【ワシントン条約で原種の輸入は厳しく規制】
中南米のメキシコ~ブラジル、ペルーの多雨地域に分布する常緑性の多年草。ラン科プラグミペディウム属の植物の総称で、地に根を下ろすもののほか、樹木や岩肌に着生するものもある。草丈は30~100cm、花色は茶、黄緑、ピンク、オレンジ、赤など。花の形などは同じラン科で東南アジア原産のパフィオペディラム属の植物に極めてよく似る。
プラグミペディウムの語源は「隔壁」と「スリッパ」を意味する言葉から。雌しべの下にある子房が壁で3室に仕切られていることと、花びらの一部の唇弁がスリッパのように袋状になっている様子に因む。食虫植物のウツボカズラにも似たこの唇弁と、左右の側花弁が長いのがプラグミペディウムの特徴。岩上などに生えるコウダーツム種は側花弁が50cm以上にもなって長く垂れ下がる。このほか主な原種や園芸品種に小型種のペアルセイ、花が緋色のベッセ、淡いピンクのシュリミー、大型交配種のグランデ、側花弁などに紫の筋が入るハートウェギーなどがある。
プラグミペディウムにはもともと地味な花色のものが多く、華やかなパフィオペディラムの陰に隠れていた。しかしベッセ種の発見や交配による新品種の登場などで人気が高まっている。これに伴って原産地では乱獲などで野生種が絶滅の危機に直面。このためプラグミペディウムはパフィオペディラムとともに、ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で「付属書Ⅰ~Ⅲ類」のうち保護のため最も厳重な規制が適用されるⅠ類に指定され、原種の輸入が厳しく禁じられている。