く~にゃん雑記帳

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<大和文華館> 江戸時代の肉筆浮世絵師「宮川長春展」が開幕

2013年10月13日 | 美術

【全国の美術館・博物館蔵、個人蔵の作品74点が一堂に】

 奈良市の大和文華館で「宮川長春展」が12日始まった。宮川長春(1682~1752年)は江戸時代に活躍した浮世絵師。「宮川派」の祖で、版画ではなく1点制作の肉筆画に没頭した。長春1人に焦点を当てた展覧会は国内で初めてという。展示作品74点(一部は展示時期限定)のほとんどは全国20カ所を超える美術館・博物館の所蔵品や個人蔵の作品。よくぞここまで集めることができたものだと感心させられる。11月17日まで。

  

(㊧大和文華館蔵の重要美術品「立美人図」=部分、㊨個人蔵「風俗図屏風」のうち「市川門之助図」=部分)

 長春は浮世絵の祖ともいわれる菱川師宣(1618~94年)に私淑した。師宣の代表作に「見返り美人図」がある。女性がふと足を止めて後ろを振り返る。より美しく見せる〝演出〟ともいわれる。長春も1人立ちの美人図を多く残した。この特別展には重要美術品の大和文華館蔵のものを含め「立美人図」だけで10幅も出展されている。いずれも流れるような線で背筋を伸ばしたふくよかな女性が描かれており、凛とした表情の中に気品と色香が漂う。

  

 会場入り口正面には「蚊帳美人図」が3点展示されている。蚊帳の間から半身を乗り出して長いキセルで悠然とたばこを吸う。寝巻きや掛け布団などの柄は異なるが、全体の構図は蚊帳の位置やキセルの角度なども含めほとんど同じ。これも立ち美人図とともに長春が得意とした図像のようだ。長春の作品の大半は年記が入っていないため制作時期が不明。この3点については「菱川師宣様式を強く残す早期の作品」という。蚊帳と美人を描いた作品は他に「蚊帳の遊女と禿図」「蚊帳、読書美人図」も出品されている。

 この他にも同じ作品名を持つものが多い。「身支度の図」や「几帳美人図」「遊女聞香図」はそれぞれ2点ずつ、「柳下腰掛美人図」は3点出品されている。「遊女聞香図」は双六盤に腰掛けた遊女が足元の着物の裾の間で香をたき、着衣に香を籠めている姿を写したもの。自らも香を楽しむように襟を立て、胸の隙間からは漏れた香が一筋立ち上る。なかなか艶っぽい作品だ。

 

 (徳島市立徳島城博物館蔵「風俗図巻」=部分)

 長春は師宣同様、遊里の吉原や隅田川の船遊びなどの風俗画も多く描いた。同展にも「吉原風俗図」「四季江戸風俗図巻」「室内遊楽図巻」「風俗図屏風」などが並ぶ。いずれも当時の庶民の娯楽や着物の図柄などを知るうえでも興味深い。最上段の写真㊨は六曲一隻の「風俗図屏風」のうちの1枚で、描かれているのは虚無僧姿の初代市川門之助。門之助は享保元年(1716年)、江戸・森田座の「洛陽愛護若」で虚無僧を演じ人気を博したという。そこから制作時期が享保年間の前半とほぼ類推できる。

 「朝鮮使節騎馬図」は馬上の男性が長いキセルでたばこを吸う構図。朝鮮使節は幕府の慶事や将軍の代替わりに合わせて訪朝してきた。長春が活躍した18世紀前半の訪朝は1711年、19年、48年の3回。そのことから、この絵が描かれたのは48年では遅すぎるため11年か19年の訪朝の際のものではないかという。


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