【新崎盛暉著、岩波書店発行】
約450年間続いた琉球王国を廃し、明治政府が強制的に日本に統合した〝琉球処分〟から130年余。沖縄戦では県民の4人に1人が戦死し、戦後の米国統治は27年間も続いた。沖縄には日本全体の7割強の米軍基地が密集する。沖縄は戦中・戦後、過酷な時を刻んできた。そして、いま政府と沖縄県は辺野古での新基地建設を巡って鋭く対峙する。本書はタイトル通り「日本にとって沖縄とは何か」を探るものだが、それは同時に「日本人1人1人にとって沖縄とは何か」を問う1冊でもある。
著者は1936年東京生まれ。東大卒業後、東京都庁勤務の傍ら「沖縄資料センター」の活動に携わり、74年に沖縄大学に赴任。専門は沖縄近現代史で、学長・理事長を経て現在は沖縄大学名誉教授。新崎氏は戦後の日米の基本的枠組みを「対米従属的日米関係の矛盾を沖縄にしわ寄せすることによって、日米関係(日米同盟)を安定させる仕組み」と指摘する。その仕組みは「戦勝者=占領者であるアメリカによって作り出され、日本の独立後も引き継がれた」。
その背景にあるものを「構造的沖縄差別」と呼ぶ。辺野古新基地建設は「単に米軍基地の建設をめぐる問題ではなく、戦後70年の日米沖関係史の到達点」。そして建設阻止の闘いは「戦後70年、軍事的な意味での『太平洋の要石』としての役割を押し付けられてきた沖縄が、構造的沖縄差別を打ち破り、自らを、平和な文化的経済的交流の要石に転換させるための『自己決定権』の行使にほかならない」と意義付ける。
沖縄では一部県民の中で繰り返し〝琉球独立論〟が唱えられてきた。2013年には「琉球民族独立総合研究学会」という学会まで旗揚げした。本書でも最後に「沖縄独立論をどう考えるか」という小見出しを立てて独立論に触れる。2015年の琉球新報と沖縄テレビによる世論調査では「現行通り日本の中の一県のままでいい」が最も多く66.6%、次いで「日本国内の特別自治州などにすべきだ」が21.0%で、「独立すべきだ」は8.4%だったという。この10人に1人近い数字を少ないとみるか、多いとみるか。
著者は「『自立』は必ずしも『独立』ではない」と指摘する。そして辺野古で海上抗議活動に参加する芥川賞作家、目取真俊氏の言葉を紹介する。「米軍基地は必要だが自分たちの所にあると困るので沖縄に押しつけておきたい、というヤマトゥンチュー(日本人)の多数意思が、安倍政権の沖縄に対する強権的な姿勢を支えている……辺野古や高江で起こっている問題すらウチナンチュー(沖縄人)が自己決定できずして、独立など夢物語にすぎない」
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