僕のCPの調律師Aさんのお誘いで、とある教会に行ってまいりました。
といいますのも、その教会のピアノはAさんが調律をしているのだそうですが、
そこに今日、アメリカのミュージシャン、ジェラルド・ミッチェル(Gerald Mitchell)氏が、ゴスペルを演奏しに来るので、川村さん、見にいらっしゃいませんか、というお誘いだったのです。
ジェラルド氏は、デトロイトテクノ、ハウスという、いわゆるクラブミュージッククリエーター。
リンク先の写真や、こちらのYoutubeの音楽などを聴いていただければ、「ほほう、なるほど」という感じ。
こういうのは、やはり本場の方がやってると、一味違うと言うか、やっぱりかっこいいと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=I58ML5lcj44
http://www.youtube.com/watch?v=l3PWl9cmSDU
http://www.youtube.com/watch?v=P-0E-juNSGc
どうやらジェラルド氏は、敬虔なクリスチャンで、今回の来日中にも「どこか、ちゃんと音楽ができる教会はないかな」ということで、
このA氏がピアノを調律している教会に来て、祈りを捧げ、また、音楽を演奏することになった、のだそうです。
そしてまた、こういったテクノのクリエーターとして、アルバムなども世界中で発売していたり、ワールドツアーして周っていつつも、
「僕のルーツはゴスペルなんです。夜のクラブで演奏することが多いけど、本当は、こうして教会で皆さんとゴスペルを演奏し、一緒に歌っているときが最高のひと時なのです。」と、今日も語っておれらていまして、
これは、なかなかに興味深いものがありました。
ちなみに僕は、いわゆる特定の宗教とかは持っておりませんで、広く一般的な日本人の方々と同じように、正月も節分もクリスマスもなんでもござれで、「神さま仏さま氏神さまー」という、いわゆる、多宗教(?)という感じですね。
前にも書きましたが、「無宗教」というのとは違って、やはり荘厳な景色、例えば初日の出などを見れば、敬虔な気持ちになりますし、例えば人の死に接した時、その魂の存在を否定することもありません。神社、仏閣、教会のステンドグラスなど、なんでも美しいと思いますが、といって、 毎日何かを拝んでいたり、神社や教会に足しげく通ったりということも全然無いので、まあ、多宗教、というか、・・・雑宗教、なんでしょうね。
教会に関しては、これも昔書いたかもしれませんが、子どものころボーイスカウトに入っておりまして、この集合場所が、たまたま、近くにあったカトリックの教会だったのですね。
なので、何がなんだかさっぱりわからないまま、ミサには時折参加したりもして(でも、考えいたのは、跪いたときに、膝が痛いことと、退屈なことと、お腹が減っているので、あの「パン」とやらが食べたかったことだけです。ごめんなさい・・・。)、そういったことで、別段、抵抗は無いんですね。
・・・なんて話はさておき、ともかく今日、本当に久しぶりに牧師様のお話を聞いたり、教会で賛美歌というものを聴きました。大人になって参加すると、色々と視点が違って、興味深かったですね。
さて、そして、ジェラルド氏のライブですが、祈りの言葉に続いて、4曲ほど、素晴らしいピアノと歌を聴かせてくれ、本当に有意義な経験となりました。なかなか日本に居ながらにして、本場のゴスペルとか聞けないですものね。
また、ピアノを始めたのが20歳からとのこと。それまではワルで、どうしようもなかったそうですが、友人の誘いで(20歳で)音楽に目覚めて、それがいまや、世界的な成功を収めているというのですから、人生、本当に分らないものですよね。
そして、20歳で初めて音楽や楽器に触れても、想いがあれば、プロにだってなれるし、こうして他国の人をも感動させることができるプレイヤー、ミュージシャンになることが出来る、ってことが何よりも素晴らしく思いました。
その実践者が目の前にいる。これは、インパクトのある経験でした。
全ての礼拝が終わり、A氏がジェラルド氏を紹介してくれました。
僕は、名刺代わりに、海月の写真を何枚かプリントアウトして持って行っておりまして(裏に連絡先を書いてね)、彼にプレゼントしました。
なんといっても、彼はキーボーディストでもあるわけで・・・、そしたら案の上、
「わお!これはすごい!」
と目を丸くして、海月の写真に見入って、それから「これは元はB3か?C3か?」とか「何年モデル?」とか、
奥に写っていたミニモーグを見つけて「これも君のか!?いやあ、ミニモーグはやっぱり最高だよね!」などと、すっかり話が弾んでしまいました。
・・・メイニアック・・・楽器オタクは、やはり世界中にいるのですな(笑)。
で、せっかくなので、「じゃあ、記念に写真撮らない?」って訊いたら、「勿論!じゃあ、あそこのピアノの前で」と、Aさんが調律しているグランドの前で、一枚。
でね。
せっかくだから、
もう礼拝も終わってるし(参加された皆さんは、三々五々、教会内でお話をされてました)、
と思って、
僕、
ちょっと、振り返ってピアノに向かって、ブルースを弾き始めたんですよ(笑)。
テンポはちょっと速めで、こんなブギウギに近い感じをイメージして。
そしたら、もう、4小節も聴いたか聴かないか位で、ジェラルド氏、すぐに「イエイ!」って僕の横に並んで、音を重ね始めたんです。
キーも決めてない。コード進行だって、ブルースってだけで、他は何にも話し合ってもいない。
でもね、さすが。すぐにグイグイとプレイしてくれてね、僕も楽しくなっちゃって。
だってね、すんごいのですよ、グルーブが。
やっぱり、本場の黒人。リアル・ミュージシャンの音。
僕はゾクゾクしちゃって、もう、何も考えずに、ひたすらジェラルド氏の音と、自分の音だけに集中して、
ただただ、
・・・弾き倒しました(笑)
こんな感じね。
動画で見ると、もっと面白いんですけど。・・・二人して、おしり振ってるので(笑)。
教会中の人が振り返っているのが、背中で分りました。
でも、もう、止まらない。
面白い、面白い。
さっき会ったばかりの人と、もうこうしてセッションができる。
音楽って、最高。ブルースって最高。
時折、緩急をつけたり、お互いの音の隙間を作ったり、譲り合ったり、バトルしあったり。
そして、あうんの呼吸で、エンディングもバッチリ決まりました。
教会中が、指笛と拍手の渦でした。
もう、次の瞬間には「イエーイ!」ってハグしてくれて。
スゲーよ!って。
そっちこそ!
じゃ、皆さんにご挨拶。
僕の手を高く掲げてくれました。
最高でしたよ、ほんと。
「また会おう!必ず会おう!メールするよ!」って言ってくれて、
何度も何度も、握手をして、ハグをしてくれました。
今日、思いがけず、デトロイトにアメリカ人の友達が、音楽仲間が、できました。
教会にいた幾人もの方から、僕まで握手を求められたのですが、
中でも一番嬉しかったのが、老婦人の
「素晴らしかったわ!まるで何年も一緒に演奏してる二人のようだったわ!でも今の、打ち合わせも、練習もしてないのよね?なんで、そんなことができるの?」
という言葉でした。
僕たちは、ちょっと顔を見合わせて、
「ミュージシャンですから(笑)」
って、答えました。
僕たちは、ブルースが好きで、やり方を知っているからなんですよね。
遠く離れたところで生まれ育っても、言葉が違っても、一度も会ったことが無くても、
楽器に向かった時に、共通言語となるものを持っているから、なんですよ。
練習なんていらないんです。
打ち合わせも練習もしないで始めるからこその楽しさ、音だけで会話する面白さが、また面白い(しかもいきなり、大勢の人前で即興で始めるのですからね(笑))。
でもそれがちゃんと成立して、音楽になって、「そうそう!」「そうくるか!」ってお互い盛り上がって、刺激しあって、讃えあって、
そして、呼吸を合わせて、見事にフィニッシュできた時の、何ともいえない・・・“通じ合えた感”。
音楽をやっていて、一番幸せを感じる瞬間の一つです。
初めて会って、1分話して、5分、一緒に演奏しただけですけど、
次に会ったら、「Hey,Bro!(よお!兄弟!)」で、もう大丈夫。
ジャラルド氏、来月、デトロイトに帰るそうですが、きっとまた、会えるような気がしました。
僕がテクノに染まっていたら、それはそれで(笑)。
で、このポーズは、彼を真似たものですが・・・、僕のはたんなる腕組みじゃないか・・・という(笑)。
いやあ、本当に楽しかったです。最高に楽しい一日でした。
音楽のおかげです。
いつも、ありがとー。
ではー。