【子どもが乗るオオオニバスは南米原産の外来種】
巨大な浮き葉を持つスイレン科オニバス属の日本最大の水生植物。北限は新潟市の福島潟で、本州・四国・九州の比較的栄養に富む池や沼などに自生する。国外では中国からインドにかけても分布する。オニバス属の植物はこの1種だけ。よく似たものに葉の縁が立ち上がるたらい状のオオオニバス(オオオニバス属)がある。植物園のイベントなどで葉の上に幼児が乗ることで知られるが、こちらの原産地は南米のアマゾン地方。
オニバスの葉は大きいものでは直径が2mほどにもなる。葉の両面には硬くて鋭いトゲ。茎や花の萼などにも無数のトゲが生える。「鬼蓮」の名前も葉の形がハスに似て大型でトゲに覆われていることから。学名は「Euryale ferox(エウリアレ・フェロックス)」。属名はギリシャ神話の中で神罰によって怪物に姿を変えられた3姉妹の一人の名前に因む。種小名は「トゲの多い」を意味する。花期は8~10月。茎の先に径3cmほどの小さな紫色の花を付ける。オニバスにはこの〝開放花〟とは別に、水中で蕾のまま自家受粉して結実する〝閉鎖花〟がある。
種子の寿命は長く、数十年の休眠期間を経て再び発芽するケースも少なくない。ただ池の埋め立てや水質の悪化などで自生地の減少が続いており、環境省は絶滅の危険が増大しているとして絶滅危惧Ⅱ類に分類している。富山県氷見市の「十二町潟オニバス発生地」は国指定の天然記念物。このほか東京都葛飾区の水元公園、静岡県掛川市の中新井池、埼玉県加須市の「オニバスの郷」、香川県善通寺市の前池、福岡県遠賀町の蟹喰池(がにはみいけ)、鹿児島県薩摩川内市の小比良池など各地の自生地が自治体の天然記念物に指定されている。「鬼蓮の水を破りて亀の首」(橋本榮治)