goo blog サービス終了のお知らせ 
goo

笑顔の素敵な人

 10月5日に亡くなった緒形拳を追悼して放映された「ディアフレンズ」を見た。9年前の平成11年に放送されたドラマの再放送だ。緒形拳は享年71歳だから、このドラマの時には62歳だったことになる。どうりで、肌つやもよく顔に皺も目立たない。亡くなる直前に流さされたエプソンのCMの緒形拳は皺くちゃになってかなり年をとったなという印象が強かったから、少しばかり隔世の感が否めなかった。簡単にストーリーをまとめると・・、

 保護司に連れられてデイケア施設へボランティアにやって来た少年院出の少年・裕司(岡田准一)は、そこで妻を亡くし仕事も投げ出してしまった佐竹老人(緒形拳)とちょっとしたトラブルを起こす。その謝罪のため老人の自宅を訪ねた裕司は、また新たな悶着を引き起こすが、佐竹老人に一方的に押し切られ、千葉までのドライブに付き合わされることになる。10年以上会っていない佐竹の孫娘に会うための道行きはトラブル続きで珍道中とも呼べるものであった。やっとの思いで会うことのできた孫娘から、「もう来ないで」と言われてしまう佐竹・・。それを遠くから見守る裕司・・。

 新聞のTV欄には、「生きがいを失った孤独な老人と非行少年の奇妙な二人旅 世代を超えた友情と感動の物語」とあったが、最初少し見ただけで物語の展開がすべて読めるほどの単純なドラマであり、9年前だったらたぶん途中で見るのをやめてしまっただろうと思えるほどのステレオタイプなつまらない筋立てだった。それでも元気な頃の緒形拳を見ることができたのと、岡田准一の9年前の演技を見られたのとで、何とか最後まで見ることができた。外部に心を閉ざしてしまった若者と老人が次第に心を通わせていく・・といったドラマの本筋とはまったく違う次元、ただ緒形拳と岡田准一の演技を見たいだけ、という製作者の意図とはかけ離れた見方をしていてはいけないのかもしれないが、そんな心持ちで見るのがちょうどいいくらいのドラマだったような気がする。が、二人の演技は実によかった!!
 
 私にとっての緒形拳という役者は、やはり「必殺仕掛人」の藤枝梅安だ。「木枯し紋次郎」の裏番組として、じわじわ人気を博していったこのTVドラマで梅安役の緒方拳は、軽妙な味わいのある表の顔と仕掛人として冷徹な裏の顔とを見事に演じ分けていた。当時10代の私では、男の色気などという洒落たものを解するだけの器量は持ち合わせていなかったが、それでも何となくは感じ取っていたように思う。あんな風になれたらな、と思わないでもなかったから。特に梅安・緒形拳の笑った顔が好きだった。顔全体でニッと笑う顔が可愛らしくて好きだった。
 その笑顔をこの追悼番組でも見せてくれた。生きるのが面白くないと始終苦虫を噛み潰したような顔をしていた佐竹老人が一度にこっと笑った場面があった。それが昔から私の好きだった緒形拳の笑顔そのものだったから、思わずはっとした。と同時に、この笑顔が見られたのだから、このドラマはそれだけでも十分に追悼番組の役割を果たしている、と思った。


 あちこち回ってやっと見つけた、この笑顔だ。やはり笑顔の素敵な俳優はいい。この笑顔を見ると私の心まで晴れ晴れするような気がする。もっと長くこの笑顔を見ていたかったなあ・・。

 心よりご冥福をお祈りいたします。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )