ケン坊のこんな感じ。
キーボーディスト、川村ケンのブログです。




MTVをつけると、マイケル・ジャクソンの追悼番組がやっていました。

 

ついつい、観てしまうわけですが、どうしても、・・・涙が。どうしても、信じられない。信じたくない。

 

もう、何度でも言いますが、僕たちは、世界は、本当に素晴らしいアーティストを失いました。

まがりなりにも音楽に関わった仕事をしている僕が、こんなことを言ってはアレなんですが、

マイケルのライブ映像などの合間のCMで流される、今売り出し中の日本のアーティストさんの映像などを見て、

 

・・・いや、やっぱり、やめておこうかな。

 

ただただ、もう、なんとも、やりきれない気持ちになってしまうんです。

 

マイケル・ジャクソンというアーティストを失ったことは、もしかしたら、

 

・・・国が一つ消失してしまった、くらいのインパクトがある出来事だったんじゃないかと思えてしまうんです。

 

亡くなったことで、ここまで唐突に世界的評価が高まった(再評価された)ことは、なんだか皮肉で、悲しい事でもあるのですが、理由はあるわけです。単なるノスタルジアなどではなく、彼のパフォーマンスは本物。本当に、凄「すぎ」ます。歌の音程、完璧なリズム、誰にも真似できないダンス、そして、彼のフォギュアの美しさ。見れば、聴けば、一目瞭然の、色褪せない、魔法のようなマイケルの魅力。今まで彼に触れたことがなかった人たち、この死の報道をきっかけに新たに彼を知った人たちが、20年も30年も前のCDを手に入れようとショップに走ったことは、少しも理解に難くありません。

 

 

グアムでのある日の朝食時、レストランにマイケルの曲がずっと流されていました。有線でしたか、ラジオでしたか。なんかね、「ヒール・ザ・ワールド」「ユーアー・ノット・アローン」・・・日本で聴きなれていた曲たちが、こうして異国でも当たり前のように流されていることを感じて、勿論、これは世界中で今、こういうことなんだろうな、って思って、胸が熱くなりました(人種や言語の違いが大きいかとは思いますが、・・・アジア、これは日本も含めてです、は・・・もしかしたら、世界的に見たら、彼の死に対してのレスポンスが薄い方かもしれないな、とも思いました)。

しばらくじっと聴いていますと、スリラーがかかりました。そして、曲が間奏まで差し掛かった時です。

 

普通に、僕たちのケアをしてくいれていたウェイターの一人が、あのマイケルのダンスを踊り始めたんです。トレイを持ったままね。

といっても、そんなに大げさなものではなく、他のお客さんに気付かれるか、気付かれないか程度の、軽くステップを踏んだ、真似した、程度ものでしたが、僕にはすぐにそれと分かりました。

すると、同僚の女性のウェイトレスが

「イエイ、ゴー、マイケル!」

って、小さな声で笑って彼をはやしたんです。

 

なんかね、銀のお盆を持って、仕事中のレストランで踊った(ムーンウィークまでしてみせた)褐色の肌の彼を見てね、

 

ちょっと涙が出ました。

 

後から彼の名札を見たら、そこには「Micheal」とありました。

 

 

世界中が一人のアーティストの死を、こんなにも悲しむなんて。

 

一人のアーティストの死が、こんなにも世界中の人にインパクトを与えるなんて。

 

先ほど、国がひとつ消えた、と書きましたが、

 

訂正します。

 

 

星が、

 

一つ、

 

消えたんです。

 

 

グアムでも、彼のTシャツが、売り場の一番目立つところに置かれていたりしていました。

 

改めて、合掌。そして、偉大な彼に、Thank you, そして、R.I.P.

 

では。

 

 

---追記。---

 

マイケルは、かの喜劇王チャールズ・チャップリンが大好きで、そして彼が作曲した「Smile(スマイル)」が大好きだったそうです。

映画「モダン・タイムス」の為に作られた曲ですが、このとても美しく、どこか懐かしいメロディーには、曲名は知らなくとも、「ああ」と、聞き覚えのある方も多いかと思います(つい最近、日本でもNHKスペシャル「マネー資本主義」シリーズのテーマソングになっていました)。

チャップリンの映画の映像をバックに、マイケルの美しい歌声を聴いていたら、また涙がとまらなくなりました(こちら)。なんという歌唱でしょう。彼のいち歌手としての実力の高さを、改めてまざまざと思い知らされる素晴らしいトラックではないでしょうか。

 

去る7月9日に、ロサンゼルスのステイプル・センターでとり行われたマイケルの追悼式では、兄のジャーメイン・ジャクソンが、涙をこらえながら亡き弟マイケルにこの曲を捧げていました(こちら)。震える声と、右手にはめられた「あの」グローブ、そして、映し出される家族の肖像が、涙をそそります。

 

92年に、勿論世界規模で行われた”デンジャラス・ツアー”では、マイケルはその収益の全てを、貧しい国の子どもたちの為に寄付し、また、ツアー中、忙しいスケジュールの合間を縫って、各国の病院や孤児院などを慰問していたといいます。

いくつかは報道などでもご存知かもしれませんが、その莫大な財産ゆえ、また、大成功をした彼を妬む(黒人ゆえの)偏見からか、マイケルは生前、なんと2000件ともいわれる訴訟を抱え、500回以上、裁判所の証言台に立たされていました。

考えてもみてください。毎日のように弁護士から「あなたは、また訴えられました」そして何度も何度も「裁判所へ出頭してください」という電話も受けなくてはならないのです。その全てが、はたして正しい(・・・というか、根拠のある)訴訟だったのでしょうか。想像の域はでませんが・・・、彼は、そんなにも人から訴えられるような悪い人間だったのでしょうか。そんな人間に、あんな歌が歌えるでしょうか。

心中、察するに余りあります。普通の人間なら、まともな神経を保つことすら難しいでしょう。とても、耐えられようはずがありません。

でも彼は、人前ではいつも笑顔だったように思います。露骨に不機嫌な顔を見せたり、怒ったり、激昂して怒鳴り散らしたり、誰かに暴力を振るったりしたマイケルを見たことは、少なくとも僕はありません(もしそんなものがもしもあれば、繰り返しメディアが流すことでしょう・・・)。

 

ただ、曲の中では彼は、辛らつなメッセージを送り続けていました。そのキャリアの後半では、インタビューも「修正のきかない」生放送のものしか受けませんでした。勿論、それまで何を言っても、ちゃんと正しく書いてもらえなかったからです。ゆえに、彼は大変なマスコミ嫌いでした。

先ほどご紹介した、マイケルの歌う「スマイル」は、95年に発表されたマイケルのベスト盤であります「ヒストリー パスト、プレズント・アンド・フューチャー ブック 1 」の2枚目のラストに収録されています。

実は、この二枚組みとしては歴史的な大ヒットを記録したベストアルバムに収録された曲の多くには、もしかしたら意外と思われるかもしれませんが、マスコミや一部の彼を攻撃した人びとに対する、彼からの強烈な「怒り」のメッセージが込められているんです。機会がありましたら、是非とも歌詞を読んでみていただければと思います。

ただ、実際にマイケルが誰かを訴えた、訴訟を起こした、ということは、ただの一度もありませんでした。2000件も誰かから訴えられていたのに、彼はその生涯で、ただの一度も、誰かを訴えたりしたことはなかったのです。

 

スマイル。

微笑みと、素晴らしい音楽と、いくつかのもどかしい疑問を残して、突然、彼は逝きました。

 

最後に、もう一度この曲を、こちらの映像と共に、ご覧いただければと思います(この映像では、残念ながら途中一箇所、音飛びしてしまっています。それでも、素晴らしい映像だと思いますので、ご紹介させていただくことにしました)。

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~Smile~

Smile, though your heart is aching
Smile, even though it's breaking
When there are clouds in the sky
You'll get by...

If you smile
With your fear and sorrow
Smile and maybe tomorrow
You'll find that life is still worthwhile
If you just...

Light up your face with gladness
Hide every trace of sadness
Although a tear may be ever so near
That's the time you must keep on trying
Smile, what's the use of crying
You'll find that life is still worthwhile
If you just...

Smile, though your heart is aching
Smile, even though it's breaking
When there are clouds in the sky
You'll get by...

If you smile
Through your fear and sorrow
Smile and maybe tomorrow
You'll find that life is still worthwhile
If you just smile...

That's the time you must keep on trying
Smile, what's the use of crying
You'll find that life is still worthwhile
If you just smile

さぁ、笑って  たとえ辛い時でも

そう、笑うんだ たとえくじけそうになっても

空を雲がおおっていても 笑顔を忘れずにいれば

きっとどんな困難だって乗り越えられるさ

もしも君が いつでも心に笑顔を忘れずにいれば

将来への不安やつらい事にだって

自分に負けないで ちゃんと立ち向かえるはずさ

そうすれば明日にでも お日さまはニコニコと

君に笑いかけてくれるはずだから

 

いつも喜びに満ちた笑顔で

顔を輝かせているんだ

悲しみの影なんて 人に見せちゃだめだよ

たとえ涙がこぼれそうになっても

そんな時こそ 頑張ってでも笑顔でいるんだ

そう、君は笑顔のほうがずっと素敵さ

泣いたって、何の役にもたたないだろう?

どうかこのことを信じていてほしい

いつも笑顔を忘れずに生きていればこそ

素晴しい出会いや生きがいに

めぐり合えるのだということを・・・

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彼を、心からの笑顔で送れたら、と思います。

 

・・・が、まだ涙がとまりません。

 

では。



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