く~にゃん雑記帳

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<杵築市の城山公園石造物群> 孝女・孝子碑など約200基

2018年12月25日 | メモ

【室町時代の国東塔や宝篋印塔、江戸時代の庚申塔なども】

 大分県の国東半島は磨崖仏や国東塔などが多く石造文化財の宝庫といわれる。その国東半島の東南部に位置する杵築市で、杵築城天守に向かう木立の間に歴史を感じさせる数多くの石造物があちこちに置かれていた。室町時代の宝篋印塔や国東塔、江戸時代の庚申塔や石仏など約200基。この地方の石造文化財の代表的なものや盗難・破損の恐れがあり管理を委託されたもの、祀る人がいなくなったものなどを公園の一角に集めた。「城山公園石造物群」として市の文化財に指定されている。

 その石造物群の中にひときわ大きな「孝女初碑」と「孝子兵吉碑」が立つ。説明文などによると、孝女初(1817年没)は幼くして父を亡くし、行商をしながら病気がちの老母に孝養を尽くした。その孝行ぶりから領主の恩賞を度々受けたという。一方の兵吉(1772年没)も小さいときに父を失って母に孝行を尽くした。2つの記念碑は大正末期に当時の杵築町教育会が建てた。この2人は三浦梅園(1723~89)がまとめた孝行・忠義者の逸話集『愉婉録(ゆえんろく)』でも取り上げられている。

 

 孝女・孝子はほかにも多くの言い伝えが各地に残り、顕彰碑なども建てられている。孝女阿米(およね、山口県周南市)、孝女千代(熊本県津奈木町)、豊後二孝女ツユとトキ(大分県臼杵市)、孝女伊麻(奈良県葛城市)、孝女お照(大阪府和泉市)、孝女登勢(三重県津市)、孝女曽與(そよ、愛知県弥富市)、孝女和喜(愛知県飛鳥村)……。大分県臼杵市と茨城県常陸太田市は孝女ツユとトキの縁で2015年に姉妹都市提携を結んだ。俳聖松尾芭蕉は吉野への旅の帰りにわざわざ孝女伊麻を訪ねたという。山口県周南市は孝女阿米に因んで「およね賞」を設け命日に親孝行な児童・生徒を表彰しているそうだ。

 孝女・孝子の顕彰は徳川5代将軍綱吉の頃から江戸時代後期にかけ幕府や藩によって盛んに行われた。大分・杵築にも1758年に幕府の巡検使がやって来て領内の孝行者を尋ね、役人は初と兵吉の2人の名を挙げたという。幕府は1801年に全国で表彰された孝女・孝子を集めた『官刻孝義録』を編纂・出版している。江戸時代から明治時代にかけても民間の儒学者や文学者らによって、詩歌集『本朝孝子伝』(藤井懶斎著)、『孝婦集』(三宅宗春編)、『近世孝子伝』(城井寿章著)など多くの孝行物語が刊行され、諸階層の人物の伝記集『近世畸人伝』(伴蒿蹊著)の中でも孝女たちが取り上げられている。与謝野鉄幹も『孝女阿米』を書き残している。

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