数が多いのは柿本人麻呂の歌にちなむ作品12点。西田俊英作『秋山迷ひぬる』は妻を失った悲しみを詠んだ歌「秋山の黄葉を茂み迷ひぬる妹を求めむ山道知らずとも」がテーマ。真っ赤に染まった秋の山道を馬に乗ってさまようのは人麻呂自身だろう。「み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へどただに逢はぬかも」。小島和夫作『浜木綿』は万葉集の中にただ1首だけ登場するハマユウの花を描いた。

  

 山部赤人は人麻呂とともに「歌聖」と称された。松尾敏男作『鶴(たづ)鳴きわたる』(上の作品)の画材は赤人の歌「若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る」。若の浦は今の和歌浦(和歌山市)。赤人が724年の聖武天皇の紀国行幸に随って若の浦を訪れた際に詠んだ。8羽の鶴に生命の躍動感が漲っている。

 長谷部権次呂作『平城京沫雪(あわゆき)』に添えられた歌は、大伴旅人の「沫雪のほどろほどろに降り敷けば平城の京し思ほゆるかも」。大宰府に赴任した旅人が奈良の都を懐かしんで詠んだ。加山又造作『月と秋草』(下の作品)は山上憶良の秋の七草を詠んだ歌にちなむ。その歌の最後に登場する「朝顔の花」は今のキキョウを指すといわれる。筑前の国守として赴任した憶良は旅人と共に九州で歌壇を形作った。

  

 大伴旅人の子、家持の歌をモチーフにした作品も11点展示中で、人麻呂に次いで多い。その中には中島千波作『散りのまがひ』、川島睦郎作『菖蒲草(あやめぐさ)』、上村松篁作『春愁』なども。江戸時代に描かれた『柿本人麻呂像』(法眼泰晋画、伝安井門跡讃)や明治時代の菅楯彦作『大伴旅人卿羨酒壺』、板橋貫雄作『貧窮問答歌画賛幅』なども同時に展示されている。

 一流の現代日本画家が描いた〝万葉日本画〟の数々は万葉の時代と現代を歌と絵でつなぐ貴重な財産。作品を通じ改めて万葉歌人の心情の一端に触れることができた。ただ、残念だったのは大伴旅人に関連する展示パネルや展示目録で、赴任先の役所名「大宰府」が「太宰府」に、また官職名「大宰帥(だざいのそち)」が「太宰帥」や「太宰師」になっていたこと。単なる変換ミスだろう。そう思っていたところ「現在の表記に合わせた」とまさかの回答。ちなみに同館発行の図録「万葉日本画の世界」で旅人のページをめくると、こちらは「大宰府」と正確に記されていた。


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