ゆきてかえりしひび――in the JUNeK-yard――

読書、英語、etc. jesterの気ままなおしゃべりです。(映画は「JUNeK-CINEMA」に引っ越しました。)

2013 永山裕子さんの「水彩と素描展」に行ってきました。

2013-06-29 | スケッチ・美術展

今年も永山裕子さんの「水彩と素描展」に行ってきました。



内部の写真は厳禁でしたので、せめてもの入り口の画像。


今回も東京セントラル美術館で伊勢丹などに比べて広いので作品数も多く、見ごたえがありました!

それに不定期でデモンストレーションがあり、永山さんの制作が見ることができます。


ちょうどラッキーに、作品鑑賞中にデモンストレーションが始まり、じっくりと見させていただくことができました。

イーゼルの前に座り込んで、前日に書き進めた絵に筆を入れ始めた永山さん、しばらく描いた後、首をかしげてらして、急にこちらに向き直り、

「ごめんなさい、失敗しました」とおっしゃいました。

「絵をかくときは自分が監督ですが、いただいた花を描くときは、俳優さんが決まっているようなものでして・・・」
「自分のイメージしていたものと、絵の下半分が違ってしまいました。」

と、その作品は横にどかし、新しい紙に、軽く鉛筆でデッサンを始められ、マスキング、そしてバックの下塗りを始められました。

切ったペットボトルの水入れで、無造作にアルシュ紙に水を吸わせていく。
刷毛で大胆に色を置いていく。紙を傾けて色を流す。
その造形の面白さに、観客からため息が漏れる。

そうしながら、時々ぽつぽつと語られる言葉、アルシュ紙に寄せる思い、100均で探してくるガラス器を工夫して画材を置いたりして遊んでいること、自ら「シュミです」、とおっしゃる水彩について語られ、それがどれも心に響きました。



展示された絵は、新しいものがたくさん。

「Mother」と題された真っ赤な薔薇から滴る赤は、まるで女の子宮から滴る経血のよう。
「幕」ではライトを浴びて舞台に降り積もるように花が散っています。

そうかと思うと「井之頭公園」のスケッチで
『夕暮れの林にだれもいない。「今日、ここであった出来事」が沈殿していく』
と静かな世界が描きとめられています。

たくさんの色、たくさんの花々がそれぞれの画面から、見ているものに語りかけてきます。

「目を伏せる」のベージュとオレンジで書かれた薔薇。
「繰り返す音の先」のグリーンをバックに浮き出る白いユリ。
「Happines」の芍薬。
静かな時を感じる「ひめこぶし」の花と青い陶器。


立ち止まって時を忘れて見入ってしまいます。

一方人物画には、コラージュのような面白さも。
「Chris」では動いている腕時計がまた使われていました。(ちゃんと時間があっていました。)

以前に見た
「繰り返される愛の歌」(やっぱり床に真珠が!)や
「28匹のゾウ」(モデルさんのお子さんが新たに書き足してあった!)なども展示されていました。


今回も水と紙と絵の具の作り出すにじみを、魔法使いのようにテクニック駆使して、以前に増して深い独特の美の世界を作ってらっしゃいます。

でも、今回新しく出たご本「透明水彩の50作品とキーワード」
(2013年8月25日発行・・・なので、アマゾンにはまだ出ていませんでした…)
を読むと、

『「チューリップは難しい、うまくかけません」
とアトリエの生徒さん。

「何枚、チューリップ描いたの?」と尋ねて、
わたしは、失敗してゴミ箱に捨てた7枚の
チューリップの絵を見せました。
これだけ描いてから、難しい、失敗したといって欲しいのです。』
p90より引用

とあり、魔法のように見えるテクニックを駆使するために、魔法使いがどれだけ苦心しているかがうかがい知れます。

永山裕子さんの「水彩と素描展」は

東京セントラル美術館(中央区銀座2-7-18)
2013年6月25日~7月6日
平日 11:00~18:30/土・日 11:00~18:00

会期中にデモンストレーションを行います。
(不定期のため、会場へのお問い合わせはご遠慮くださいませ)


だそうです。

また、最近出された
もういちど 透明水彩を始めよう。 基本の12のレッスン
もういちど 透明水彩を始めよう。 基本の12のレッスン


や、

もっと透明水彩を楽しもう。 描きたくなる12レッスン
もっと透明水彩を楽しもう。 描きたくなる12レッスン

もたくさんのご本とともに会場入り口横で売られています。
(展覧会に出展してある作品の写真があまりないので、せめてもアマゾンの大きい写真を貼ってみました)

画像で絵をご紹介できないのが残念ですが、どんな画像も実物の迫力にはまったく及びませんから、お近くの方はぜひ足を運ばれて、ご覧になってくださいませ。



(なお、上にある2枚の画像はjesterが撮ったもので、すべての版権は永山裕子さんに帰します。無断転載なさらないでください)







根津美術館 遠州・不昧の美意識 名物の茶道具展 * 大好きなカフェ♪

2013-04-02 | スケッチ・美術展


ここは「千と千尋」の不思議世界への入り口?
ティム・バートンの映画の中にいざなう道?


・・・と思ってしまう、不思議な石像で満ちた広大な庭のある、根津美術館。

根津美術館というと、根津にあるのかなと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、住所は港区南青山六丁目でございます。



都会の真ん中にありながら、軽井沢にでも来たかのような深い森の中にお茶室が4つあり、常時お茶会が開かれて、和服の女性がたくさん歩いています。


東武鉄道の社長などを務めた実業家・初代根津嘉一郎さんが作られた美術館ですが、ほんと~~に大金持ちだったのですね~ ふう。

広いお庭にはたくさんの石仏や石像が苔むしています。



根津さん、半跏思惟像がお好きだったのですね。

何体かの弥勒菩薩さんが、物思いにふけってらっしゃいました。


この美術館で大好きなのは、なんといってもカフェです。



天井には大きな明かり窓があり、三面が大きなガラス張りになっていて、滴るような緑がみられ、静かで落ち着きます。



桜の花びらがどこからともなくひらひらと舞ってくるのも見えて、まるで雪のよう。

「ゆずみつ」を添えた紅茶のポットサービスに一息。
ランチにはパスタなどもあります。

本を片手に半跏思惟像の真似をして、足を組んでほほに手を添え、「思惟」にふけるひと時を過ごせます。

まさに癒しのひと時。

このカフェ、カフェだけは使えず、美術館に入館しないと使えないので、あまり人がいないのも落ち着く理由の一つかもしれません。



カフェの入り口の水盤に飾られた椿。
素敵です。



美術館の入口には長い竹の生垣があり、それも美しいです。

今回見たのは



「遠州・不昧の美意識」というコレクション展。

「綺麗さび」と言われる好みの大名茶人、小堀遠州と松平不昧のお茶道具のコレクションです。



たくさんのお茶わんや切り花生、香炉や棗がひっそりと展示されていました。



落ち着いたたたずまいの「堅手茶碗 銘 長崎 高麗茶碗」。

jesterは茶道をやっているわけではないのですが、お茶の道具の洗練された美しさにはいつもため息が出ます。

同時開催で、良寛さんの書が展示されてました。



「天地」の二文字。

貧しい農民が「拝む神棚も仏様も家にない」というのを聞いて、「天地」と書いて与えたといわれる書です。

その闊達な筆運びにはうっとりしちゃいました。

絵葉書がミュジアムショップで売っていたので、買いました。

飾って拝もうと思ってます

この画像は「大天地」と呼ばれるほうで、「小天地」と呼ばれるもう少し小さいものもあります。
良寛さんが年取ってから書いたのが「小天地」。

どちらも「天」と「地」の間の右側に、「・」があるのですが、これはどっちの漢字の画なんでしょうか・・・

と、また気になっちゃうわたしでした・・・



根津美術館では無料のレクチャーや講演会もありますし、人間国宝のお茶わんを使ったお茶会などもイベントとして開催されています。
申し込めば誰でも参加できます。(お茶会は有料、無料のレクチャーも入館料はかかります)



根津美術館の建物、お庭、そして展示物は、どれも日本を紹介するのに素晴らしいものなので、海外から友人が来たときにもよくここを使います。

都内には珍しく無料駐車場もあるので便利です♪







(コレクション展のポスターと大井戸茶碗、良寛さんの書の画像は、根津美術館のサイトよりお借りしてきました)

「美術にぶるっ!」 国立近代美術館記念特別展へ

2013-01-14 | スケッチ・美術展

久しぶりに竹橋の東京国立近代美術館へ行ってきました。

竹橋のこの美術館は学生のころから通っていますが、いつも思い出すおかしな事件があります。

それはjesterが、お箸がころんでもおかしかったころ。

友達と二人で美術展をみて、近くの喫茶店に入りました。
あの辺は喫茶店もあまりないので、たぶん毎日新聞社の建物の中のお店だったかな?

なにか美術展のことで、話題が紛糾して、友人と熱く語りあいつつ、お店に。

お堀の見える、静かなお店でした。

紅茶を注文した私。

ガラスの容器にコルクの分厚いふたがしてある砂糖ツボをあけて、紅茶にお砂糖を一杯。

ニヒルに砂糖ツボのふたをしたはずが・・・・

テーブルの上を見たら、これから飲もうとした紅茶のカップの上に、コルクのふたがぷかぷかと浮いているんですね~

それをみて「あ・・・・」と驚く私、笑いだす友人、
つられて笑う私、
それを指差して涙を流して笑う友人、
それにつられて、泣きながら笑う私、
それをみて腹をよじって笑う友人、
それに触発されて、腹筋が苦しくなりながら笑う私・・・(以下エンドレス


言葉もなく永遠に笑い転げる若き乙女が二人。

店内の注目を集めても、どうしても笑いの発作が止まらない~~


ま、私が話題に熱中するあまり、うわの空で砂糖ツボにふたをしようとして、間違えて紅茶のカップにコルクのふたを落としてしまった、それだけのお話なんですが・・・・

それから、国立近代美術館というと、思い出すのはこのことばかり。
その時熱く語っていた芸術論などとっくに忘れましたが、紅茶の中にぷかぷか浮いていたコルクのふただけはわすれられましぇん・・・・



さて、今回見に行ったのは『美術にぶるっ! ベストセレクション日本近代美術の100年』です。

NYの美術館では当然のようにノーフラッシュで写真を撮ることが許されていて、日本ではありえない!と思っていましたが、最近は写真が許されたようで、みなさん撮ってらっしゃいます。(カメラ禁止の作品は別。)



なのでjesterも撮ってみました。
高村光太郎、安井曽太郎、岸田劉生、佐伯祐三、横山大観、青木繁、黒田清輝、佐藤忠良・・・と、おなじみの、何回も見たことのある作品に交じって、依然ブログで話題にした草間弥生さんの作品もありました。




やっぱり「北京秋天」は何回見てもいいなあ~~


それと上村松園さんの「母子」。
日本的な典雅な美しさの母親の表情に見ほれました。



それにしても、最終日間近(あ、今日までか)でとっても混んでいて、ちょっと横暴なお年寄りの男性がぐいぐい押して来たり、大分疲れて帰ってきました。

美術展は押し合いへし合い見るものではない・・のだ・・・ぞ・・・・・・

もしかして、テレビ番組かなんかで取り上げられたのかな?






永山裕子さんの個展に行ってきました♪

2011-09-07 | スケッチ・美術展
大好きな画家、永山裕子さんの個展に行って来ました。

悪魔のように細心に、天使のように大胆に操られた色と陰が、透明な水のにじみの中で花開いていました。

酔いしれて会場をぐるぐると廻り続けました。

真ん中に静物画のおなじみのモチーフが置いてあって、それを見ていたら、永山さんがいらっしゃいました。

「この葡萄、まるで作り物みたいですね」といったら、
「本物なんですよ、食べてみてください」とつまんでくださいました。
甘かった~~!!
種と皮をどうしようかと思っていたら、そばにディスプレイしてあった太いキャンドルをどかして、その下にあったキャンドルフォルダーを差し出して、
「ほら、皮と種、ここに出して!」といわれました。
そこに皮と種を出したら、おもむろにその上にキャンドルを乗せて、もとの場所に戻されました。

なんという大胆さ!

こんな気さくなお人柄も尊敬してしまいます。

透明水彩〈2〉“Infinit´e”透明水彩〈2〉“Infinit´e”
思わず大きなリンクの画像を貼り付けてしまうほど大好きな画集にサインもしていただき、Happy!!!

この画集の中の何枚かの絵の実物も見られて感激です。

表紙にもなっている『夢』という赤い薔薇と赤いキャンドルの絵、今までも大好きでしたが、これほどの大きさで描かれているとは思っていませんでした。
その迫力に立ち尽くしました。

画集には 「何かを覆い隠しているという夢をみた。」 という文がついている絵ですが、何を覆い隠してるのだろう、としばし妄想の世界へ。


「Magnolia」の花の中には小人が潜んでいるように思えてならないし、「雨」の車からの雨の街の風景は、雨の香りが当たりに漂い、気がつくとわたしも雨に濡れているかのような気がしました。

また、ボタンやホチキスなどがコラージュされた人物画も深くて素敵でした。


薔薇薔薇

会場では最新作の小さな画集、『薔薇』も売られていました。

薔薇の絵がいっぱいの、小さくて可愛らしい画集です。
どなたかにプレゼントに差し上げたいな、と、数冊買いました。
(でもこれは小さくて、本物の絵の迫力にはかないません。)


一番上の写真の、来年のカレンダーもゲット。

厚手の水彩画紙に、色とりどりの香り立つ花々が描かれ、これを飾るのが本当に楽しみです。

(カレンダーの写真はjesterが撮ったものですが、版権はすべて永山裕子さんに属します。無断転載なさらないでください)


透明水彩透明水彩
永山さんは、このほかにも水彩画のハウツー本を何冊も書いていらっしゃいますが、jesterのお勧めはなんと言っても、3冊の画集で、開くだけで心癒される、美しい水彩画がたくさん。

本当に素晴らしいので、ぜひご覧になってくださいませ。


永山裕子さんの個展は銀座のメルサの5階の東京セントラル美術館で9月6日から18日までです。

暇を見つけて、通ってしまいそうです。


第93回 院展 @上野 東京都美術館

2008-09-14 | スケッチ・美術展
秋の院展に行ってきました。
相変わらずの力作ぞろいに感動して帰ってきました。

学生時代から、院展は欠かさず行っていました。
自分は油絵を描いていたのに、日展にいっても、共感できるのはなぜか日本画部門でした。

まず、顔料の色合いが好きなんですね。
緑青、群青、青黛、孔雀緑や、蘇芳花、辰砂、どれも大好きな色です。

そして厚く塗り上げた時のあの粉っぽい質感も好きです。

道具をそろえるのは大変だろうけれど、いつか描いてみたいなあ・・・・

基本的には線描に着色であるところ(そうでない作品もたくさんありますが)、そして、その線が、日本画用の柔らかい筆で描かれた、伸びやかな線であるところなんかも、多分jesterが日本画が好きな一つの原因かもしれません。

(院展には出品されてませんが、若い方では松井冬子さんなんかも注目しています。)

それから、お叱りを覚悟で言うと、油絵よりわかりやすい。
極端なアブストラクトに走ることなく、抽象的で幻想的な世界であっても、ストレートにテーマが伝わってくるところが好きです。

上の画像は、作品集の表紙ですが、福王寺一彦さんの月光です。
(チケットに印刷されている「月光」は月がありますが、こちらにはありません)

また、展示されていた天中にかかる満月を枯れ木のしたから見上げた構図の出品作もとても良かったです。



まず入ってしばらくしたところにあった、平山郁夫さんの群像、「祈りの行進・聖地ルルド・フランス」がど~~んと目に入ってきました。(画像は作品集のなかから転載しました)

星が満天に輝く夜道を、カンテラを手に祈りつつ歩く人たち。
ざっと数えて45人(+犬1匹)が横長の画面いっぱいに描かれています。
左寄りにいてこちらをみる赤い服の犬を従えた幼子は、なにかの象徴でしょうか。

平山さんのお年(78歳)を考えても、これだけの大作を完成するパワーと感受性には感動します。


それ以外も、思わず足を止め見入ってしまう作品がたくさんありました。

個人的にはインドとかゾウとかを題材にしたものが結構多いな、なんて感じました。

公募展(同人の出品を除く)である性質上、中には修作という感じの作品もありますし、写真をとって引き伸ばして塗り絵をしたの? というものもあります。
同人の作品でも、古臭いテーマで何も感動が伝わらないものもありましたが、それにしても全体のレベルは高く、充実しています。

とはいえ、作品数が多いので、最初は一作一作じっくり見ていても、だんだんに疲れて、足早になってしまいます。
半日かけて、途中の休憩所で休みながら、3回ほどぐるぐるまわって繰り返して見ましたが、足が疲れました・・・・

元気があったら続けてフェルメール展も見ようと思っていったのに、これ以上はもう無理、と諦めて、フェルメールはまた後日、出直すことにしました。


今年の夏は西洋美術館の「コロー展」、六本木国立新美術館の「ウィーン美術史美術館展」などなど、わりとたくさんの美術展に行くことが出来ましたが、「院展」が一番満足度が大きかったです。

東京では明日までですが、これから全国を廻るので、これからみられる方もいらっしゃるかな?


あ、そうえいば、院展の作品の中で、国立新美術館のロビーに光が入ってくる様子を題材にした菅原美恵子さんの「硝子のシンフォニー」も素敵でした。


「ジョージ・ラーブ・エッチング展:カナダの自然」

2008-06-04 | スケッチ・美術展

雪景色の中、たった一羽、ぽつんと翼を休めている鳥。

静ずまりかえった夜明けの森の中にさしこむ、オレンジ色の暖かく柔らかな暁の光。

高い山から景色を見下ろす場所に立つ、葉を落とした1本の樹。

雪を割って流れる小川、そのほとりに羽根を膨らませて休む鳥。


大自然の美しさ、平穏、孤独、神秘・・・静謐な世界です。



ジョージ・ラーブさんのエッチング展を見てきました。

ラーブさんは、トロント北東のミルブルックを拠点に、写真から起こしたエッチングを中心に創作活動を続けてらっしゃいます。
(フォト・エッチングという技法の作品を初めてこれほどの量を見ましたが、とても美しいものですね。)

自然保護の重要性の意識を高めたいという意図もあり、カナダの自然を題材にした作品が多いようです。


ほとんどがモノトーンの作品ながら、ところどころに淡い色が使われ、印象的です。

エッチング特有の細かい粒子と繊細な線がかもし出す、独特の、静まり返った美しい地球の姿。

見ていてこちらの心まで静かに癒されていくのを感じました。

日本の屏風のような大きな作品もあり、なかなか見ごたえがあります。

今回、長く夏の間、開催されています。いつもながら無料なのも嬉しいです。

暑い夏休みに、静かな(&涼しい)高円宮記念ギャラリーで過ごされるのはいかがでしょうか。

日時: 2008年5月26日(月)~ 8月29日(金)

平日:午前9時から午後5時半
水曜日:午前9時から午後8時
土、日、7月14日、8月15日は休館

場所: カナダ大使館高円宮記念ギャラリー
(東京都港区赤坂7-3-38
地下鉄「青山1丁目」駅より徒歩5分)
入場: 無料

今回は65点と、展示作品数も多いです。

詳しくはカナダ大使館のサイトをご覧ください。





(本文に含まれる画像はjesterが許可をいただいて撮影したもので、その版権はジョージ・ラーブ氏、カナダ大使館に属します。無断で転載なさらないでください。)


本の仕事 原画展 @池袋 ジュンク堂

2008-05-12 | スケッチ・美術展
池袋のジュンク堂の7Fで「本の仕事 原画展」をやっています。

絵本などの原画が壁面に展示してあります。

この画像は、その中で中島祥子さんの書かれた「BOTANICAL FANTASY」の中の一枚。

「猫の妖精」というテーマで、美しい花と、昆虫のような羽根がある猫が描かれた画集の原画です。

猫好きjesterは即反応して、うろうろ歩きまわり、じっくり一匹一匹見てまいりました。
(この画像はこちらからお借りしてきました)

限定の画集も買うことが出来ます。絵葉書が1枚おまけで付いていて、内容は絵とそれにちなんだ猫エッセイで構成された楽しいものです。
他にも水彩や鉛筆画の、図鑑や絵本の原画が展示されています。

お近くにおいでの際は覗いてみたらいかがでしょうか。
5月31日までやっているとの事です。

カナダの先住民族、コースト・セイリッシュ族のアート 木工芸

2008-04-17 | スケッチ・美術展
この木箱、1枚の板から作られていますが、どうやって作ったと思われますか?

なんと1枚の板をスチームをあてて柔らかくして、たわめて作ったのだそうです。
一部切込みをいれてはめ込んでありますが、それにしても木って時間をかければここまで曲がるものなんですね。
その製作工程に驚くとともに、そこに掘り込まれた力強い浮き彫りも含めて造形の美しさに感動しました。

贈り物などを入れて人にあげたり、物を入れたりするということですけど、贈り物のパッケージとしてこんな素敵なものを使うなら、中にどんなに貴重な品を入れることになるやら。


お面のように顔を彫った作品。目にはあわびの貝が埋め込まれ、素材はレッド・シダー、周りを囲むようにとめつけてあるのはその皮です。

能のお面に通じるような神秘性があり、見る角度で穏やかに見えたり、大変厳しく見えたり、表情が変化します。

こちらは壁飾りですが、他に、儀式で踊られる踊り用のお面や頭などもありました。

この展覧会を見たあとに、ジョンとルークのマーストン兄弟による講演会を拝聴し、いろいろな作品をスライドで見ながら、コースト・セイリッシュ族の生活について教えていただきました。
伝統的な古い作品からインスピレーションを受けて、新しいアートを生み出そうという彼らの姿勢がうかがえました。

またそのあとに、彼らによる、儀式で踊られる踊りの披露もありました。
太鼓と歌に載せて、鳥の頭をつけ、羽根の模様のマントのような衣装をつけて踊ります。

ちょっとした首の傾げ方、動きなどが、本当の鳥のようにリアルで迫力があり、現在も踊り継がれているんだというのが実感できました。

ポトラッチというこの儀式は、彼らに言わせると「government(政府)」なんだそうで、いろいろな機能を持つそうです。

そこで使われるのが、「トーキング・スティック」ですね。
これはまた項を改めて書こうと思います。



交流展ではブリティッシュ・コロンビア州出身のカナダ人4人、そして日本人2人アーティストによる作品を見る事が出来ます。

全体的ディスプレーはこんな感じで、空間を豊かに使っていて立体作品もゆっくりと鑑賞できます。


墨を使って書かれた絵があり、日本の方のものかと思いましたら、ロバート・エーモスさんとおっしゃるカナダの方でした。(作者の許可をいただいてないのでここでは画像は載せません)
明るい色調で書かれたカナダの風景画ですが、和紙に墨で書かれているというだけで、和風な感じがあり、とてもおもしろかったです。



「太平洋にかかる橋:カナダ・日本美術交流展」

2008年4月2日(水)~ 5月15日(木)
於 カナダ大使館高円宮記念ギャラリー

詳しくはこちら


(本文に含まれる画像はjesterが許可をいただいて撮影したもので、その版権はジョン・マーストン氏とルーク・マーストン氏、カナダ大使館に属します。無断で転載なさらないでください。)

(後記;以前の記事では、一部、イヌイットとコースト・セーリッシュ(カナダの先住民族)の混同がありました。お詫びして訂正させていただきます。)


コースト・セイリッシュの木彫など 太平洋にかかる橋:カナダ・日本美術交流展

2008-04-14 | スケッチ・美術展
(本文に含まれる画像はjesterが許可をいただいて撮影したもので、その版権はジョン・マーストン氏とルーク・マーストン氏、カナダ大使館に属します。無断で転載なさらないでください。)

カナダにすむイヌイットの文化については、以前壁かけ展についてお伝えしたことがあるのですが、今回はカナダの先住民族であるコースト・セイリッシュ族の木彫&クラフトです。

見に行く前にすこし勉強して行ったのですが、実物は思ったよりずっと迫力があり、プリミティブな力と完成された美しさが一体となった作品に陶然としてしまいました。

アメリカやカナダの先住民族の文化やイヌイットの文化には、同じモンゴロイドのDNAを持つ日本人のjesterとしてはどこか郷愁を感じるものがあり、また微妙に不思議な違和感もあって興味深く、いつも強く惹かれます。

いまカナダ大使館に於いて開かれている「太平洋にかかる橋:カナダ・日本美術交流展」では、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州出身の4人、そして2人の日本人アーティストによるグループ展を開催しています。

そのなかで、ジョンとルークのマーストン兄弟は、カナダ太平洋岸にあるバンクバー島南部の先住民族、コースト・セイリッシュ族の出身。

ご両親も木彫をやってらしたというご兄弟ですが、伝統と新しい文化の融合を目指した作品を精力的につくってらっしゃいます。
現在来日なさっていて、作品を見たあとに彼らの講演「コースト・セイリッシュのアート:その起源と未来」を拝聴し、また伝統の踊りを見せていただく機会に恵まれました。
(カナダ大使館広報部の方々に感謝します!)

例えばこの作品。
北国の杉の細かい年輪も美しい木彫。
上の部分は狼、狼のあばら骨から下の部分はシャチだそうです。
狼の尻尾のように見える部分が、シャチの頭部の先端の部分に重なっています。

彼らの神話では、森の狼と海のシャチは同一のもので、それぞれがそれぞれに変身しあうそうで、それを象徴した作品です。目の部分にはあわびの貝殻がはめ込まれ、歯は貝殻で出来ています。

またセイリッシュ族には独自の仮面舞踏の伝統があり、ジョン氏とルーク氏はポトラッチと呼ばれるこの儀式のための仮面、太鼓などの楽器や金銀のブレスレットなどの儀式用具もつくってらっしゃいます。

また、糸を紡ぐ時に使われるSpinning Whorlsやカヌーの櫂なども実用から装飾品として変化し、その芸術性を高めています。


一番上の画像は「鷲のトーキング・スティック」の上部なのですが、ネイティブ・アメリカンなどにもつかわれている、最強のコミュニケーション・ツールといわれる「トーキング・スティック」についても以前から興味を持っていたので、今回思わぬところでその実物をみられてとても感激しました。

この辺の文化も含めて、もうちょっと続けてマーストン御兄弟の作品の紹介をしたいと思っています。

(後記;以前の記事では、 一部、イヌイットと、コースト・セーリッシュ(カナダの先住民族)の混同がありました。お詫びして訂正させていただきます)





「太平洋にかかる橋:カナダ・日本美術交流展」

2008年4月2日(水)~ 5月15日(木)
於 カナダ大使館高円宮記念ギャラリー

詳しくはこちら

スウェーデンの絵本 スウェーデン児童文学フェア その2

2007-05-10 | スケッチ・美術展
スウェーデン児童文学フェア2007でみた絵本の原画の中で気に入ったのは
Stina Wirsen(スティーナ・ヴィルセーン)さんの「Who's in charge」(誰が決めるの?)という絵本です。

英語の題がついていたので、アマゾンに画像がないか捜したのですが、なかったので、私のとったへたくそな写真でご紹介しますね。
ガラスにバックが写りこんじゃってて見辛いのですが・・・・
(この写真は、jesterが許可を取って撮影させていただいたもので、すべての権利はStina Wirsenさんとスウェーデン大使館に帰属します。無断転載なさらないでください)


さて、登場するのは2匹のくま。
くまには見えませんが・・・でもくまなんです。

おおきいくまと小さいくまが、ヨーグルトを食べたり、けんかしたり、お風呂に入ったり・・・・というたわいないお話ですが、子どもと大人の気持ちがうまく入っていてとてもほのぼの。
親子で読んだらきっともっと楽しいだろうな~というストーリー。

ひょうきんな、くまにみえないくまたちのシンプルな絵柄もとても好きになりました。
前回の記事で、最初の画像のポスターも彼女の書かれたものです。
ピンクのあれも、くま・・・なのかなあ。

今のところ、日本語訳はでていないし、アマゾンでも原書の取り扱いがないようなので、手に入れることはできませんけれど、いつか手元においてゆっくりながめたいな、と思うような絵本でした。

作者のStina Wirsenさんは1968年生まれ、ストックホルム在住。3人のお子さんがいらっしゃるお母さんです。




このフェアは六本木1丁目のスウェーデン大使館で13日まで開催中。
無料です。
(←いかにも北欧ふうな入り口です)


フェア会場では、リンドグレーンさんや、スウェーデン児童文学に関する雑誌(パンフレット)を無料で配布してくださっています。

綺麗な写真で絵本の内容や作者について紹介してあるものもあり、読み応え、あります。

英語のものもあり、翻訳されているものもあり、この関連の研究をしていらっしゃる方には、貴重な資料になるのではないかと思います。

スウェーデン児童文学フェア2007 その1

2007-05-04 | スケッチ・美術展
六本木のスウェーデン大使館で行われている『スウェーデン児童文学フェア2007』に行ってきました。

これはアスリッド・リンドグレーン生誕100年祝賀行事とともに開催されたもの。

『長靴下のピッピ』で育ててもらい、『やかまし村の子どもたち』で子育てをしたjesterとしては見逃すわけにはいきません。
まつかぜさんのサイトで教えていただいて、早速出かけてきました。

スウェーデン大使館の正面入り口を入ってすぐのところに展示室が。

細長くてこじんまりとした展示室ですが、明るくてすっきりしていて、北欧の雰囲気があふれています。

中央にリンドグレーンさんに関する展示があります。
また会場内には、楽しいスウェーデンの童謡が流れています。


展示されている絵本や児童文学の翻訳されたものを、会場内の小さな本屋さんのブースで売っています。

また、小さなスウェーデンカフェもあって、サーモンのオープンサンドとか焼き菓子などが販売されていました。

それから奥のほうには小さな椅子とテーブル、子どもの遊ぶスペースもありました。


壁側には、スウェーデン作家による絵本の展示がありました。


特にスティーナ・ヴィルセーンという方が書いた絵本はとっても可愛くて、jesterは欲しくなりましたが、残念ながら会場内の本屋さんにはありませんでした。
日本語に翻訳されていないのですね。残念です。
この絵本についてはまた後で少し詳しく書きますね。


このスウェーデン児童文学フェア2007について、詳しくはスウェーデン大使館のサイトに載っています。

ここに載せた写真は、スウェーデン大使館の方の許可をいただいてjesterが撮影したものです。転載なさらないでください。

イヌイットの壁かけ展 「アイリーン・アヴァーラーキアク:神話と現実」 その2

2006-12-16 | スケッチ・美術展
アニミズム、というと日本でも土着の信仰にも結構ありますよね。

動物、植物、岩や川など、自然界のあらゆるものに霊魂や精霊があり、諸現象を操っている、という原始的な宗教観。

そしてその霊たちと交信してくれるのが、シャーマン。
シャーマニズムは世界各地にありますが、極北の地でもとても一般的です。
日本で言えば巫女さんですね。

でもイヌイットのそれは、北海道のアイヌのそれにとても近い感じがします。
やはり文化的に近いのでしょうか・・・

アイリーン・アヴァーラーキアクさんが製作されたイヌイットの壁掛けも、こういう宗教観をもとにした口承の物語がテーマです。

動物と人間が自由に相互に変身し、人間はシャーマンになろうと修行を積み、失敗しては周りの岩なんかに笑われ・・・・厳しい自然の中なのですが、広い台地で、おおらかに生活を楽しんでいる感じがします。

1枚の中にお話が詰め込まれていて、夜眠りにつく前にその壁掛けを見ながら、子供たちは目を輝かせておばあちゃんの昔話にききいったのだろうな~と思わせます。

アイリーンさんを含め、イヌイットの人は今ではキリスト教に改宗してらっしゃる方が多いですが、実は心の奥底ではまだこのアニミズムを信じていて、「最近では見られないけれど、本当に動物に変身することができたのだ」って思っている人もいらっしゃるとか。

例えばこの絵なんですけれど、夫婦で遊んでいた光景なんですって。

洋服のすそがまっすぐなのは男、すそが垂れ下がっているのが女性だそうです。

夫は遊びで鳥に変身しました。
すると妻は狼になったり、アザラシになったり。(頭が二つ! 足が尾びれになっています。)
空から鳥が降りてきて、二人の遊ぶのを見ています。
顔だけ人間になってみている鳥もいます。それから奇妙な生き物たちも。
周りの岩もいろいろおしゃべりを始めました・・・・

とまあ、こんな感じで、どの作品もちゃんとストーリーがあるんです。

それぞれの作品の横に、日本語で小さな説明がついているのですが、キューレーターのジュディス・ナスビーさんの説明を聞いていると、よく意味が理解できて、とても楽しかったです。

アイリーンさんの少女時代の悲しい記憶・・・飢餓でおなかが空いているときに一人でツンドラにやってきて、食べ物をどうやってとるのか、なんていうものがそれにミックスされています。


パーカーを作った後残ったフェルトを使って作られ始めたというこの壁かけ、針目はとてもおおらかです。
ジグザグミシンのような大きな目のステッチで縁取りし、中の線はだいたいアウトラインステッチか、普通の縫い目。

技法などにはこだわらず、自分の中から湧き出てきた「表現したい」という気持ちを素直に作品にした、というのが伝わってくるのでした。

1月25日発売号の「クロワッサン」にナスビーさんへのインタビューが掲載されます。もしよろしかったらご覧くださいませ。


    「アイリーン・アヴァーラーキアク:神話と現実」
 ゲルフ大学マクドナルド・スチュアート・アートセンター所蔵イヌイット壁かけ展は、2006年12月12日(火)から 2007年3月9日(金)まで。青山の カナダ大使館高円宮記念ギャラリーにて開催中です。


詳しくはこちらをご覧ください。

(註;このアイリーン・アヴァーラーキアクさんの作品の画像は、カナダ大使館広報部の了解を得てjesterが撮影したもので、すべてのコピーライトはアイリーン・アヴァーラーキアクさん、カナダ大使館、jesterに帰属します。他のサイトへの転載は絶対なさらないでください。)



イヌイットの壁かけ展 「アイリーン・アヴァーラーキアク:神話と現実」 その1

2006-12-14 | スケッチ・美術展
12日、カナダ大使館で行われた、「アイリーン・アヴァーラーキアク:神話と現実」(イヌイットの壁かけ展)のギャラリー・ツアーとレセプションに呼んで頂き、参加してきました。

(註;このアイリーン・アヴァーラーキアクさんの作品の画像は、カナダ大使館広報部の了解を得てjesterが撮影したもので、すべてのコピーライトはアイリーン・アヴァーラーキアクさん、カナダ大使館、jesterに帰属します。他のサイトへの転載は絶対なさらないでください。)


大胆でプリミティブなデザイン、豊かでコントラストの強い色彩、そしてその絵柄に語られるアニミズムの伝承・・・・

針は素朴で伸びやかで、「手仕事」の暖かさを感じさせます。



アイリーン・アヴァーラーキアクさんは、カナダの北極圏の250キロ南にあるヌナブト準州ベーカーレイクというコミュニティに住んでらっしゃいます。
カナダには3つの政府に公認された先住民族がいるそうですが、その一つ、1600人の小さなコミュニティです。

1941年か、1936年に生まれた(ご本人も確かでないそうです)アイリーンさんは、幼い頃に両親を亡くし、貧しく苦しい子供時代を送られたそうです。
1950年~60年代に、カナダ政府の保護が始まり、現在に至っておられます。

現在はキリスト教徒になられたアイリーンさんですが、子供の頃、遊牧生活を送る氷の家で、おばあちゃんから聞いたお話を忘れていません。
その世界感をアートで表現され、特に壁かけの作品は有名です。

若い頃は一つの壁掛けを1日で仕上げることもあったアイリーンさん、今は数日かかるそうです。
「狩の合間に」いろいろな製作をなさっているそうで・・・
なんと、1600人いるコミュニティの中でたった2人しかいない「女狩人」のお一人なんだそうです。


12日は同展覧会のキューレイターで、ゲルフ大学マクドナルド・スチュアート・アートセンター館長、ジュディス・ナスビーさんが、解説しながら案内してくださるギャラリーツアーが催されました。

一つ一つの作品には、アニミズム、シャーマニズムにもとずく、イヌイット独特の世界観が盛り込まれています。
それを分かりやすい言葉で説明していただき、最初に見たときには分からなかった、作品に盛り込まれた「物語」がよく理解できました。

その一部をこれから引き続いて紹介しようと思っています。

    「アイリーン・アヴァーラーキアク:神話と現実」
 ゲルフ大学マクドナルド・スチュアート・アートセンター所蔵イヌイット壁かけ展は、2006年12月12日(火)から 2007年3月9日(金)まで。青山の カナダ大使館高円宮記念ギャラリーにて開催中です。


詳しくはこちらをご覧ください。