【高松塚古墳の壁画発見50周年記念展】
奈良県明日香村の高松塚古墳で国内初の極彩色の壁画が見つかったのは今からちょうど50年前の1972年(昭和47年)のこと。3月6日の慰霊祭の翌日から奈良県立橿原考古学研究所と明日香村による発掘調査が始まり、15日目の21日正午すぎ、石槨南壁に開けられた盗掘孔から内部を覗いて壁画が発見された。橿原考古学研究所付属博物館(橿原市)では壁画発見50周年を記念し「よみがえる極彩色壁画」と題した記念展を開いている。
館内に入ると右側の壁面で「報道で振り返る高松塚古墳」として朝日新聞の記事をもとに壁画発見当時の様子を紹介。壁画発見の公表は5日後の3月26日で、翌27日以降、新聞の一面や社会面などに「戦後最大の発見」「法隆寺壁画に匹敵」「考古学史に新ページ」などの見出しが躍った。改めて当時の興奮ぶりが紙面からも伝わってくる。ただ4月4日付には「壁画に黒カビ 急速に繁殖のおそれ」という記事も。残念ながらその危惧は的中。壁画の劣化が進んで、その後、石室の解体や壁画の取り出し修理につながっていく。
特別展示室に通じる通路左側の壁面は発見当初の色彩や質感を忠実に再現した複製陶板が飾る。特別展示室では原寸大の壁画のパネル写真や副葬品の海獣葡萄鏡、ガラス製の小玉、木棺の飾り金具などを展示中。その一角には被葬者とみられる人骨の一部も。鑑定の結果、熟年の男性のものとみられるという。発掘調査時の測量図や壁画発見当日の詳細な日誌なども並んでいる。記念展の会期は3月21日まで。残り僅かだ。