ケン坊のこんな感じ。
キーボーディスト、川村ケンのブログです。




ステーキを食べにいった時の話です

お店に電話して迎えを頼むと「では21時15分にロビーで」とのことでした。僕が時間より少し位早くにロビーに下りると、すでに彼はそこにいて、目が合った瞬間に「ヘイ!ミスターカワムラ?」と、チャーミングな微笑みで迎えてくれました。ちょっとだけ、オバマ大統領に似ていました。

「あー、ごめんねー。待たせちゃった?」と言うと、「ノーノー!大丈夫!僕が早く着いただけだよ」と。そして、「わお、君のパンツ、ナイスだね(Your jeans are so nice! I like them!)」と、僕のフレアのジーンズを指差してウインクしたんです。

うーん、確かにね、グアムは南国ですからね、フレアのジーンズなんて履いてる人は居なかったです。でも、僕の持ってるの、こんなんばっかりだから(笑)。

 

クルマは8人乗りの大きめのバンだったんですけど、乗っているのは僕だけでした。ですから、お店に着くまでに、「グアムは何回目?」「四回目ー」とか「日本では何してるの?」「ミュージシャンなんだー」とか、そんなことをつらつらと話をしているうちに、ほどなくお店に

「着いたよ」「おー、ここかー。ドライブ、ありがとね。」「ノーノーノー!食事、楽しんでね」。

にこやかな彼にドアを開けてもらって、僕はクルマを下りて、ほんとに、楽しく・・・よく食べたわけです(笑)。

 

そして、帰りのことです。ちょっと遅い時間になりました。お店ももう、閉める準備をしていました。日本と比べると、結構レストランが閉まるのは早いのです。

お会計を済ませ、送迎つきということで、キャッシャーの人に「あのー、帰りもホテルまで送ってもらえますか?」と訊くと、「勿論ですよ」と、レジの横のテーブル慌しくハンバーガーを食べている若者に、何やら早口で話しかけました。

彼はナプキンで口元を拭いながら顔を上げ、僕と目が合うと、「ヘイ、君かー!帰るの?オッケー、じゃ、すぐ送るよ!」と席から立ち上がろうとしました。そう、迎えにきてくれた、あの彼だったんです。また会えた

でも彼は、まだ食事中。おそらく仕事の合間に、慌しくハンバーガーを詰め込んでいたところだったのです。僕は慌てて、「ノーノーノー!食べて!ゆっくり食べて!食べ終わってからでいいから!全然、待つから!」と、手で彼を制しました

ちらっと見ると、まだハンバーガーは二口程度しか食べていません。週末でしたし、お店も随分賑わっていましたから忙しくて、きっと今やっとまかないにありつけたところだったんでしょう。お腹が減っているとことに来て、やっと食べ始めたと思ったら、それを一口、二口でやめるなんて・・・僕には・・・とても(笑)。だから、「とにかく君が食べ終わるまで待つよ。全然、急いでないから。ね、食べて!お願い!」と何度も言ったのに、彼は「いいんだ、いいんだ。もう十分食べたから、お腹一杯なんだ。」と言うのです。

・・・そんなわけ、あるかい。あんなにがっついて食べ始めてていたのに。

でも、「そう言ってくれてありがとね。よし、行こう、行こう!」と、食べかけのハンバーガーにナプキンを掛け、席を立ちました。

ホテルまで、往復したら25~30分はかかります。せっかくのハンバーガー、冷めちゃうのに・・・

 

彼に促されるようにクルマに乗ろうとしたときに、彼は僕が裸で持っていたドギーバッグ(doggy-bag、持ち帰り用の容器)に目をやりました(・・・そう、実はさすがに全部は食べ切れなくて、少し持ち帰ることにしていたんです。皆さんの期待を裏切ってすみません(笑))。そして、「アレ、袋は?」と言うので、「あー、大丈夫だよ。まっすぐ持ってるから。サンキュー」というと、「・・・ちょっと待って」と、クルマを離れお店に戻ると、わざわざ僕のためにビニール袋を持ってきてくれたんです。なんて優しい青年なんでしょう

すると、やおらお店の人がクルマに駆け寄ってきて、何やら彼に。すると彼は僕に「ゴメン、ちょっと待ってね」というと、外に回ってクルマのドアを開けました。ほどなく、6人ほどの日本人観光客がクルマに乗り込んできました。年のころ、45~55歳位の男女のグループでした。

おそらく、食事の後、自分たちで送りを頼めずにお店から出てしまい、しばし途方に暮れていたようです。会計をしたからと言って、あちらから「あ、もしかしてホテルにお帰りですか?では、お送りします」とか、さすがにそこまではないですからね。現地のお客さんも沢山いるわけですし。帰りたかったら自分で、「ホテルに帰りたいから、送りお願いします」と言えばいいんですね。

でも、彼らは少し外で「どうなってんだ?」的なことを言っていたようなんです。で、誰かがようやくお店の人に訊いたら、「今、ちょうど送りのクルマが出るとこですから」という事になったんだと思います。まぁ、推測も入っていますが。

 

彼らはクルマに乗り込むと、「あーあ」とか、「ふー」とか言って、ドッカと、僕の後ろのシートに腰を下ろしました(僕は運転席のすぐ後ろに座ってました)。

「オマタセシマシタ。ミナサン、イイですか?デハ、シュッパツします」と彼は日本語で言い、僕は小さく「OK、サンキュー」と言いました。後ろは無言。彼はクルマを出しました。そして走リ出してすぐに、後ろからコソコソと、でも大して遠慮した風でもない音量の声がしました。

「・・・ねえ、アイツ、迎えに来たヤツだよね」(←女!)

「あー、・・・たぶんそうじゃねえか?よく覚えてねぇけど」(←男)

「ったくさ、遅いよね」

「ああ」

 

 

「(・・・・・・)」(僕、そして、彼)

車内、無言のまま10分ほど走って、グループのホテルに着きました。ロビー前にクルマを停めると、彼は急いで運転席から下り、回って外からドアを開け、「トウチャクです。オマタセシしました」。グループは、ゾロゾロとクルマを下り、そのままホテルに入っていきました。

 

「(・・・サンキューとか、ないの?)」

僕は、顔から火が出るほど恥ずかしかったです

 

クルマに戻った彼は、「よーし!行こう!君のホテルは○○○だよね!」と、突然笑顔になって、僕も、「ゴメンねー!食べてたのにー」(←そればっかし(笑))。車内のムードがガラっと変わったのがわかってね、なんか、なんともいえない気分でした。いや、和んだことは、とっても嬉しかったすけどね。

彼が今22歳で、他にもアルバイトをして稼いでいて、バイクが好きで、日本製のスズキのバイクが欲しいと思ってること。そして、日本語の勉強をしていて、いつか日本で働いてみたいと思ってる事。そして、僕のことを25歳位だと思ってた、ということ(・・・本当に驚いたみたいで、信号待ちででまじまじと僕を振り返って、見ては「Really!?」と何度も(笑))。

「また、グアムに来て、お店に来てよ」と言うので、「うん、絶対に来る。じゃその時も、君が送ってね!」というと「勿論!」と言って笑ってくれました。

 

ホテルに着きました。

「君の名前は?」「ケン。君は?」「僕は」

すると彼は、いきなりシャツを捲くり、背中を出しました。それがトップの写真です。

そして、この姿勢のまま「クリストファー!」と言ったんです。

 

そうか、クリストファーね!覚えたよ

 

・・・んー、でも、よく見ると、

 

・・・クリストフ「ア」。

 

「ア」が大きいのと、棒が一本足りないかなーなんてことは、もちろん言いませんでしたよ(笑)。

 

背中に日本語(カタカナは日本独自の文字です)で刺青。こんなに日本を愛してくれている彼が、よもや、

 

「アイツ」「ヤツ」とかいう言葉が分からないとは、とても思えません。

 

なんで、あんなに上から目線で、横柄なんでしょう。恥ずかしいこと、この上ありません。せめて、絶対にああいう人間にならないように、反面教師に。

 

ドアを開けてくれたクリスに(あちらでは、ドアは内側からは開かないようになってることが多いです)、「サンキュー!」そして、「ほんっと食べてるとこ、ごめんね。お店に帰ったら、ハンバーガーゆっくり食べてね!」と言うと、「分かった!食べるよ!」って、なんか、すっごく笑ってました(笑)。

そして、クリスはクルマに乗り込み、運転席の窓を開けると「ヘイ、ケン!」と呼ぶので、「なんだい?」と言うと

「・・・君のそのジーンズ、マジで好きだよ(I really like your jeans!)!」と、もう一度ぼくのパンツを指差して言うと、ゆっくりと走り去って行きました。

 

え、チップ?そうですよね、食事を中断させてまで送ってもらったんですものね。ビニール袋も持ってきてもらっちゃったしね。楽しい会話もしてもらったしね。

 

うん、ちゃんとね、彼にわからないように、彼のハンバーガーのプレートに、1ドル挟んで置いて来ましたよ。お店の人には「これ、彼へのチップだからね」って、言って。 

 

クリス、驚いたかな。

 

なんか、ちょっとかっこいいことした気分・・・

 

なーんてね(笑)。たった1ドルじゃ、大してかっこよくないね(笑)。

でも、気持ちってことで

 

ではー。



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