今年も永山裕子さんの「水彩と素描展」に行ってきました。
内部の写真は厳禁でしたので、せめてもの入り口の画像。
今回も東京セントラル美術館で伊勢丹などに比べて広いので作品数も多く、見ごたえがありました!
それに不定期でデモンストレーションがあり、永山さんの制作が見ることができます。
ちょうどラッキーに、作品鑑賞中にデモンストレーションが始まり、じっくりと見させていただくことができました。
イーゼルの前に座り込んで、前日に書き進めた絵に筆を入れ始めた永山さん、しばらく描いた後、首をかしげてらして、急にこちらに向き直り、
「ごめんなさい、失敗しました」とおっしゃいました。
「絵をかくときは自分が監督ですが、いただいた花を描くときは、俳優さんが決まっているようなものでして・・・」
「自分のイメージしていたものと、絵の下半分が違ってしまいました。」
と、その作品は横にどかし、新しい紙に、軽く鉛筆でデッサンを始められ、マスキング、そしてバックの下塗りを始められました。
切ったペットボトルの水入れで、無造作にアルシュ紙に水を吸わせていく。
刷毛で大胆に色を置いていく。紙を傾けて色を流す。
その造形の面白さに、観客からため息が漏れる。
そうしながら、時々ぽつぽつと語られる言葉、アルシュ紙に寄せる思い、100均で探してくるガラス器を工夫して画材を置いたりして遊んでいること、自ら「シュミです」、とおっしゃる水彩について語られ、それがどれも心に響きました。
展示された絵は、新しいものがたくさん。
「Mother」と題された真っ赤な薔薇から滴る赤は、まるで女の子宮から滴る経血のよう。
「幕」ではライトを浴びて舞台に降り積もるように花が散っています。
そうかと思うと「井之頭公園」のスケッチで
『夕暮れの林にだれもいない。「今日、ここであった出来事」が沈殿していく』
と静かな世界が描きとめられています。
たくさんの色、たくさんの花々がそれぞれの画面から、見ているものに語りかけてきます。
「目を伏せる」のベージュとオレンジで書かれた薔薇。
「繰り返す音の先」のグリーンをバックに浮き出る白いユリ。
「Happines」の芍薬。
静かな時を感じる「ひめこぶし」の花と青い陶器。
立ち止まって時を忘れて見入ってしまいます。
一方人物画には、コラージュのような面白さも。
「Chris」では動いている腕時計がまた使われていました。(ちゃんと時間があっていました。)
以前に見た
「繰り返される愛の歌」(やっぱり床に真珠が!)や
「28匹のゾウ」(モデルさんのお子さんが新たに書き足してあった!)なども展示されていました。
今回も水と紙と絵の具の作り出すにじみを、魔法使いのようにテクニック駆使して、以前に増して深い独特の美の世界を作ってらっしゃいます。
でも、今回新しく出たご本「透明水彩の50作品とキーワード」
(2013年8月25日発行・・・なので、アマゾンにはまだ出ていませんでした…)
を読むと、
『「チューリップは難しい、うまくかけません」
とアトリエの生徒さん。
「何枚、チューリップ描いたの?」と尋ねて、
わたしは、失敗してゴミ箱に捨てた7枚の
チューリップの絵を見せました。
これだけ描いてから、難しい、失敗したといって欲しいのです。』p90より引用
とあり、魔法のように見えるテクニックを駆使するために、魔法使いがどれだけ苦心しているかがうかがい知れます。
永山裕子さんの「水彩と素描展」は
東京セントラル美術館(中央区銀座2-7-18)
2013年6月25日~7月6日
平日 11:00~18:30/土・日 11:00~18:00
会期中にデモンストレーションを行います。
(不定期のため、会場へのお問い合わせはご遠慮くださいませ)
だそうです。
また、最近出された
もういちど 透明水彩を始めよう。 基本の12のレッスン
や、
もっと透明水彩を楽しもう。 描きたくなる12レッスン
もたくさんのご本とともに会場入り口横で売られています。
(展覧会に出展してある作品の写真があまりないので、せめてもアマゾンの大きい写真を貼ってみました)
画像で絵をご紹介できないのが残念ですが、どんな画像も実物の迫力にはまったく及びませんから、お近くの方はぜひ足を運ばれて、ご覧になってくださいませ。
(なお、上にある2枚の画像はjesterが撮ったもので、すべての版権は永山裕子さんに帰します。無断転載なさらないでください)